Type Beat(タイプビート)とは?【海外で広がるビートリーシング】
前回の記事でビートリーシングビジネスについてお話しました。
その中で出てきた「Type Beat」について掘り下げていきたいと思います。
Type Beatとは?
現在Billbordやストリーミングチャートを見るとほとんどがHip-hopで埋め尽くされています。
おそらく先進国で影響を受けていないのは日本だけなのであまり実感はないかもしれませんが、2017年頃からロックの時代が終わり、シーンはガラッと変わりました。
これだけブームになると世界中の若者達はトップアーティストに憧れてラップを始めますが、ラップをするにはバックで流れている「ビート」が必要不可欠です。
そこで世界中のラッパー達はこう思うわけです。
「俺も◯◯みたいなカッコいいビートでラップしたいなぁ。」
そこで生まれたのが今回の「Type Beat」です。
Type Beatとは分かりやすくいうと、YouTubeのSEOを利用したマーケティング手法のことで、 主に海外のHip-hop,TrapやR&B界隈でラッパーとビートメイカーをマッチングさせる為に使われている方法のことです。
自身で作曲してアレンジもできるラッパーやシンガーは少なく、かといってプロにお願いして楽曲を提供してもらう機会やお金もないのが現状です。
そこで便利なのが今海外のシーンでは主流となっている「Type Beat」と呼ばれる方法です。
どのようにラッパー達はビートを探しているのか
例えばですが清水翔太っぽい音楽に合わせて歌いたいな。と思った場合に
「清水翔太 Type Beat」
BAD HOPみたいなビートでラップしたいと思えば
「BAD HOP Type Beat」
などのタイトルを付けてYouTube上で検索することで、世界中のビートメイカーが作った「○○っぽいビート」を見つけることができます。
今世界中のビートメイカーやプロデューサー達がこぞって人気楽曲に似たビートを投稿しており、1時間に10曲ぐらいのペースで更新され続けている状態です。
目当てのビートが見つかったらほとんどの場合、そのまま概要欄にビート販売サイト(BeatStarsやAirbit)へのリンクが張られているので、そこからビートを契約購入できたりもします。
(Airbitのビートストア)
- Non-Exclusive ($24.99): MP3+使用制限あり
- Premium Lease ($34.99): MP3+WAV+使用制限あり
- Trackout Lease ($69.99): MP3+WAV+Stems+使用制限あり
- Unlimited Lease ($199.99): MP3+WAV+Stems+使用制限なし
- Exclusive (最高付け値): 独占使用
上記はライセンスの一例ですが、アーティスト側の使用用途に合わせて上記のようないくつかの契約オプションが設定されています。
お金は払いたくないと思って不正ダウンロードをして使用したとしても、YouYubeのコンテンツIDに引っかかったり、プロデューサータグと呼ばれる音声がビート内に流れるようになっている為、購入が必須になります。
個人で活動しているプロデューサーの収入源
今までは個人で活動しているプロデューサーにとっての収入源となるものといえば、
・作家事務所と契約して楽曲提供案件を待つ
・コンペに参加して入賞する
・クラウドソーシングを利用して自分で案件を取る
・自分のコネで案件を取る
などがありましたが、どれも安定したものとは言えず
ギャラや印税などの収入が実際に手元に入ってくるのは不明確でした。
今回のType BeatでのYouTube SEOを使ってPV(プレビュー数)を集めて、多くビートリーシングすることが出来れば、プロデューサーにとって安定した収入源になる可能性は十分にあります。
ビートリーシングについての詳しい記事はこちら
新時代到来?ビートリーシングビジネスについて
例えば50ドルでリース販売しているビートが10人に契約されると定期的に¥55,000がプロデューサの手元にPayPal等を利用してすぐに入金される仕組みになっています。
ビートの販売状況もサイトからアナリティクスを使ってデータとして見れるのでアクセス解析にも役立ちます。
シンガーとクリエイター双方にとっての利便性の高さもType Beatの魅力となっており、ときにはプロのアーティストも利用していたりします。
ビッグアーティストに採用される可能性も
実際にアマチュアのプロデューサーがType Beatを利用して有名なラッパーにビートを使用されるという事例も。
有名所でいうとFetty Wap、Joey Bada $$、Bryson Tiller等はウェブ上のビートを使用して大ヒットを飛ばしています。A$AP Rockyは「A$AP Rocky type beat」で検索して、自分の曲のビートがあることを認めました。
Desiignerの「Panda」はType Beatを200ドルでビートリースして作られている楽曲です。現在、Spotifyでは8億回再生、youtubeで5.3億回再生されています。
仮に有名なラッパーに採用されることがあれば、それだけでプロデューサーとしての信頼度や認知度も爆上がりです。
作曲スキルやトレンドを追う能力は必要になりますが、常にハイクオリティなビートを投稿し続ければ、レーベルに拾ってもらえたりと、何かビッグチャンスを得れる機会はあると思います。
あとType Beatといえど、一応オリジナル楽曲にはなるのでYouTubeの広告収益もお小遣い程度には入ってきます。
ほんとGoogle様様です。
まとめ
Type Beat文化は世界的には既にレッドオーシャンかもしれませんが、日本ではまだまだブルーオーシャンです。
果たしてメロディ文化の強い日本にHip-hopのビッグウェーブが流れ込んでくるのかはわかりませんが、国内から海外のアーティストにビートを提供しまくっているプロデューサーは既に存在します。
日本でも作家事務所やレーベルがアーティストに楽曲を提供するという流れから、「個人のプロデューサーから楽曲をレンタルする」という日が来るのもそう遠くないかもしれませんね。