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音楽最大手「ユニバーサルミュージック」10年連続売り上げ増!デジタルとフィジカル(CD)の両軸経営

出典 : UNIVERSAL MUSIC

音楽最大手「ユニバーサルミュージック」10年連続売り上げ増!デジタルとフィジカル(CD)の両軸経営

世界60以上の国と地域で事業を展開し、300万曲以上の楽曲を管理する世界最大の音楽会社「ユニバーサルミュージックグループ」。その日本法人であるユニバーサルミュージック合同会社は、国内最大手の音楽会社として業界をリードしています。

社長である藤倉氏は、当時46歳の若さで社長に就任し、就任後「デジタル」と「フィジカル(CDなどの物販)」の両輪を軸とした経営戦略を掲げ、契約社員約330名を正社員化するなど、音楽業界では異例の人事改革にも着手し、業績を大幅に拡大させています。

10年連続で売上高過去最高を更新

2014年から現在(2023年12月期)まで、ユニバーサルミュージック合同会社はコロナ禍の影響を受けながらも、10年連続で売上高過去最高を更新し、増収増益を達成しています。2023年度の売上高は、就任時(2014年度)の2.6倍にまで成長しました。

藤倉氏の社長就任は、音楽業界で大きな話題となりました。彼が率いてきたのは邦楽部門であり、ユニバーサルミュージック合同会社は外資系でありながら邦楽に強みを持つ音楽会社として知られています。国内音楽市場におけるシェアも拡大しており、2023年のシェアは27.7%と、2014年の13.2%から13.5ポイント上昇し、他社を大きく引き離しています。

「企業として毎年順調に成長していますが、慢心せず、業界のリーダーとして、今後は市場の成長に貢献する役割も求められます。アーティストに選ばれ、多くの方に音楽の感動を届け続けるため、常に過去の自分たちをライバルとして挑戦し続けていきます」

ユニバーサル ミュージック合同会社 CEO 藤倉尚


若手アーティストを発掘、CDとストリーミング配信の双方でヒット連発

ユニバーサルには現代、約200のアーティストが所属し、制作活動を行っています。外資系の音楽会社でありながら、日本独自のヒット作が売り上げのメインを占めるほど邦楽に強く、ベテランに加えて、デジタル世代の若手アーティストの発掘、育成にも成功し、若年層を捉えヒットを連発しています。

ヒットはCDとデジタル(音楽ストリーミングサービス)双方で、結果を出しています。CDでは、2023年にミリオンセールスを記録した7つのうち3作品を、ユニバーサルから発売しています。King & Prince(キング アンド プリンス)の2作品(シングル「Life goes on/We are young」、アルバム「Mr.5」)と、世界的人気のK-POPグループSEVENTEEN(セブンティーン)の1作品(10周年記念ミニアルバム「FML」)です。

デジタルでは、楽曲「うっせぇわ」がオリコン・ストリーミングチャートで17週連続(2023年10月2日付から)1位を獲得したAdoをはじめ、音楽配信サービスSpotify(スポティファイ)の「国内で最も再生されたアーティスト」(2023年)でトップに輝いたMrs. GREEN APPLE(ミセスグリーンアップル)、楽曲「第ゼロ感」がBillboard JAPAN(ビルボード・ジャパン)のストリーミングチャート(2023年10月11日公開)で再生回数2億回を突破した10-FEET(テンフィート)など、所属アーティストが注目を集めました。

最近の主なヒット作
  • 2015 DREAMS COME TRUE「DREAMS COME TRUE THE BEST! 私のドリカム」
  • 2016 宇多田ヒカル「Fantome」
  • 2017 back number「アンコール」
  • 2018 ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)
  • 2019 BTS「Lights/Boy With Luv」
  • 2020 BTS「Dynamite」
  • 2021 Ado「うっせぇわ」
  • 2022 King & Prince「ツキヨミ / 彩り」
  • 2023 Mrs. GREEN APPLE「ケセラセラ」


AI時代も「音楽の根本は揺らがない」

蓄音機から始まり、レコードやCD、そして「着うた」といった楽曲ダウンロードビジネス、「Spotify(スポティファイ)」などの音楽配信サービスなど、最新のテクノロジーは音楽をターゲットにしてきました。ここから先も、SNS、デジタル・トランスフォーメーション(DX)や、AIなど、音楽産業にも新たな波が押し寄せています。

藤倉氏は「確かに、音楽を広め、届けるための手段は劇的に変化しています。が、アーティストとファンに地道に向き合うことが実を結ぶという、音楽産業の根幹は大きく揺らぎません」と話します。

ユニバーサルミュージックの強みであり、これまでもこれからも大事にするのが、音楽産業の根幹である「あらゆる音楽分野から才能あるアーティストを見つける」「育てる」ことと、「アーティストとユーザーの双方の目線に立ち音楽を「創る」ことです。

アーティスト発掘の「妄想三原則」

音楽業界では、映画やアニメなどのコンテンツ産業に進出したり、イベントなどの関連事業に乗り出して新たな収益源を模索したりする企業が増えています。しかし、ユニバーサルミュージックは、アーティストの発掘・育成に強みを持つA&R(アーティスト&レパートリー)にこだわり続けています。

同社の藤倉社長は、かつてアーティストを発掘する際に「妄想三原則」を掲げていました。それは「東京ドームでのライブ」「紅白歌合戦での歌唱」「ミリオンセールス」のどれか一つを妄想できるアーティストかどうか、という基準です。現在ではこの基準は進化していますが、「心からヒットをさせたいと思うアーティストとの出会い」を大切にしているとのことです。

デジタル人材の採用

近年、デジタルに強いと評価されるユニバーサルミュージックですが、藤倉社長はCDとデジタルの売れ方の違いを感じ、ストリーミング時代を見据えて契約社員の正社員化を断行し、デジタルに強い人材を積極的に採用するなど、先手を打ってきました。

正社員化の背景には、「ヒットまでに要する時間の変化」がありました。従来のCDは発売日にピークを迎えるのに対して、ネットでは発売後から徐々に売れていくため、長い目でアーティストや作品を育てていく必要があると判断したのです。

藤倉社長は、契約社員が多い状況では勝てないと考え、アメリカ本社に正社員化を提案しました。しかし、日米の雇用文化の違いから理解を得られず、1年かけて粘り強く交渉し、最終的に約330人の契約社員を正社員にすることができました。

CD文化が根強く残る日本

音楽業界ではデジタル化が進んでいます。しかし、藤倉社長は、パッケージ文化が根強い日本では独自のアプローチが必要だと考え、デジタルとフィジカル(CDなどの物販)の両軸経営を推進してきました。日本では熱心なファンによる「ファンダム」と呼ばれる文化があり、パッケージの売れ行きは特に好調です。

現在、日本の音楽市場におけるこうした考え方が海外にも広がりつつあります。日本のCDなどを海外に輸出する機会が増加しており、海外ではデジタル作品しか発表していないアーティストでも、日本盤だけはリリースするケースがあります。これは「モノ」を手に取りたい海外ファンの心を掴んでいると言えるでしょう。

藤井風やAdoといった新世代アーティストの登場

右肩上がりで業績を拡大させるなか、コロナが直撃します。公演は相次ぎ中止、ライブハウスは感染拡大源の一つともされ、音楽は「不要不急」だと言われるようになります。コロナ禍は、ライブエンタメ市場に5200億円(2020年)の損失を生み出し、2020年のCDの売り上げは前年比16%減になったと言われています。

そんな中にあって、ユニバーサルミュージックが出した方針が「音楽を届けることをストップしない」こと。業界にいつの時代も吹く逆風を「新しい才能を発掘し、育て、届ける」ことで乗り越えてきた、そんな変わらぬ姿勢を貫きます。CDの出荷は続け、アーティストの自宅録音や無観客ライブをサポートし、才能の発掘場所をライブハウスから動画サイトへ切り替えるなど、手を打ち続けます。

そうした中から、藤井風やAdo(アド)といった新世代のアーティストが登場しました。日本赤十字社と「#最前線にエールを何度でも」というプロジェクトで、医療従事者にメッセージソングを届ける取り組みなども行います。

日本から世界トップアーティストを生む

夢は「日本から世界トップクラスのアーティストを生むこと」、その兆しが生まれるデジタル時代に突入するなかで、ヒットの実感にも変化が生まれてきたと言います。藤倉氏が考えるヒットの基準は「世代、同境、時代、予想の4つのいずれか一つを越えられるか」だと語ります。

中でも「国境」は、ストリーミング配信の台頭で、音楽ビジネスから消えつつあります。久石譲は、2023年3月にユニバーサル傘下のクラシック名門レーベル、ドイツ・グラモフォンと新たに契約を結び、同年7月には最新アルバムがアメリカ・ビルボード誌のクラシック音楽アルバム2部門でいずれも1位を獲得し、大きな話題となりました。

動画配信サービスに自作曲をアップしてからわずか3カ月でデビューを果たした異色の新人アーティストimase(イマセ)は、J-POPアーティストとして初めて韓国の主要チャート(音楽配信サービスMelonのTOP100チャート)にランクインし、K-POPアーティストによるダンスカバーがSNSで話題となるなど、アジアでの認知度が上昇しています。

また「うっせぇわ」「新時代」「踊」と、国内外でのヒットを飛ばすAdoは、2024年、女性ソロアーティストとして初めての国立競技場でのライブに加え、世界14都市を巡るワールドツアーを計画するなど、世界を舞台にした新たな挑戦に挑みます。

世界ヒットを4つのパターンに分析

藤倉氏は、「ヒットチャートを分析すると、エンタメやインターネットの世界はコロナ禍以降、より国境がなくなっている」と話し、「私たちの意志の持ち方一つで、世界に影響を与え、歴史を変えていける可能性がある。日本から、世界で口ずさんでもらえるような楽曲を生み出すことも、コーチェラ(世界最大規模の音楽フェス)でヘッドライナーを飾るアーティストを育てることも、諦めない意志があればできる。とても面白い時代」と、夢を同じくする社員に、近い将来を語ります。

そして、海外ヒットのパターンを「ファンダム型」「ローカルUGC型」「IP・コラボ型」「ファンクショナル(機能訴求)型」の4つに分析しています。その日線の先には、グラミー賞を獲る日本人アーティストの姿があります。

パターン内容アーティスト例
ファンダム型アイドルグループ等、熱狂的なファンが支える文化BTS、Travis Japan
ローカルUGC型特定地域のSNSで自然発生したバズが国境を越え広がる藤井 風
IPコラボ型アニメ、映画等のコンテンツ作品の世界観と共に輸出Ado
機能訴求型「Sleep」等のカテゴリで上位に、配信時代の新たな形久石譲


生成AIの衝撃

音楽産業には今、新たなテクノロジーの波がまた押し寄せています。生成AIの衝撃です。米ユニバーサルミュージックグループは2023年4月、カナダのラッパー、ドレイクらの声を生成AIで模倣して制作された楽曲について、配信するストリーミング各社に対して、著作権侵害にあたると削除を要請。現在、配信サービスからは削除されています。

国内では、AI時代にふさわしい法整備を求めるべく、ユニバーサルミュージックは日本レコード協会と連携して、内閣府の「AI時代の知的財産権検討会」に対して意見を提出しています。一方で、メロディーのアイデアを次々に生成するなど、アーティストの想像性を高めるツールとしての側面もあります。

アーティストの著作権を守ると同時に、アーティストの創造性を高めるという可能性を模索しながら、生成AIと向き合っていく必要があります。

UNIVERSAL MUSIC JAPAN 公式サイト


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