歪み(オーバードライブ、ディストーション)が音楽に与える効果
歪み、いわゆるオーバードライブ、ディストーション、サチュレーションは適切に使用することで、サウンドに倍音を与え、トラックを強化することができます。
歪ませすぎると、音の芯が無くなり、高周波数域が膨らみ耳障りなサウンドになってしまうので気を付ける必要があります。
今回は様々な歪みの種類が音楽に与える効果についてご紹介します。
ディストーションの仕組み
歪みが発生する場所は多く、基本的にはオーディオ機器の回路が過負荷になるとノイズ=歪みが発生します。
オーディオ波形が出力レベルの限界(0dB)を超えると、圧縮やクリッピングが起こり、徐々に歪み始めます。
この状態で更に入力レベルを上げ続けるとオーバードライブやディストーションといったような音質すらも変えてしまう激しい歪みとなります。
オーディオ信号が圧縮されると、倍音や高調波を生み出し、サウンドに温かさやエッジを与えます。
音質をあまり変えないサチュレーションのような微量の歪みは、キックやスネアのような楽器に対してもパンチを与える効果があり、多くのジャンルで使われますが、激しいディストーションサウンドはロックやメタルミュージックのギターやダブステップのワブルベースのような限られたジャンル、楽器で使用されます。
ディストーションの発生源
ディストーションの概念はレコーディングのテクノロジーが始まった頃から存在し、一種のノイズとして扱われてきた歪みを、1940年代にエンジニアやロックアーティストが意図的に使用したことから始まりました。
歪みはプリアンプ、マイク、コンプレッサー、変換器、ケーブル、スピーカー等の様々な場所で起こり、種類としては主にアナログ回路、真空管、テープマシンの3つがあります。
アナログ電子回路
デジタルサウンドが主流となった今、ヴィンテージアナログ機器特有の温もりのあるサウンドを求めています。
多くの人は大型コンソールミキサーの為の予算もスペースもありませんが、NeveとAPIのようなアナログプリアンプをモデリングしたプラグインも多くあります。
アナログプリアンプを使用すると高調波に倍音を付加することができ、回路を通すだけでも、デジタルの冷たい音質に、レコーディングしたかのような温かさと深みを加えることが可能です。
アナログ回路による歪みはコンソール以外にもNeumannのコンデンサーマイクや、1176コンプレッサーが有名です。
真空管(チューブ)
真空管による歪みはサウンドの音圧を高めるのに最適で、より優れた偶数倍音を付加することができます。
偶数倍音はハーモニーの響きを損なうこともなく、より原音を自然に鳴らすことが可能。
チューブデバイスは非常に滑らかで自然な方法で信号をクリップし、これにより温かいボトムサスティンが得られ、サウンドに厚みとパンチを与えます。
音量が大きくなるにつれ本領を発揮しますが、トランジスタのように急に歪みだすこともなく、その取扱いやすさからギター関連の機器によく使われています。
その他にもマイクプリアンプやEQ、コンプレッサー、まで広く採用されています。
アナログテープ
テープマシンを使用することで、独特な飽和感を得ることができ、若干ハイ落ちした図太いサウンドになります。
最近だとLo-Fi系の音楽にも積極的に取り入れられており、ヴィンテージ感溢れる音質が人気です。
アナログテープのレベルを上げることでの副作用もり、モジュレーションノイズや様々な予期しない歪みの形成など、過大入力によってはアナログテープ特有の一種のコンプレッサーのようなサチュレーション効果も生み出します。
まとめ
歪みが音楽に与える効果は大きく、サチュレーションと呼ばれる微量の歪みからディストーションまで、プロの現場ではほぼすべてのトラックに歪みが適応されているといっても過言ではありません。
実際にトラックに歪みを加えるためにスタジオミキサーや真空管、テープマシンを実際に購入する必要はありません。
最近では多くのアナログディストーションをエミュレートしたプラグインも多く販売されているので、それらを使用することで簡単に、しかも安価で入手することが可能になりました。
それ以外にもビットクラッシャーのようなデジタルオーディオファイルの解像度を下げることでも、歪みを作成することもできます。
ざらざらしたLo-Fi感あるサウンドになるので、Lo-Fi HipHopのようなジャンルでは人気です。
以上、ディストーション(歪み)が音楽に与える効果でした。