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部屋の音響を整えるためにやるべき5つのこと

部屋の音響を整えるためにやるべき5つのこと

綺麗な音で収音できるレコーディング環境や、正しいバランスでミックス作業を行うためには、まずは部屋の空間を音響的に"ニュートラル"にする必要があります。

その為には部屋で起こりうる音の反射や、不要なノイズを制御することが大切になります。今回は、ミキシング環境を最適化するためにできる5つのことと、安価で効果的なレコーディング環境を実現する方法をご紹介します

1. モニターの位置を正しく配置する

ステレオ音像を正しくリスニングする為にもモニタースピーカーは左右対称になるように設置して、角度もなるべく左右が同じように設置します。

スピーカーの置き方

部屋の反響音も聞こえてくるサウンドに影響するので、配置場所によっては左スピーカーと右スピーカーからの音のバランスに違和感を覚える場合があります。

部屋の設置場所もなるべく左右が対象になるように、部屋の角にデスクスペースを置くよりも、なるべく壁の中央に設置するのが最適です。

反射音

また、スピーカーから出た音の反射音は近くの壁の方が遠くにある壁よりも早く大きな音量で返ってきます。

距離による反射の違い

反射音の音量が大きいほど、スピーカーから直接聴こえてくる原音に混ざってしまうので、なるべく反射音による音の干渉を少なくする為にも、部屋の形が長方形の場合は短い壁の方に向かってデスクを配置するようにしましょう。

モニターを耳の高さに合わせる

モニタースピーカーのツイーターを耳の高さと平行になるように設置することで、音の分散を抑えることができ、特に高音成分を正しくモニターすることができるようになります。

スピーカースタンド

サウンドが持つ波形というのは、高音になるほど音の指向性が高く(決まった方向に飛んでいく)逆に低音成分は指向性が低く、どこから鳴っているのかが分かりにくいという性質があります。

高さやツイーターの向きがおかしいと、高音が上手く聞き取れず、こもったようなサウンドになってしまいます。

2. 家具を利用する

家にある家具を使用することで、予算をかけずに部屋の音響を改善することができます。

部屋の硬くて平らな壁をできるだけ凹凸をつけたり、柔らかい素材に変えることが効果的なので、カーテンを閉めるだけで吸音効果が上がります。音の反射を減らすのにも効果的です。

また、ソファーのような柔らかい家具を使うことも同じような効果があります。例えば、背後の壁にソファを設置することでスピーカーからの反射を吸収してくれます。

床には、大きな絨毯や敷物を敷くようにすると効果的です。

3. 吸音材を活用する

作曲家の部屋やレコーディングスタジオ等で壁にやわらかい防音材が張られているのを見かけたことがあるかと思います。

吸音材は音波を吸収し、反射や共鳴を減少させる役割を果たします。壁面に貼り付けることで室内の音響を調整し、エコー、反響、ノイズなどの問題を軽減するのに役立ちます。

自宅の壁を防音性の高い柔らかい材質に変えるのは現実的では無いので、部分的に防音材を貼るだけでも効果は高いです。

防音材を貼る場所

吸音パネルの貼る場所は、優先順位的に正面(モニターの後ろ)と側壁、次に天井に取り付けられます。壁から数センチ浮かせたフレームに取り付けると、吸音特性が大幅に向上しますが、難しい場合は、できる限り厚いパネルを選択するとより効果的です。

一番最初に耳に帰ってくる初期反射音を視覚的に見つける方法としては、跳ね返ってくる壁に鏡を設置して、座っている場所から鏡を通してスピーカーが見える場所が一番大きな反射音を生むポイントです。

初期反射

この方法なら少ない枚数で大きな効果を得ることができるので、できる限りコストを下げたい場合にもおすすめです。

4. スピーカーの特性を知る

ここまでの改善策は、ホームスタジオの音響を目に見える形で改善できますが、それだけで理想的な音響を実現するとなると難しいです。

そこで「モニターキャリブレーション」ツールを使用することで、どんな部屋のモニターからも正確な音響値を計ることが可能になります。

音響補正ソフトウェアの効果を簡単に説明すると、音声の周波数スペクトルのピークと谷を修正するためにモニターに適用されるオーディオ処理です。これはEQ処理だけではなく、より高度なルーム補正ソフトウェアは、壁から耳やスピーカーに跳ね返る音によって引き起こされる位相とステレオの広がりのトラブルにも対処可能です。

各音楽メーカーから様々な製品がリリースされていますが、有名所だとIK Multimedia ARC System 3や、Waves TRACT System Calibrationといった製品があります。音声解析と補正システムの組み合わせにより、あらゆる空間のモニタリング精度を向上させることができます。

5. 85dBルール

私たちの耳と脳は、音量が異なることで周波数の知覚が変化します。

これは等ラウドネス曲線で確認することができ、特に500Hz以下の低音部分は物理的音量が低くなるほど人の耳には聴こえにくくなるというのが分かるかと思います。

ミックス品質向上の為に学んでおきたい音響心理学

等ラウドネス曲線

この現象を考慮したうえで、最もフラットに聴こえるポイントは「85dB」と言われており、なるべく85dBの音量に近づけることで音量感に左右されないモニタリングが可能となります。

とはいえ、85dBは「走行中の電車内」「救急車のサイレン」くらいの騒音に近い音量感で、国立労働安全衛生研究所 (NIOSH) によると、85dBは人間が8時間続けてリスニングする場合の最大推奨レベルです。これは、音が人間の聴覚に悪影響を及ぼす可能性がある音量とされています。

ここで重要なのは、85dBでミキシングするということよりも「音量感で周波数帯域の聴こえ方が大きく変化する」ということを意識しながらミキシングすることです。大きな音にするだけで、良い音だと錯覚してしまうこともよくあることなので、常に音量感を意識しながら色々なデバイスや再生環境を使ってモニタリングすることが重要になります。


まとめ

部屋の音響を整える為に5つのステップは以下の通りです。

  • モニターの位置を正しく配置する
  • 家具を利用する
  • 吸音材を活用する
  • スピーカーの特性を知る
  • 85dBルール

モニタースピーカーを適切に配置することからスタートして、部屋の家具を活用して音の反射をなるべく低減させましょう。次に、スピーカーから出力される音質特性を把握する為に、モニターキャリブレーションを使って音のスペクトルを調整します。

プロスタジオのような防音設備にするのは膨大なコストと時間がかかるので、なるべく低予算で個人クリエイターでも実際に実行できそうなものになっています。部屋の音響を向上させたい場合は、是非取り入れてみてはいかがでしょうか。

以上、「部屋の音響を整えるためにやるべき5つのこと」でした。


ミックス用モニタースピーカーの間違った設置方法

部屋の音響を整えて、より正確にモニタリングする方法【DTM】

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