【DTM】初心者必見!部屋の音響を改善してミックス精度を上げる6つの方法
ミキシングをするときには、正確なモニタリング環境がとても重要になります。環境が悪いと録音、編集、ミキシングする時に重要な判断を下すことが難しくなってしまいます。
特に個人で活動しているDTMerの場合は、プロフェッショナルなレコーディングルームのような完璧に処理された部屋で作業する人は少なく、ほとんどは寝室のような小さなスペースで作業することが多くなります。
しかし、ありがたいことに最近では、プロフェッショナルな音響特性を得る為の音響補正ソフトウェアやモニターDSP処理など、手頃な価格の音響監視ツールもたくさん存在します。
そこで今回は、個人クリエイターの方にむけて、部屋の音響を整えて、より正確にモニタリングする方法についてご紹介します。
1. 正三角形を作る
まずはモニタースピーカーを正しく配置することで、快適なモニタリング環境を作成します。
自分の頭の位置を正三角形の頂点の1点に配置し、スピーカーを他の2点に配置することで、リスニングの為のスイートスポットを備えたバランスの取れた環境を作成できます。
デスクの快適な場所に座り、モニターを耳から等距離に配置し、スピーカーが自分とのラインに沿うように角度をつけることで高音も正しくモニターできます。
理想的には、スピーカーのツイーターを耳の高さになるように台を置くことで、室内で失われやすい高周波も聴き取りやすくなります。
スピーカー同士の幅が広すぎると、周波数情報が耳を超えてしまい、逆に狭すぎると左右の音が干渉することでステレオイメージがぼやけて不明瞭になります。
→モニタースピーカーの正しい配置方法【DTM】
2. 85dBルール
私たちの耳と脳は、音量が異なることで周波数の知覚が変化します。
これは等ラウドネス曲線で確認することができ、特に500Hz以下の低音部分は物理的音量が低くなるほど人の耳には聴こえにくくなるというのが分かるかと思います。
→ミックス品質向上の為に学んでおきたい音響心理学
この現象を考慮したうえで、最もフラットに聴こえるポイントは「85dB」と言われており、なるべく85dBの音量に近づけることで音量感に左右されないモニタリングが可能となります。
とはいえ、85dBは「走行中の電車内」「救急車のサイレン」くらいの騒音に近い音量感で、国立労働安全衛生研究所 (NIOSH) によると、85dBは人間が8時間続けてリスニングする場合の最大推奨レベルです。これは、音が人間の聴覚に悪影響を及ぼす可能性がある音量とされています。
ここで重要なのは、85dBでミキシングするということよりも「音量感で周波数帯域の聴こえ方が大きく変化する」ということを意識しながらミキシングすることです。
大きな音にするだけで、良い音だと錯覚してしまうこともよくあることなので、常に音量感を意識しながら色々なデバイスや再生環境を使ってモニタリングすることが重要になります。
3. 家具を利用する
家にある家具を使用することで、予算をかけずに部屋の音響を改善することができます。
部屋の硬くて平らな壁をできるだけ凹凸をつけたり、柔らかい素材に変えることが効果的なので、カーテンを閉めるだけで吸音効果が上がります。音の反射を減らすのにも効果的です。
また、ソファーのような柔らかい家具を使うことも同じような効果があります。例えば、背後の壁にソファを設置することでスピーカーからの反射を吸収してくれます。
床には、大きな絨毯や敷物を敷くようにすると効果的です。
4. 吸音材を活用する
作曲家の部屋やレコーディングスタジオ等で壁にやわらかい防音材が張られているのを見かけたことがあるかと思います。
吸音材は音波を吸収し、反射や共鳴を減少させる役割を果たします。壁面に貼り付けることで室内の音響を調整し、エコー、反響、ノイズなどの問題を軽減するのに役立ちます。
自宅の壁を防音性の高い柔らかい材質に変えるのは現実的では無いので、部分的に防音材を貼るだけでも効果は高いです。
防音材を貼る場所
吸音パネルの貼る場所は、優先順位的に正面(モニターの後ろ)と側壁、次に天井に取り付けられます。壁から数センチ浮かせたフレームに取り付けると、吸音特性が大幅に向上しますが、難しい場合は、できる限り厚いパネルを選択するとより効果的です。
一番最初に耳に帰ってくる初期反射音を視覚的に見つける方法としては、跳ね返ってくる壁に鏡を設置して、座っている場所から鏡を通してスピーカーが見える場所が一番大きな反射音を生むポイントです。
この方法なら少ない枚数で大きな効果を得ることができるので、できる限りコストを下げたい場合にもおすすめです。
5. 色々な場所でミックスを確認する
「部屋の音響」という今回のテーマから少しずれてしまいますが、出来る限り自分の部屋以外の色んな場所でサウンドチェックすることをおすすめします。
車道の横を歩きながら、電車の移動中、車の中で大音量で再生してみたりと、様々なリスニング状況を想定して確認することは非常に効果的です。
特に車の中だと大音量が出しやすいことでローエンドが露出しやすく、自宅の音量感では確認できないような低音の鳴りを確認することができるのでおすすめです。
作業部屋を出ることでミックスの問題点を素早く浮き彫りにし、耳をリセットすることで特定の音やトーンに集中しすぎるのを防ぐことができます。これは部屋の音響を整えることと同じくらい重要なことです。
6. 音響補正ソフトウェアを導入する
どんな部屋のモニターからも正確な音響値を計るのに役立つソフトウェア製品がいくつかあります。
音響補正ソフトウェアの効果を簡単に説明すると、音声の周波数スペクトルのピークと谷を修正するためにモニターに適用されるオーディオ処理です。これはEQ処理だけではなく、より高度なルーム補正ソフトウェアは、壁から耳やスピーカーに跳ね返る音によって引き起こされる位相とステレオの広がりのトラブルにも対処可能です。
各音楽メーカーから様々な製品がリリースされていますが、有名所だとIK Multimedia ARC System 3や、Waves TRACT System Calibrationといった製品があります。
音声解析と補正システムの組み合わせにより、あらゆる空間のモニタリング精度を向上させることができます。
まとめ
DTM初心者の方に向けて、部屋の音響を改善してミックス精度を上げる方法をご紹介しました。
- 正三角形を作る
- 85dBルール
- 家具を利用する
- 吸音材を活用する
- 色々な場所でミックスを確認する
- 音響補正ソフトウェアを導入する
自宅の場合、プロフェッショナルなスタジオのような完璧なモニタリング環境を作るのは難しいですが、今回紹介した方法を試すことで、より正確なモニタリングに近づけることができます。
まずは、スピーカーの配置を見直し、適切な音量でモニタリングを行うことから始めてみましょう。そして、家具の配置や吸音材の活用で、部屋の音響特性を改善していくことができます。
今回紹介した方法を組み合わせることで、普段のミックス精度を格段に向上させることができますので、是非試してみてください。
以上、「【DTM】初心者必見!部屋の音響を改善してミックス精度を上げる6つの方法」でした。