これからの音楽業界はどうなる?今のミュージシャン達が知っておくべき5つの事
音楽業界のスタンダードがすべて変わった2020年。
社会情勢の変化と共に、バーチャルライブやTikTokを始めとするバイラルヒットが多く生まれ、それまでのプロモーションビデオを撮影し音源を売り、ライブ、物販販売といった王道の流れでは通用しなくなりました。
世の中の流れが収束するまでは、見通しの効くツアーやライブ予定表が作成できず、レコード会社やアーティスト、起業家たちまで、誰もが新たな収入源とファンとの繋がり方を模索しなければならなくなりました。
そこで今回は2020年の流れをくみ取って、2021年の音楽業界の動向と、ミュージシャンが知っておくべき事柄についてお話します。
1. リリース戦略の変化
これまでの音源リリースはMVを作成し、販売数か月前からティーザーを流し、メディアへの露出が必要でしたが、海外を含めた2020年の多くのヒットソングはTikTokを始めとしたショートムービーのバイラルヒットやSNSを利用したサプライズリリース等、これまでとはまったく違う形でトップチャートへ浮上しています。
2020年の顔ともいえる「YOASOBI」もTikTokきっかけで突如トップチャートに浮上し、CDを1枚もリリースすることなくテレビ初登場が「紅白歌合戦」という、まさに新たなリリース戦略の代表格とも言えるアーティストです。
宣伝広告にコストをかけることなく、ソーシャルネットワークを利用した瞬発的な拡散力のアルゴリズムを理解することが、これからの音楽マーケティングには必要なのかもしれません。
2. バーチャルコンサートの普及
ライブができなくなったアーティスト達は、一斉にファンと繋がる手段としてライブストリーミングを活用するようになりました。
オフ感の漂うiPhoneで撮影したようなカジュアルな演奏動画から、多くの予算と手間を費やした大掛かりなものまで様々です。
またフォートナイトやロブロックス等のオンラインゲームの世界を舞台としたバーチャルコンサートも話題となりました。
フォートナイト内でのバーチャルコンサートを行った世界的な人気ラッパーの「トラヴィス・スコット」は約2000万ドルを稼いだとされ、リル・ナズ・Xのショーは3300万人が視聴。
ジャスティン・ビーバー、ザ・ウィークエンド、J・バルヴィン等の大物アーティスト達もバーチャルコンテンツ開発をする会社に投資する流れとなりました。
国内でも米津玄師が同様にフォートナイト内でバーチャルライブを行い、最近だと「荒野行動」×「乃木坂46」のバーチャルライブも発表され話題となっています。
3. レコード会社とアーティストが対等な関係に
これまではレコード会社とアーティストの関係性は決して公平と言えるものではありませんでした。
個人が発信力を持つ時代となり、そのパワーバランスが大きく崩れ始めており、音楽以外にも多くのタレントもいわゆる「事務所離れ」が目立ってきています。
アーティストにとっては面倒と思えるような、音楽以外のマネージメントや流通、広告関係もITテクノロジーの進歩により個人でDIY可能な領域となってきているのが大きな一因となっています。
楽曲の原盤権争い
それ以外にもアーティストの原盤権問題も大きなニュースとなっています。
・業界でも大きな話題となっているのが、テイラー・スウィフトのマネージャーである「スクーターブラウン」がロサンゼルスに拠点の置く投資ファンド「Shamrock Capital」に本人の許可なく、レコードの原盤権を3億ドルで売買しました。
・この流れから自身とレコード会社との契約について、Twitterで不満を爆発させていたラッパーのカニエ・ウェストがソニーやユニバーサルミュージックを訴訟したりと、レーベルとの原盤権に関する契約内容に対して怒りを露わにしていた。
個人の発信力がついた今、事務所とアーティストのパワーバランスは大きく変化し、事務所側に分配が大きかった流れから、事務所にとってもお互いにWin-Winな関係性を築き上げる必要が出てきていると言えます。
4. 楽曲権利を売却する
2020年にスティーヴィー・ニックス、マーク・ロンソン、イマジン・ドラゴンズ、カルヴィン・ハリス等の有名アーティストが、楽曲の一部を大企業に売却する動きがあります。
業界随一の楽曲管理会社の「Hipgnosis Songs Fund」は、これまでに楽曲の買収に10億ドルをつぎ込んでおり、今後さらに大規模な投資を進めていく予定だということを発表しています。
2021年はライブやツアーでの収益がまだ見込めない為、個人のソングライター達は提示額が魅力的な楽曲の売却に乗り出しています。
5. メジャーレーベルを追い越す個人レーベル
パンデミックになり個人のDIYミュージックは急激に増加しました。
TuneCoreやCDBaby等のディストリビューションからの配信プラットフォームにアップロードされた楽曲数は2019年頃から飛躍的に上昇し、メジャーレーベルのストリーミング市場のシェアを奪っています。
現在はDIY音楽制作をする人の数が世界全体で約1400万人に上り、DIYシーンの影響力は今後さらに増していくと言われています。
今後はそういった動きに対してのメジャーレーベルの反応や、リリース過多の音楽コンテンツの飽和した状態となり、レーベル各所の関心はシェアをとる動きよりも利益率に結び付く戦略へと変化しつつあります。
まとめ
2021年の音楽ビジネスの動向について解説しました。
- リリース戦略の変化
- バーチャルコンサートの普及
- レコード会社とアーティストが対等な関係に
- 楽曲権利を売却する
- メジャーレーベルを追い越す個人レーベル
2020年に起こったパンデミックの影響もあり、業界は過去最大級の変化を遂げています。
パンデミック収束のタイミングや、収束後に再びライブやツアーが再開されるのか?といった不明確な要素も多く、まだまだ音楽業界において大きな収入源となる柱はまだ見つかっていないのが現状だと思います。
今後は制作に打ち込みながらも、移り変わる業界の情報を自分で取りに行き、DIY的な活動が必要となるのかもしれません。
以上「これからの音楽業界はどうなる?今のミュージシャン達が知っておくべき5つの事」でした。