マイクの「ハウリング現象」を解消する方法
ハウリング現象とは、マイクから入力された音信号がスピーカー等のオーディオシステムから出力され、その音が再びマイクに入力されることで発生する音響フィードバックの一種です。
「キーン!」と耳につく高音が鳴り響くので、非常に不快感があり、解消しない限り音が増幅し続けるので、放置するとスピーカーや耳を破壊してしまうこともあるので注意が必要です。
ハウリング現象は様々なところで発生する可能性があり、プロのライブステージから、カラオケ、ストリーミング配信のようなマイクを利用する場面で起こりえます。
そこで今回は、マイクのハウリング現象を解消するいくつかの方法をご紹介します。
ハウリングの発生原因
ハウリングは、音声がマイクで収録され、スピーカーから再生された音が再びマイクに戻ることで生じます。このように音がループして、ハウリングが発生する状況を「ハウリングラウンド」と呼び、音響環境や設備によって異なります。
ハウリンググラウンドは、音声がシステム全体で一定のゲインで増幅されることで発生します。ゲイン量が十分に高く、一般的にマイクに混入する音が1よりも大きいと音がフィードバックしやすくなります。つまり、スピーカーからマイクに戻る音が純粋な出力よりも大きくなる場合、フィードバックが発生します。
ハウリングの発生は、マイクを使用している音量の絶対レベルではなく、システムゲインに関連しています。マイクに向かって正しく発声出来ているシンガーの場合、マイクのゲインが低く保つことができるので、フィードバックの問題を引き起こすことはありません。
反対に声が小さすぎたり、マイクからの距離が遠い場合はゲインを上げる必要があるので、フィードバックの問題も発生しやすくなります。
ハウリングの解消方法1 : マイクの位置と向き
マイクをスピーカーからできるだけ遠ざけ、スピーカーの方を向かないように配置します。これにより、スピーカーからの音が直接マイクに入るのを防ぐことができます。
ボーカルマイクの定番機種「Shure SM58」などのカーディオイドタイプのマイクは、前方からの音に対してもっとも敏感で、後方からの音はあまり拾わないので、モニタースピーカーと反対の方向に向ける必要があります
ボーカルマイクの中にはハイパーカーディオイドパターンを持つものもあります。これらのマイクは後軸から 30~45度の範囲にデッド ゾーンがあるため、マイクとモニターとの相対角度をそれに応じて調整する必要があります。
マイクの種類とその効果についてを参考にマイクの指向性タイプを把握しておくことも、ハウリングを回避する為に重要です。
ハウリングの解消方法2 : 音の反響を減らす
音響環境を改善するために、吸音材やディフューザーを使用し、音の反射や共鳴を減少させることが効果的です。音響環境を良くすることでハウリングのリスクを軽減することができます。
音響環境を改善する為の方法は以下の通りです。
- 吸音材の配置
適切に配置された吸音材(吸音パネルや吸音材料)は、反射音を減少させ、ハウリングのリスクを低減します。壁や天井に吸音材を設置し、音の反射を防ぎます。 - ディフューザーを使う
ディフューザーは音を均一に拡散することで、反射音の強度を減少させます。音響環境が反響しやすい場合、ディフューザーを導入することで改善が期待できます。 - 家具の配置
宅録や配信を行う場合は、家具やカーテンなどの柔らかい材料を壁面に使用することで、反響を減少させることができます。その他の家具配置にも注意が必要です。
ハウリングの解消方法3 : マイクの持ち方
ボーカリストがマイクを手に持ってステージ上を歩き回るようなシチュエーションでは、マイクの握り方やマイクの構えも重要になります。
マイクを持つときには、グリル部分に手が覆いかぶさらないようにして握りましょう。指向性を持たせるためのチューニングポートがグリル内にありますが、マイクの上部を握ってブロックされることで、マイクの指向性が変化してしまいます。マイクの指向性がより無指向性になり、フィードバックが発生しやすくなります。
また、マイクに向かって歌っていないときは、マイクをほぼ直立させるようにして、モニターのある下方向に向けないようにすることでハウリングを回避することができます。モニターのほうにマイクを向けると、ほぼ確実にハウリングを引き起こします。
ハウリングの解消方法3 : ゲインと音量の調整
マイクのゲインとスピーカーの音量をバランスよく調整します。ゲインが高すぎるとハウリングが起こりやすくなりますので、慎重に調整しましょう。
先述したように、ボーカリストができるだけマイクを口の近くに持ってきて、正しい発声が出来ていることでフィードバックの可能性をさらに減らすことができます。
こうすることで、PAはマイクのゲインを下げることができ、ステージ上の無関係な音(ドラム、ギター、モニター音など)のマイク混入を相対的に下げることができるので、ハウリングを抑えることができます。
ハウリングの解消方法4 : イコライザーの使用
特定の周波数でフィードバックが気になる場合は、イコライザーを使用して、問題のある周波数をカットすることでハウリングを回避することができます。
やり方としては、フィードバックが始まるまでマスター レベルを上げ、その後、フィードバックが発生している周波数を特定し、EQでその周波数を下げます。ゲインを限界まで上げつつ問題の周波数だけを下げれるので、より高音質なマイク信号を得ることができます。
使用するEQによっては、カットする部分がフィードバックスポットよりも大きくなることが多いので、システム全体の音質が影響を受けることに注意してください。必要最低限のできるだけ少ない量のカットで済むようにしましょう。
ハウリングの解消方法5 : フィードバックサプレッサーを使う
最近では、自動アンチフィードバック装置なる製品もリリースされており、自動的にハウリングを起こす周波数を検知し、フィルターを配置してフィードバックを除去してくれる便利ツールです。
人気のBehringerのフィードバックサプレッサーは、フィードバックを自動的に検出して、最大24個のフィルターを調整してハウリングの原因となる周波数を自動的にカットしてくれます。
音響環境やシステム上、上記の方法だけでは解消できないような場合は、フィードバックサプレッサーの導入を検討してみましょう。
まとめ
ハウリング現象は、ライブステージからカラオケ、ストリーミング配信など、さまざまな場面で問題となります。ハウリングを解消するには、ゲイン量とマイクの配置を見直して、それでも解消しない場合は音響環境の最適化を検討してみましょう。
より高度な解消方法としては、イコライザーの使用、フィードバックサプレッサーの導入などの機材を導入することで、ハウリングを最小限に抑え、高音質なサウンドを得ることができます。
以上、「マイクの「ハウリング現象」を解消する方法」でした。