音楽におけるサンプリングとは?正しくサンプリングする為のガイド
音楽におけるサンプリングは非常に便利かつ、アイデアを閃くためのヒントとしても役に立つテクニックです。
ヒップホップやエレクトロ系の音楽では使われていない楽曲を見つけるほうが難しいぐらい、頻繁に使用されており、特に現代の音楽プロデューサーにとっては必須のスキルのひとつとなっています。
とはいえ、正しく音源をサンプリングする方法を知らないと、法的な思わぬトラブルにまで発展しまうというケースもあるので注意が必要です。
今回はサンプルを見つける場所、それらを使用してトラックを作成する方法、サンプルを使用する際の間違った知識などについて解説していきます。
サンプリングとは?
一般的にサンプリングとは既存の楽曲から一部を切り取り、新しく自身の作品に再利用する手法のことです。
既存の楽曲を使用する以外にも、自分で録音した音を楽曲内で使用したり、フレーズをカットして新しいフレーズを生み出したりと、音楽におけるサンプリングの意味合いは広いです。
AKAI MPCのようなサンプラーハードウェアを使ったり、DAWのサンプラープラグインやカットアップ技術を使って切り取り、それらの音源をループさせたり、大きくアレンジを加えたりして再利用するのが一般的です。
サンプリングのはじまり
音源サンプリングの歴史は古く、80年代から90年代初頭のヒップホップ黄金期に始まりました。
そこから技術が発展し、今ではEDM、ロック、カントリー、さらにはモダンなクラシックにまで、あらゆる音楽ジャンルで使用されています。
もちろん他人の楽曲の一部を再利用しているという行為に、サンプリングに反対するアーティストや音楽評論家も多くいましたが、サンプリングされた楽曲が権威ある音楽賞を獲得することも当たり前になってきており、そういった声も非常に少なくなってきました。
現在は「Loopcloud」や「Splice」のようなロイヤリティーフリーの大規模なサンプルライブラリを提供するサービスも増えてきたので、プロデューサーにとってこれを利用しない手はないです。
合法的な楽曲サンプリング
一般的に出回っている楽曲には「著作権」があります。切り取った数秒であっても「違法」だという認識は持っておきましょう。
YouTubeやSpotify、AppleMusicなどのストリーミングプラットフォームからリリースすると著作権侵害の警告がきて配信することはできません。
ピッチを変更したり、アレンジを加えて「警告を無視」することもできますが、後々大きなトラブルの原因にもなるのでやらないようにしましょう。
他人の楽曲から合法的にサンプルを入手する方法は著作権者に許可を取ることですが、個人のクリエイターが一般的に世に出回っているようなメジャー楽曲の著作権クリアランス(使用の承諾を得る)を行うのは簡単ではありません。
レコードのどの部分を使用しているのか?作曲、歌詞、レコーディングされた音、アレンジ、メロディーの一部など、それぞれに権利の所有先が違ったり、さらに所有元が大手の場合には、個人にとって非常に高いハードルとなってしまいます。
仮に取得できたとしてもロイヤリティの支払いを命じられたりと、あまり現実的ではありません。
勝手にサンプリングするとどうなる?
海外と日本だとサンプリングの認識の違いもありますが、日本だと特に切り取った短いフレーズは勝手に使っても良いという認識のプロデューサーが非常に多いような気がします。
YouTubeで堂々とメジャー楽曲を切り取っている場面を公開して、使っているプロデューサーもいるほどです。
このように実際には多くのアマチュアやプロでさえも、サンプリングに関して誤った認識を持っていることがほとんどです。
間違えやすいサンプリング知識
・クリアランスをせずに曲の一部をサンプリングすることは、サンプルの長さに関係なく違法。
・著作権局に登録されていなくても、誰かの作品をサンプリングすることはできません。
・利益を得るつもりがなくても、クリアランスされていないままのサンプリングは禁止。
・歌詞にも著作権は存在する。
さらに「使ってもバレない」「気付かずに使ってしまった」結果、リリースしたあとに法的措置を取られるケースも少なくありません。
実際に起こった事例
・エド・シーランのモンスターヒット「Shape of You」がサム・チョクリの2015年の曲「OhWhy」からコーラスをコピーしたという告発で、楽曲に対するすべての使用料がストップ。
・昨年全米で最もヒットした「Lil Nas X “Old Town Road」はビート販売サイト「Beatstars」で30ドルで売られていたビートを元に作られており、実はそのビートにNine Inch Nailsの「34 Ghosts Ⅳ」が使われていたことが判明。
・ケイティ・ペリーの「Dark Horse」がフレイム「Joyful Noise」に似ていると判断され、ケイティと制作チームとレーベルは約2億9000万円の支払いを命じられる。
故意なのか偶然なのか真相は分かりませんが、世界的な人気楽曲でさえもサンプリングによる落とし穴にはまってしまっています。
特に最近のTypeBeatのようなロイヤリティーフリーだと思っていた楽曲の中に、実はクリアされていないサンプリング音源が使われていた。というのはなかなか回避が難しい事例です。
正しくサンプルを入手する方法
合法的に正しく音源サンプルを入手する方法としては、冒頭にもお話したように「Loopcloud」や「Splice」といった商用利用可能なサンプル音源のサブスクリプションサービスを利用するのが、一番安全で最も多くのプロデューサーが採用している方法です。
次にハードウェアを使ってビートメイクしているプロデューサーも多く、特に「AKAI MPC One」のようなSpliceと同期できる製品も販売されているので、PCが無くても膨大なサンプルライブラリを使って制作ができる環境も整ってきています。
どうしても一般に出回っている音源からサンプリングしたい場合は許可を取るか、クリエイティブコモンズの表示のある楽曲を利用するなどして、無許可でサンプリングすることはやめましょう。
以上、「音楽におけるサンプリングとは?正しくサンプリングする為のガイド」でした。