
808ベースのミキシングテクニックについて
現在のHip-Hop,Trapミュージック制作に欠かせないのがこの808キックと呼ばれるRoland社のTR-808。
1983年に1万2千台しか製造されず、当時の価格で15万円で販売されていた製品であるにも関わらず、2020年になろうとしている現在、世界の音楽シーンを担う音源サンプルとして世界中で使われています。
もしTR-808が生まれなければ今の音楽シーンが無かったと思うと日本の技術力はさすがといったところでしょうか。
今回はこの808ベースのミキシングについて解説していきます。
※記事内にわかりやすいよう音声も一緒に貼っていますが、808はサブベースと呼ばれる非常に低い音域を使っているためスマホのスピーカーや安価なイヤホンでは聴き取れません。
良質な808ベースサンプルを入手

実際に楽曲制作で使う場合は808ベースをシミュレートした音源サンプルを使います。
808ベースに限らず、ミックスにおいてまずは良質な音源を入手することが最も重要で、最終的な音源クオリティや製作時間に大きな影響を与えます。
現在アレンジを加えられた様々な種類の808サンプルがネットに出回っていてますが、その中から良質なサンプルを見つけ出し使用することが重要となってきます。
個人的にはオリジナルのRoland TR-808の音源も含まれている、こちらのWave Alchemyの「808 Drums」というサンプルパックがおすすめです。
その他Hiphop製作に必要な音源もいくつか含まれています。
- 560 24-bit 100% royalty free Roland Tr-808 drum samples
- 259 kick drums
- 102 clap & snare drum samples
- 109 tom & conga samples
- 53 hats & cymbal sounds
- 37 percussion samples
ピッチ修正
テールが伸びるのが特徴のサンプルなので音程には気を付けましょう。
他の楽器に合わせたり、状況に応じて808のピッチを修正します。
あまり大きく修正すると波形が崩れてしまうので、耳で判断して使えないと思ったら諦めて違うサンプルを探しましょう。
FL Studioの場合は「Edison」を使ってサンプルのピッチ確認ができます。

確認の方法がわからない場合はスペアナを使用して周波数を見て確認する方法もあります。

楽曲キーの選定
みなさんは楽曲のキーを決めるときにどうやって決めますか?
ほとんどの場合ボーカルの最高音やおいしい音域に合わせて選ぶと思いますが、Hip-hopやTrapといったジャンルでは曲中の最低音である「808」に合わせて選定することが多いです。
※状況によって他のパートに合わせる場合もあります。
クラブやフェスのような大音量で鳴らした場合に一番綺麗に響く低音の限界が「F」だと言われていて、これ以上低い音域だと家庭リスニング環境だとまったく聴き取れなかったり、アンサンブルの響きが濁ったりします。
Fより下も使っているプロデューサもいますが初心者にはあまりおすすめしません。
ゴリゴリのトラップミュージックじゃない限り、F#かGぐらいを目安にキー設定するのが無難でしょう。
ピアノロールで打ち込む
それではピアノロールを使って打ち込んでいきたいと思います。

王道ループな感じです。
ここで一つ気を付けるのがピアノロールで打ち込む時にはかならずエンベロープ形式にしてから打ち込んでください。

これをしないとワンノートごとにサンプルの頭から最後まですべて再生されるので、テール部分が次の音に被ります。
キックをレイヤーする

808ベースはほとんどが低音成分で、アンサンブルに混ざるとパンチが足りないのでキックドラムを重ねていきます。
※もとからキックを重ねてあるサンプルも多いので注意してください。
重ねるキックサンプルもこだわった方がいいのですが、今回はFL STUDIO標準のキックサンプルをレイヤーします。
なるべくキックも808に合わせるか5度上の音程になるように調節してください。
少しテールが長いのでキック終わりに上手く808が重なるようにEdisonを使ってカットします。
サイドチェインによるダッキング
次にサイドチェインを使ってキックが踏まれた瞬間に808側の音量が下げるように設定します。
- 808とレイヤーしたキックをミキサーに挿し込みます
↓ - レイヤーキック側のトラックを選択状態にします
↓ - 808のトラックの一番下の部分を右クリック
↓ - Sidechain to this trackを選択

これでキックが808にサイドチェインされました。
続いて808側に「Fruity Limitter」のプラグインを挿し込み、エフェクト内部の「SIDECHAIN」部分を右クリックして「Kick」を選択します。

リミッターの設定値は画像を参考に真似してもらって大丈夫です。
こんな感じでキックと808に一体感が生まれます。
まとめ
基本的な808ミキシングについては以上となります。
あとはお好みに合わせて、コンプでパツパツにしたり、サチュレーションをかけて更に太くしたりして加工してもいいですが、あまりやりすぎると良くないので、ほどほどに。
Hip-hopにとって心臓となる一番大切な部分なので、たっぷり時間をかけて調整することをおすすめします。
更に詳しく知りたい方は動画でも解説しているので、合わせてご覧ください。
【DTM】ノリを出すハイハットの音作り【Hiphop,Trap】
【DTM】ボーカルチョップ,カットアップの作り方【FL Studio】