モジュレーション系エフェクト「コーラス」「フェイザー」「フランジャー」の違いについて
最も一般的なモジュレーションエフェクターには、コーラス、フェイザー、フランジャーの3つがあります。
モジュレーションとは簡単に説明すると、音波の振幅・位相などを信号で変化させ、独特な音の揺らぎを与えるエフェクトです。
モジュレーションはさまざまな音源やレコーディングで利用されていますが、基本的にはすべて同じような動作原理を持ち、それぞれの微妙な違いを知っていることで、録音やミックスでより効果的に使用することができます。
それぞれの違いは何ですか?
コーラスとフェイザーとフランジャーは、それぞれのエフェクト効果を再現するために異なる方法を使用しますが、基本原理が同じなので、設定によっては同じように聞こえたり、大きく異なったサウンドになります。
それぞれの効果は信号をわずかに遅らせたり、音程をずらしたりして、元となるドライ信号とミックスすることによって起こる、様々な音の揺らぎから生成されます。
設定にもよりますが、コーラス→フェイザー→フランジャーの順に揺らぎが激しくなる印象があります。
それらが生み出す効果はクリアな音の揺らぎから、渦巻くようなうなり声まで幅広いです。有名所でいうとエディ・ヴァン・ヘイレン氏がMXRのPhase 90とFlangerペダルの両方を使用したことで注目を集めました。
コーラスとは?
コーラスは原音に約0.01秒~単位の遅れた音を混ぜることで音に揺らぎを与えるエフェクターです。独特の透明感が得られるため、クリーントーンやアルペジオのような透明感や音の広がりが欲しい場面でよく使用されます。
その他にもリードトーンに音に厚みを出したい時など、隠し味的な用途でも使えるので、ギターのみならず様々な楽器に適用されるエフェクトの一つです。
繰り返し遅延音を生み出すことのできるBBD(Bucket Brigade Device)素子が開発されたのがきっかけになりコーラスエフェクトは開発されました。
フェイザーとは?
フェイザーは元となる信号を複製し、リアルタイムの音と、位相を変えた音の2つの波の干渉を利用して音色の連続的な変化を人工的に作り出すエフェクターです。
「フェイズ」という言葉の通り、複製を遅延させる代わりに、位相のずれによる「音の干渉」を生み出します。
オーディオ信号をオールパスフィルターに通すことで、信号の周波数成分を変更することなく、設定された周波数の周りに位相シフトを生み出します。オールパスフィルターを追加すると、信号にいくつかのノッチが作成されます。
フランジャーがいくつかのオールパスフィルターを配置して、より多くのノッチを作成するのに対して、フェイザーはそれほど多くは生成しない為、フランジャーに比べて穏やかなサウンドに聞こえます。
フランジャーとは?
「フランジング」という言葉は、テープマシンの60年代にまでさかのぼります。もともとは同じオーディオを再生する2台のテープマシンを使用して作成された手法でした。テープの再生にエンジニアがテープマシンのリールの外縁(フランジ)をわずかに押し下げることで、わずかな遅れが生じます。
コーラスの時間遅延、フェイザーの位相による効果を組み合わせたものがフランジャーにあたり、フェイザーと同じくドライ信号のコピーをシフトすることでエフェクト効果を生み出します。
フランジャーは信号を複製し、片方を時間遅延させて、元の信号の上に戻されます。実際にはコムフィルタリング(ノッチを連続的に繋げた形状)によって、周波数スペクトルの山と谷部分をいくつか生成して効果を生み出します。
「ジェットエンジン」のようなシュワーンというサウンドが特徴的です。
現在のモジュレーションエフェクトの使用用途
一般的なモジュレーション系のエフェクトはほとんどがギターエフェクターとして関連付けられることが多いですが、もちろん様々な音楽で利用されているエフェクトです。
ドラムにフェイザー使ったり、ベースの音像を広げるためにコーラスを使ったり、さらにはミックス全体にフランジャーをかけたりするアーティストやエンジニアも存在します。また、現代のヒップホップではオートチューンスタイルのボーカルにフランジャーもミックスすることもあります。
少し前はギター用の「飛び道具」的なポジションのエフェクトでしたが、動作原理を理解すれば、アイディア次第で様々な楽器に適用することができる便利なエフェクトの一つとして利用されています。
最近の楽曲では前面に出てくるリードトラックよりかは、バックグラウンド楽器やコーラスボーカルに使用されている印象があり、メインとは違った独特のサウンドを作成することで、前後の分離をよくすることができます。