Synthesizer VとVOCALOIDは何が違うの?それぞれの特徴を解説
ボカロPに憧れて、音楽制作に挑戦しようと思っているけど、VOCALOIDを始めとする歌声合成ソフトウェアは、他にもSynthesizer VやCevio AI等、色々あってどれを使えばいいのか迷いますよね。
筆者が実際に両方使ってみて感じた、それぞれの特徴や使いやすさなどをご紹介できればと思っています。
Synthesizer VやVOCALOIDといった、ボーカル音声合成ソフトウェアはボーカルパートの生成に使用され、プロデューサーや作曲家は、歌手を雇わずに歌声を制作できるようになり、どれもボーカルトラックを楽曲に組み込むことができます。
※最新のVOCALOID6ではAI技術を用いたVOCALOID:AIがリリースされ、Synthesizer V、Cevio AIに近い歌声合成になっています。今回の記事内容としては、VOCALOID 3、4あたりの人気ボカロキャラクターの歌声との比較でご紹介していきます。
今回は、特に人気の高いSynthesizer VとVOCALOIDの違いと、それぞれの特徴についてご紹介します。
VOCALOIDとは?
VOCALOID(ボーカロイド)とは、2003年2月に発表された、ヤマハが開発した音声合成技術とその応用製品の総称のことです。
歌声合成ソフトを使った作品や作曲家のことを「ボカロ曲」や「ボカロP」と呼ばれていますが、ボカロとはボーカル×アンドロイド=VOCALOIDの略称で、ヤマハが開発した歌声合成技術と、その応用ソフトウェアのことを表しています。
対応する歌声音源については、主にヤマハとライセンス契約を交わしたメーカーがサンプリングされた音声を収録した歌声ライブラリなるものを独自に製作し、VOCALOIDと組み合わせて販売している形になります。
VOCALOIDの歌声合成技術は「素片連結型」と呼ばれるもので、人の歌声の録音から切り出した歌声の素片を周波数領域で接続、加工することで歌声を合成している。
Synthesizer Vとは?
Synthesizer Vは、Dreamtonicsが開発する強力な音声処理エンジンと直感的で柔軟なユーザーインターフェースを併せ持つ歌声合成ソフトウェアです。
2018年リリースの比較的新しい歌声合成ソフトウェアで、最大の特徴は、AI人工知能による歌声合成のハイブリッド手法によるエンジンを搭載。これにより、サンプルベースのエンジンには見られない自然な歌声を実現。
2020年12月にはAI歌唱合成に対応した「Synthesizer V AI」がアップデートの形でリリースされ、楽譜データを入力することで、いわゆる"調声"なしでも、AIが自動で人間らしい歌声をシミュレーションして発声するようになりました。
エンジンアップデートに合わせて既存AIライブラリも頻繁にアップデートが施され、合成品質が改善されていく点も大きな特徴の一つ。
Synthesizer V 重音テトの歌声をチェック!人気曲をアカペラで歌ってもらった
それぞれの特徴の違い
Synthesizer VとVOCALOIDは、両方とも音声合成ソフトウェアですが、いくつかの違いがあります。以下に、それぞれのソフトの特徴をピックアップしてみました。
開発者とプラットフォーム
VOCALOID : VOCALOIDは、ヤマハが開発した音声合成技術で、VOCALOIDエンジンを使用したソフトウェアがいくつか存在します。初期のVOCALOIDエンジンはVOCALOID1から始まり、現在はVOCALOID 6のVOCALOID:AIエンジンが使われています。
Synthesizer V : Synthesizer Vは、Dreamtonicsが開発した音声合成エンジンとソフトウェアです。Synthesizer V Studioと呼ばれるバージョンが利用可能で、VOCALOIDとは異なるエンジンを使用しています。
歌声合成技術
VOCALOID : VOCALOIDは、歌声を合成するために音声合成エンジンを使用します。声質や音程、リズムなどを調整して歌声を生成します。
Synthesizer V : Synthesizer Vは、AI搭載のエンジンで人間の歌い方、音域に近いです。プリセットのフレーズを使って歌声を生成するのではなく、歌手の声の録音から歌声を合成します。
ユーザーインターフェース
VOCALOID : VOCALOIDソフトウェアは、ノートエディターを使用して音声データを編集することが一般的です。音符やリリースタイム、ビブラートなどを手動で調整することができます。
Synthesizer V : Synthesizer V Studioは、直感的なグラフィカルユーザーインターフェースを提供し、歌声のスタイルを選択。ノートを直接操作することもできますが、無調整でも人間っぽい歌い方を再現しています。
歌声ライブラリー
VOCALOID : VOCALOIDは、歴史も長いことから多くの歌声ライブラリーが存在し、各ライブラリーは異なる声質やスタイルを持っています。これらのライブラリーを購入し、使用することができます。
Synthesizer V : Synthesizer Vは、歌手ライブラリーとしていくつかのキャラクターが提供されており、それぞれが多言語歌唱合成(日本語・中国語・英語を発声可能)、や声色を調整できるボーカルスタイルを選択可能。
両方使ってみた感じたこと
実際に両方のソフトウェアを使ってみて、それぞれに大きな違いがあります。
総合的にみると、Synthesizer Vの方がAI機能を搭載していることによって、簡単な操作だけで非常に人間に近い歌い方が可能です。
とはいえ、VOCALOID3、4の頃の歌い方はやや機械的ですが、いわゆる「ボカロ」な歌声が特徴的です。最近の流行曲をみていると、あえて無機質な歌い方で発声させることがボカロ曲っぽさを強調し、多くのボカロファンの支持を得ているようにも感じます。
歌声合成技術が発展したことで、逆にLo-Fi音楽のような「あえて劣化させたりレトロ感を演出すること」に美徳を感じるユーザーも増えてきているのかもしれません。
人間らしさが欲しいのならSynthesizer V一択ですが、突き詰めると「じゃあ、人間に歌ってもらった方が良くない?」という矛盾にもぶち当たります。
実際のところ歌声合成ソフトを使うにあたって、「ボーカリストを雇うのが大変」「ボーカルトラックまですべてを自分でクリエイトしたい」等々…色々な理由があるかとは思います。
その辺の諸事情はいったんは置いておいて、ボーカルに求めるのは人間らしさかボカロっぽさか。クリエイターがどのような歌声が欲しいのかを考慮してから選択することも大切です。
で、どっちを使えばいいの?
個人的には、今から歌声合成ソフトを使った音楽制作を始めるのなら、Synthesizer Vをおすすめします。
理由としては、操作の簡単さと歌声のクオリティ、さらに主要なDAWであればプラグインとして立ち上げることができるからです。
さらに、人気ボカロキャラクターの"重音テト"のAI歌唱音源「Synthesizer V AI 重音テト」が、2023年4月27日に発売されたこともあり、VOCALOIDファンからも注目を集めています。
※かえるの歌をベタ打ち(調整なし)で打ち込んでみました。
もちろん、VOCALOIDには初音ミクや鏡音レン等、ボカロキャラクター自体に多くのファンが付いていたり、ボカロ曲として認められるのは「VOCALOID」を使った作品だけ。という風潮も少なからずあります。
そういった要素も考慮しつつ自分の制作スタイルにあった歌声合成ソフトを選択してみましょう。
以上、「Synthesizer VとVOCALOIDは何が違うの?それぞれの特徴を解説」でした。