
お気に入りのアーティストの声でAI楽曲を作る方法
最近の海外での音楽ニュースを見ていると、AI生成ボーカルの情報で賑わっています。クリエイターがAIを使って、自分自身の声や人気アーティストのDrake、The Weeknd、OasisのLiam Gallagherなどの有名アーティストの歌声を使用した作曲が流行っているようです。
このAI生成ボーカルのトピックは業界でも非常に注目度が高く、音楽業界にも大きな影響を与えそうです。まだ有名な例は数少ないですが、既に何千人もの音楽ファンがAIを使って、人気のある曲をカバーしたり、有名アーティストの声を使ってオリジナル曲を作ったりしています。
この種のAIを利用した音声模倣は法整備が整っておらず、特に既存のアーティストの声を模倣したAI生成の音楽を収益化しようとすること(例えばストリーミングサービスやYouTubeにアップロードすること)によるトラブルも多くあるようです。→AI生成ボーカルによるトラブルと音楽界への影響について
※既存アーティストの歌声を利用する場合は、機械学習への使用が許可された音声素材を使い、個人で楽しめる範囲で使用しましょう。実際に利用する際はすべて自己責任でお願いいたします。
任意の歌声でAI楽曲を作る方法

このようなAI音声のカバー曲を作成する人のほとんどは、オープンソースのソフトウェア「SoftVC VITS Singing Voice Conversion (So-VITS-SVC)」を使用しています。これはAIを利用したディープラーニングモデルで、あらゆる声の音色のオーディオファイルを使用してトレーニングを行い、音声録音をトレーニング済みの歌声に変換します。
こういったモデルは他にもありますが、現在最も人気があるので「So-VITS-SVC」です。アーティストの録音からボーカルステムをリッピングし、これらを使用してSo-VITS-SVCをトレーニングすることにより、ユーザーはソフトウェアにボーカル録音を処理して任意のアーティストのように模範することができます。
So-VITS-SVCについて
So-VITS-SVCソフトウェアをダウンロードしてローカルで実行することができますが、実際にはこのプロセスは少し複雑で、コーディングが必要であり、強力なGPUが必要になります。自分のPCでSo-VITS-SVCを使用したい場合は、YouTuberにいくつかのチュートリアルがあるので参考にしてみてください
ローカルで実行する以外にも、いくつかの方法があります。
Discordサーバー「AI World」
So-VITS-SVCが難しい場合はより簡単な代替手段として、AIボーカルユーザーに人気のDiscordサーバーである「AI World」にアクセスして、自動化されたボットを使用する方法もあります。
AI Worldのボットは同じソフトウェアを使っていますが、複雑なプロセスが大幅に簡素化されています。
ボーカルを処理する前に、アカペラボーカルトラックを用意する必要があるので、ボーカルリムーバーのようなボーカル抽出サービスを使ってアカペラトラックを入手します。
アカペラデータの準備ができたら、AI Worldサーバーの「ai-bot-1」を開き、オーディオ ファイルをチャットボックスにドロップします。

メッセージ内のファイルに「-model @JuiceAI1」というテキストを付け、「モデル」という単語をエミュレートする音声の名前に置き換えます。
※現在18人の声が利用可能で、リストにはカニエ・ウェスト、ドレイク、アリアナ・グランデ、テイラー・スウィフト、ジャスティン・ビーバー、ケンドリック・ラマー、トラビス・スコット等の人気アーティストの声が含まれています。
Googleクラウドで実行

AIボーカルを使いたいけど、PCにソフトウェアをインストールしたくない場合は、Googleのクラウドサーバーを使ったり、コミュニティが作ったGoogle Colabを利用することができます。※So-VITS-SVCのgithubのページではGoogle Colabのノートが公開されています。
実行するのは少し複雑ですが、ローカル環境が整っていない場合はこちらの方法もおすすめです。
著作権によるトラブルも

AIによる既存アーティストのボーカル生成は、許可されている音声を使い、現状は個人で楽しむ範囲で留めておくことをおすすめします。
以前に、アカウント名「Ghostwriter977」で知られる、AIによって生成されたDrakeとThe Weekndの曲「Heart on My Sleeve」は多くのユーザーから注目を集め、アップロード直後から数百万回の再生回数とストリーム数を記録しました。しかし、1日後にはストリーミングサービスから削除され、その後YouTubeからも削除され、結果、2人の所属するユニバーサルミュージックグループからの著作権侵害に関する通知を受ける事態に発展しています。
先述しましたが、この種のAIを利用した音声模倣の法的境界はまだあいまいな為、特に既存のアーティストの声を模倣して収益化することは推奨しません。
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