コンプレッサーのかけすぎ?過圧縮によるデメリットと回避方法について【DTM】
DTM(デスクトップミュージック)のミキシング工程において、コンプレッサーによる圧縮は、ダイナミックを平均化したり、音のトランジェント要素をコントロールする為に欠かせない要素の一つです。
EQと並んで、最も使用頻度の多いエフェクトの一つですが、過度なコンプレッサーの使用には注意が必要です。過圧縮はサウンドの品質を低下させ、トラック全体に悪影響を及ぼす可能性があります。
そこで今回は、コンプレッサーの過圧縮によるデメリットとその回避方法についてご紹介します。
コンプレッサーによる圧縮の原理
コンプレッサーとは簡単に説明すると「音を圧縮することで、サウンドの最大音量と最小音量の差を少なくする効果と、音の立ち上がり部分と持続音を調節すること」ができるエフェクトです。
もっとも基本的な使い方としては、大きい音を圧縮することで、小さい音との音量差を小さくして、全体の音圧を上げることが目的です。
このように、これ以上ボリュームを上げるとクリップしてしまうというような場合に、飛び出した音を圧縮することで更に全体のボリュームを上げることができます。
これがコンプレッサーの基本的な使い方です。
その他にも適用する楽器によって使い方は様々で、一概にこう使えばいい!というような簡単な攻略法は存在せず、それぞれに最適な圧縮を加えるには経験と熟練の耳が必要になるので非常に奥が深いです。
過圧縮された音源
過圧縮されたオーディオ信号の特徴は、ダイナミクスが平均化され過ぎていることと、多くのトランジェント(音の立ち上がり部分)が犠牲になっていることが挙げられます。
過度に圧縮された音源は自然なミックスに聞こえず、最悪の場合、不快なサウンドとして長時間聴いていると疲労を感じる音源であることが多いです。
音の立ち上がる部分から圧縮されていくこともあり、パーカッシブな楽器、特にドラム等の打楽器の明瞭さが失われ、パンチ感の損なわれた音楽になることがあります。
過圧縮の合図
どれくらいだと過圧縮すぎるのか?というのは長年の経験と慎重な判断力が必要になります。慣れてくると耳で聴いたり、波形を見るだけで判別できるのですが、DTMをやり始めたばかりの初心者の方にとっては難しいところです。
以下は、過圧縮を見極めるためのいくつかのポイントです。
ダイナミクスの喪失
トラック全体を聴いて、音量の大きな部分と小さな部分の間にコントラストがない場合、それは過剰に圧縮しすぎてしまっている可能性があります。マスタートラック上のレベルメーターが天井に張り付いてしまっている場合も同様です。
不自然な要素
コンプレッサーの設定を強くしすぎると、歪み、ポンピング、部分的な「潰れ」など、サウンドに不適切な要素が加わっていることがあります。また、音量が不自然に変化している箇所があれば過度な圧縮による影響である可能性が大きいです。
ゲインリダクションメーターが0に戻らない
コンプレッサーのゲインリダクションメーターが0に戻ることなく、常に圧縮がかかっている状態を維持しているようであれば、過圧縮状態である可能性があります。ゲインリダクションが-1~3dBくらいを目安にかかり過ぎないように注意しましょう。
こもった感じがする
リファレンストラックと比べて音が小さく聞こえる場合は、過剰に圧縮している可能性があります。コンプレッションを使用するとダイナミクスを抑えることができますが、トラックのエネルギーがなくなり、思ったよりも音圧が低く聴こえる可能性があります。
過剰な圧縮を避ける方法
楽器やミックス全体にコンプレッサーを加えるのは簡単です。しかし、すべてのコンプレッサーが必要かどうか?トラックに対して適切に使用できているか?を判断することは難しいです。
以下は、過剰な圧縮を避ける方法です。
コンプレッサーの目的を考える
コンプレッサーはオーディオ信号を処理する際に登場頻度の高いツールです。しかし、各トラックに挿したコンプレッサーの使用目的をはっきりと答えれない場合は、まずは何の為にコンプレッサーを使用するのかをじっくりと時間をかけて考えてみましょう。
- ダイナミックコントロール
楽器の音量レベルを均一にする目的。また、突発的なピークを抑える。 - サスティーンの向上
音の持続音を伸ばしたいときには、コンプレッサーが役に立ちます。 - トランジェントのコントロール
ドラムやパーカッション楽器のアタック部分を整えます。 - 複数のトラックをまとめる
バストラックに複数のトラックをまとめて、軽くコンプをかけることで「接着剤」の役割を果たします。
すべてのトラックにコンプを挿さない
新しいトラックを作成したら、とりあえずEQとコンプを挿してませんか?まずは個々の楽器トラック、または楽器のバストラックに本当にコンプレッサーが必要かどうかを判断する必要があります。
もちろん、作業している音楽のジャンルと好みのサウンドによって変化しますが、必ずしもすべてのトラックにコンプレッサーを挿すということはありません。
コンプレッサーを複数に分ける
1つのコンプレッサーを使ってすべてを圧縮するのではなく、サウンドの特定の要素を処理するために1つのコンプレッサーを使用し、別の処理にはもう一つのコンプレッサーを使用することもあります。
例えば、1台目でダイナミクスを軽く「ならす」ようにコンプをかけて、2台目でトランジェントのコントロールを行うといったような使い方です。
このような「シリアルコンプレッション」は、1台のコンプレッサーで一気に圧縮するよりも、異なるコンプレッサーを使用して段階的にサウンドを圧縮する優れた方法であり、より自然なサウンドが得られます。
パラレルコンプレッション
パラレルコンプレッションは、コンプレッションを掛けていないナチュラルな原音と圧縮した音を混ぜ合わせ、両方の良いとこ取りができる高度なミキシングテクニックの一つです。
通常のコンプレッサーで失いやすいトランジェントを維持しながら、過度に圧縮したトーンをブレンドすることができる便利な方法です。圧縮によるデメリットを回避しながら、過圧縮による重厚感のある音を追加することができるというメリットがあります。
ボリュームオートメーションを活用する
コンプレッサーを挿す前に、代わりにボリュームオートメーションを使用して、部分的なピークや静かすぎる部分をコントロールしてみてください。
特にボーカルトラックのようにダイナミクスの変化が大きい場合は、先にボリュームオートメーションで平均化することで、コンプレッサーによる圧縮量が減り、過圧縮のリスクを回避することができます。
まとめ
DTMにおいてコンプレッサーはダイナミックコントロールの為に不可欠なツールですが、過度な圧縮はサウンドに悪影響を及ぼし、不自然な音源を生み出す可能性があります。
コンプレッサーの目的を明確にして、適切なコンプレッションのテクニックを身につけ、音源ソースに対して臨機応変に対応することが、過剰な圧縮を避けることができます。
シリアルコンプレッションやパラレルコンプレッションなど、複数のコンプレッサーを工夫して使うことで、より自然でバランスの取れたサウンドを追求できます。
以上、「コンプレッサーのかけすぎ?過圧縮によるデメリットと回避方法について【DTM】」でした。