
ヘッドレスギターのメリット&デメリットは?人間工学に基づいた先進的なボディシェイプを徹底解説
近年、テクニカルなギタリストを中心に急速に支持を広げているヘッドレスギター。その名の通りヘッドストックがない独特のルックスは、一度見たら忘れられない強烈なインパクトを放っています。
とはいえ、伝統的なギターの形に慣れ親しんだ方にとっては、「なぜヘッドがないの?」「弾き心地やサウンドはどうなの?」といった疑問が尽きないかもしれません。
そこで今回は、ヘッドレスギターが持つメリットやデメリット、そして従来のギターとの違いについて、その魅力をお伝えします。
ヘッドレスギターが登場した背景

ヘッドレスギターの歴史は、1970年代後半にデザイナーのネッド・スタインバーガーが開発した「Steinberger」ギターに遡ります。彼の設計思想は、伝統や見た目にとらわれず、演奏性・機能性を合理的に追求するというものでした。
従来のギターでは、ヘッドに重たいペグが集中することで、立って弾く際にヘッド側が下がってしまう「ヘッド落ち」という問題が常にありました。また、弦を曲げる(チョーキングする)際の摩擦や、ペグへの弦の巻き付け方によってチューニングが不安定になることも課題でした。

ヘッドレスギターは、ペグをブリッジ側に移設し、ヘッドそのものをなくすという画期的なアイデアでこれらの問題を解決。その結果、完璧な重量バランスと驚異的なチューニングの安定性を手に入れました。
当初はその斬新すぎるルックスから一部の先進的なミュージシャンに使われるに留まっていましたが、近年ではStrandberg(ストランドバーグ)をはじめとする多くのブランドが参入。人間工学に基づいた設計やモダンなサウンドが再評価され、ジャンルを問わず多くのギタリストに受け入れられています。
従来のギターとの違いは?
それでは、ヘッドレスギターと従来のギターの具体的な違いについて見ていきましょう。
ヘッドがなく、チューニングはボディ側で

最大の違いは、やはりヘッドストックの有無です。弦の先端はネックの端でロックされ、チューニングはブリッジに搭載された特殊なノブで行います。これにより、弦はナットからブリッジまで一直線に張られ、摩擦によるチューニングの狂いを最小限に抑えます。
コンパクトで軽量なボディ

ヘッドがない分、全長が短く非常にコンパクトです。また、合理的な設計思想からボディも小さく、人間工学に基づいて体にフィットするようにデザインされているモデルが多く、全体的に非常に軽量です。この取り回しの良さは一度体験すると手放せなくなる魅力があります。
「0フレット」の採用

ヘッドレスギターの種類によっては、ナットのすぐ隣に「0フレット」が打ち込まれています。これにより、開放弦を弾いた時の響きが、指でフレットを押さえた時とほぼ同じになります。結果として、コードを弾いた際の各弦の音の粒立ちが均一になり、よりクリアなサウンドが得られます。
ヘッドレスギターを使うメリットとデメリット

メリット
- 最高の重量バランスと演奏性
最大のメリット。ヘッド落ちが一切なく、ギターが体に吸い付くような感覚で演奏に集中できます。長時間の演奏でも肩や首への負担が劇的に少なく、疲労を感じさせません。 - 驚異的なチューニングの安定性
弦の摩擦点が少なく、構造がシンプルなため、チューニングが非常に安定しています。特にアームを使ったトリッキーなプレイを多用するギタリストにとっては大きなアドバンテージです。 - 優れたポータビリティ
全長が短く軽量なため、持ち運びが非常に楽です。一般的なエレキギター用のギグバッグに余裕で収まり、電車移動やツアーなど、アクティブに活動するミュージシャンにとって最高の相棒となります。
デメリット
- 独特のルックスが好みを分ける
機能美を追求したデザインは、伝統的なギターの形を愛する人にとっては違和感があるかもしれません。「ギターはヘッドがあってこそ」という美学を持つプレイヤーも少なくありません。 - 弦交換やチューニングに慣れが必要
ブリッジ側でのチューニング操作は、ヘッドでの操作に慣れていると最初は戸惑うかもしれません。また、弦をロックする機構もブランドによって異なり、最初の弦交換は少し時間がかかる可能性があります。 - 専用弦が必要なモデルも
一昔前のモデルや一部のブランドでは、両端にボールエンドが付いた「ダブルボールエンド弦」という専用の弦が必要でした。最近は通常の弦を使えるモデルが主流ですが、購入前には確認が必要です。
ヘッドレスギターはどういう人におすすめなの?
ヘッドレスギターは、その特性から以下のようなギタリストに特におすすめです。
- 長時間の演奏やステージングを快適にしたい方
- チューニングの安定性を何よりも重視する方
- ギターを持って移動する機会が多い方
- プログレッシブメタルやDjent、フュージョンなどモダンなジャンルを好む方
特に、人間工学に基づいたネック形状や、低音弦側と高音弦側でスケールが異なる「ファンフレット」など、先進的な仕様と組み合わせられることが多いため、最新のギターテクノロジーを体感したいギタリストには最適な選択肢と言えるでしょう。
有名なヘッドレスギタリストのプレイを聴いてみよう
イメージを掴むために、ヘッドレスギターを効果的に使うアーティストの音楽を聴いてみるのが一番です。
Plini
Yvette Young - Ares (guitar playthrough)
まとめ
ヘッドレスギターは、伝統的なギターが抱えていた物理的な問題を、合理的な設計思想によって解決した「ギターの進化形」の一つです。その優れたバランス、安定性、そしてポータビリティは、一度体験すれば多くのギタリストがその魅力の虜になることでしょう。
もちろん、その独特なルックスは好みが分かれる部分ではありますが、食わず嫌いをせずにぜひ一度楽器店で手に取ってみてください。その驚くほどの軽さと構えた時のフィット感は、あなたのギタープレイを新しい次元へと導いてくれるかもしれません。
以上、「ヘッドレスギターのメリット&デメリットは?未来のスタンダードを徹底解説」でした。
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