シンセサイザーをアレンジする時に役立つ6つの打ち込みテクニック
シンセサイザーを使ってコードを作るときには、様々な打ち込みテクニックを駆使することで、壮大かつパワフルなサウンドを生み出すことが可能になります。
様々なテクニックの中でも、特にコードボイシングが重要で、ボイシングとは、コードに含まれるの"音の配置方法"のことであり、同じコードでも音の配置を変えるだけでも印象の違ったサウンドになります。
今回は、シンセサイザーのアレンジするときに役立つ5つの打ち込みテクニックに焦点を当て、どのようにして臨場感あふれるサウンドを生み出すかをご紹介します。
シンセサイザーでのコードボイシングの役割
シンセサイザーにおけるコードボイシングは、楽曲のサウンドに深みや表情を加えるための重要な要素です。
例えば、Cコード一つでも、積み上げ方を「ドミソ」なのか「ミソド」もしくは「ソドミ」にするのかで、音の印象が大きく変わります。ボイシングを工夫することで、より楽曲にあったコード使いが可能になります。
和音やコードの音の配置をアレンジすることで、求めている帯域にシンセサイザーを配置したり、サウンドの特性や表現力が大きく変化します。
以下に、シンセサイザーでのボイシングの主な役割は以下の通りです。
- サウンドの厚みを加える
ボイシングにこだわることで、シンセサイザーのサウンドに重層感が生まれます。シンプルな3音よりも複数の音が同時に鳴ることで、立体的で壮大感のある印象を与えることができます。 - コードの表現力を上げる
ボイシングは和音の表現に大きく寄与します。特にトップノート(一番上の音)をどの音にするのかで、コードの印象が変化するので、より多様な表現が可能になります。 - ステレオイメージを広げる
DTMのようなデジタルのボイシングでは、シンセサイザーの各音を左右に細かくパンニングすることができます。こうすることで音楽全体の広がりや立体感が向上し、リスナーにより没入感のある体験を提供することができます。 - 音楽ジャンルやスタイルへの適応
ボイシングは音楽ジャンルやスタイルに合わせて調整することも重要です。例えば、ロックでは3度の音を抜き、狭い音域のボイシングが適していたり、EDMやドラマチックな映画音楽では、2オクターブくらいの音域の広い配置が使われることもあります。 - トーンバランスの調整
ボイシングはシンセサイザーのトーンバランスを調整する手段としても利用されます。異なる音域や周波数領域の音を組み合わせ、全体的なバランスをとることができます。
楽曲に合わせて、異なるボイシングテクニックを活用することで、魅力的でオリジナルなサウンドを生み出すことができます。
1. トライアドコード
実際のプロダクションを例に、コードのボイシングについて、まずはEDMでよく使われるコード進行
Ⅰ→Ⅴ→Ⅵ→Ⅳ(C→G→Am→F) を使って説明していきます。
こちら基本形のトライアドコードです。すべてのコードの基本となる形なのでマスターしておきましょう。※コードに関してまだよくわからない方はこちらをご覧ください。
もちろんこのまま使用することもありますが、もっと音に広がりが欲しい場合は、クローズドボイシングからオープンボイシングに変更する必要があります。
2. 音域変化を少なくする
まずはコードの転回形を使い、コードチェンジをなだらかにしてみましょう。
GとFのコードのルートの音を1オクターブ上にあげます。
こうすることでコード変化による、音域の上下範囲が狭くなり、特定の音域にシンセサイザーを安定して配置さることができます。
他の楽器との兼ね合いや、特にシンセサイザーの場合は、ベースの音域に注意しながらボイシングを考えるのがポイントです。これだけでも立派なボイシングアレンジとなります。
3. 低音域を補強する
続いて、音が少し軽いような印象を受けるので、ルート+5度の音を必要に応じてオクターブ下に広げます。
こうする事で低音が補強され音に厚みが出ます。シンセサイザーの設定によっては既に低音が十分出ていることもあるので、オクターブ下を付けるかどうかの判断は大切です。
3度の音は、音域が低くなると濁りやすいこともあり、一定の音域以下では使用しないほうがクリアなコードトーンになります。
4. トップノートを決める
続いてトップノート(コードの一番高い音)です。トップノートとは1番耳に残る音なので、トライアドなら3度の音、7thなら7度、9thなら9度といったように、そのコードを特徴づける音をトップノートに配置するようにするのがコツです。
今回は3度の音をトップノートに配置します。
これで、最初のトライアドコードの状態と比べると、音の重厚感と広がりが出たかと思います。
このようにプロジェクトに合わせて、コードを特定の音域に配置したいときや、壮大な雰囲気にしたい時におすすめです。
5. ベロシティ
ノートを配置したら次にベロシティの設定をします。一音一音調整するのも、良いのですが主要なDAWを使っている場合は、ベロシティのRandomize機能を使うのが便利です。
これを適応すると人が弾いてるニュアンスに近くなり、生演奏感がでます。シンセサイザーではそこまでダイナミクスの変化を感じることもないですが、ピアノのような場合は効果的です。
以下、FL Studioを使ったRandomize機能の設定方法です。
すると、下のベロシティ部分がバラバラに配置されます。
一度ランダムに配置してから、手動で強弱を加えていく方法がおすすめです。
6. ストラム機能
ストラム機能の"Strum"とは直訳すると「かき鳴らす」です。
なにもしないベタ打ちのままだと、音の発生タイミングが全部同じで、すごく機械的なサウンドになってしまいます。
そこでストラム機能を使用することで、ギターを弦でかき鳴らした時の「ジャラーン」といった感じや、人の手でピアノの鍵盤を押したときのような微妙なタイミングのズレを表現することができます。
人が演奏する場合、必ずコードチェンジ時や鍵盤を押さえる時に多少のズレが発生します。ストラム機能を使って表現してみましょう。
ズームすると分かるのですが微妙にノートの配置が前後にズレています。これによってより人が演奏しているようなリアルなサウンドが再現できます。
ベロシティ設定と同様に、シンセの場合はそこまで目立たないのですが、ピアノ等の生楽器をしようする場合は使用したほうがリアルな演奏感になります。
まとめ
シンセサイザーでコードを作るときには、今回の内容を実践することで、よりプロジェクトに合わせたクリエイティブな伴奏トラック制作を行うことができます。
特に前半で取り上げたコードボイシングのテクニックは、多くのプロデューサーが採用している実践的な手法です。シンセサイザーの出力するサウンドや、他の楽器によってアレンジ方法は異なりますが、基本的な手法としては同じです。
以上、「シンセサイザーをアレンジする時に役立つ6つの打ち込みテクニック」でした。
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