リミッタープラグインの使い方【完全ガイド】
マスタープラグインの最終段階に使用されることも多いリミッタープラグインは、音源の仕上がりに直接影響する重要なツールです。
ミックスダウンに満足してストリーミング配信した後に、他のプロの音源と比べてパンチが欠けていたり、奥に引っ込んでこもって聞こえたりして悩んでいませんか?
今回はリミッターについて知っておくべきことと、正しく使用する方法について説明します。
リミッターとは何か?
リミッターとは簡単にいうと、ミキシングやマスタリングで利用されるプラグインで、音声信号が0dBのピークを超えないようにするためのツールです。
原理的にはコンプレッサーと同じで、レシオ値を最大にした圧縮と同じことです。ソフトクリッピング、サチュレーション等の圧縮により起こりうる概念は、ミックスにおいてミスを招くことがよくあります。
その理由の1つとして、圧縮による変化はディレイやリバーブのように分かりやすいものではなく、効果が認識しにくいうえにトラックに与える影響が意外と大きいということです。
もう1つの理由は、先ほども言いましたがコンプレッション系統とすべて同じ基本概念であるということです。基本的にリミッターは過度な圧縮であり、10:1を超えるレシオ値の圧縮が適用されることになります。
エンジニアはリミッターとコンプレッサーを同様のツールとして実行し、同じ原理に基づいて処理しています。
クリップノイズを防ぐ
リミッターよって指定された音量より下の音声信号はすべて通過しますが、それより上の信号は完全にカットされます。
実際には、マスタリングエフェクトチェーンの最終段階でクリッピング(0dBを超える)を防いで不要な歪みの発生を回避するためにリミッターが使用されます。
またトラックの全体的な音圧を底上げする為にも使用できますが、現在ではほぼすべての音楽配信プラットフォーム上で「ラウドネスノーマライゼーション」の概念があるため、以前ほど効果的とはいえません。(リミッティングされた音質が必要な場合は例外です。)
→音楽ストリーミングサービスごとの最適なLUFS目安はいくつ?
リミッターの基本操作
リミッターがどのように機能するかを理解するために、基本的なコントロールの使い方を説明します。
今回はFL Studio標準搭載のプラグインを使用しますが、ほとんどのリミッターで同じような機能を備えています。
特に重要なコントロールは次の4つです。
- GAIN(ゲイン) : リミッターに入ってくる信号量をコントロールします。圧縮された分をゲインを使って持ち上げることで、音圧を上げることができます。
- CEIL(シーリング) : リミッターが出力する最終的な最大レベルを決定します。マスタリングではクリッピングを回避するために0dbまたは-0.1~-1dBに設定されます。
- ATTACK(アタック) : リミッターが入力信号に応答する速度を制御し、どれくらいの時間をかけてリミッティングするかを決定します。
- RELEASE(リリース) : CEILの値を下回ったときにどれくらいの時間をかけてリミッティングを解除するかを決定します。
基本的にはリミッティングが開始されるまでCEILを下げていきます。(コンプレッサーのスレッショルドと同じような使い方)
必要に応じてATTACKとRELEASEで圧縮具合をコントロールして、音量を下げたくない場合には圧縮された分だけGAINを使ってブーストするといった使い方をします。
アタックやリリースを極端に速い設定にすると、ダイナミクスが不安定になってポンピングと呼ばれる不具合が発生する可能性もあるので、耳を使って不自然になっていないか確認しながら操作しましょう。
実際のリミッターの使用例
一般的にはマスタリング時にリミッターが使用されることが多いですが、他にもたくさんの場面で使用する機会があります。ここからは実際のいくつかの使用例をご紹介します。
※もちろん、リミッター使用した方が必ず良い音になるとは限りません。元の音が良ければ圧縮を加える必要は無いです。
1. 音圧を上げる
繰り返しになりますが、リミッターはマスタリング時に使用される最も一般的なツールの1つであり、不要な歪みを回避しながら、トラックの音圧を上げることができます。
CEILを-0.1dB以下に設定して、GAINコントロールを使用して入力信号をブーストします。
音圧は上がりますが、副作用として全体的なダイナミクスが減少します。音圧を追求して海苔波形になりすぎないように注意してください。
音圧の高い音源が有利とされたラウドネス戦争は配信プラットフォームによるノーマライズで終了しました。
2. バストラックでまとめてかける
複数の楽器をまとめたバストラックは不必要に音量が高くなり、0dBを超える可能性が高いです。
バストラックにリミッターを使用することでピークを制御することができます。また複数の楽器を「ならす」為の接着剤としても役立ちます。
例えば、複数のギタートラックをまとめたバストラックに対してリミッターを使うことで、ダイナミクスを揃えることができ、統一感のあるまとまったサウンドにするといった使い方ができます。
3. レコーディング時の安全対策
圧縮によるダイナミクスの減衰が取り戻せなくなる為、一般的にはギター等のレコーディング段階で過度な圧縮を加えるのはおすすめしません。(意図的なコンプは別)
レコーディング時のリミッターの目的はギターやドラム、ボーカルのようなダイナミクス幅が大きくなりやすい楽器を録音する時のクリッピングを防ぎます。
もちろん、クリッピングしないレベルで入力信号を設定するのがベストですが、保険としてリミッターをかけておくと安心です。
※レコーディング中に常に0dBを超えているような場合は、入力ゲインの設定が高すぎるので、リミッターではなく入力ゲインを下げます。
4. 生楽器、ボーカルのクリップを防ぐ
同じような理由で、ボーカルやドラム、アコースティックギター等の人間が扱う楽器類はダイナミクスが大きくなりやすく、波形の一部が不用意に飛び出すこともよくあります。
こういったダイナミクスの幅が大きなトラックにはリミッターが効果的です。
5. ベースを抑える
ベースは安定した音量感で、どっしりと全体を支える必要があるため、リミッターがよく使用されます。
リミッターの前にコンプレッサーを試してみることをおすすめしますが、エフェクトチェーンの最終段階でリミッティングやマキシマイザーを使って持ち上げることで、図太さと安定したサスティーンが手に入ります。
人気のリミッタープラグイン
クリエイターや業界から高い評価を得ている定番リミッターを2つご紹介します。
FabFilter Pro-L2
エンジニアやプロデューサーから絶大な支持を得ているFabfilter製のリミッター「Pro-L2」
高度なアルゴリズム、線形位相オーバーサンプリング、プロのディザリングとノイズシェーピング、サラウンドサポートなど、多くの先進技術を採用。
エンジニアの細かなニーズに合わせて、8つの異なる高度なリミッティングアルゴリズムから選択することができ、最大32倍の線形位相オーバーサンプリングとプロのディザリング(3つのノイズシェーピングアルゴリズムを使用)を使用して、クリーンな結果を得ることができます。
FabFilter Pro-L2
Sonnox Inflator V3
業界標準としてプロフェッショナルから長年愛用されているリミッター。
明瞭さと細かなニュアンスを維持しながら、最大のラウドネスと存在感をトラックに与えます。高度な先読み処理と独自のエンハンス機能により、クリッピングを回避し、知覚的なラウドネスを最大限に増加させます。
SonnoxのLimiterV3は、ミックスの明瞭さを失ったり、トランジェントを鈍らせたりすることなく、なるべく原音に忠実なトーンを維持しながらも、最大のラウドネス、密度、存在感を得ることができるリミッタープラグインです。
Sonnox Inflator V3
Waves L3 Multimaximizer
L3 MultimaximizerはWaves社が提供する非常に優れた性能を発揮する高性能マルチバンドリミッタープラグインです。
この5バンドピークリミッターは非常に高い柔軟性があり、マスタリングエンジニアが出力を完全に制御できるように設計されています。
L3マルチマキシマイザーでは、バンドごとのゲイン、優先度、リリースコントロール(Waves独自の自動リリースコントロールあり)を使用して設定を微調整し、マスターでの最終的な音圧コントロールに最適です。
その他の製品はこちらから→人気リミッター&マキシマイザーVSTプラグインおすすめ5選【DTM】
まとめ
リミッタープラグインの使い方について説明しました。
リミッターは音声信号が0dBのピークを超えないようにするためのツールで、クリップノイズを防いだり、音圧を上げたりと様々な用途に使用できます。
マスタリング段階でのリミッティングは配信先のプラットフォーム情報を調べて、本当にリミッターが必要かどうかを判断しましょう。
以上、「リミッタープラグインの使い方【完全ガイド】」でした。