音楽の「リマスタリング」の意味とやり方
音楽のリマスタリングは、基本的に曲やアルバムの元のコピーの品質を向上させることが目的です。
既存の音楽から欠陥を取り除き、音楽データを現代のクオリティで最新の状態になるように、よりクリーンでシャープに、洗練されたリスニング体験を提供するために修正を施します。
そもそもマスタリングとは?
リマスタリングを知る前に、そもそものマスタリング工程について軽くお話します。
マスタリングとは何か?基本的な5つのステップでもご紹介したように、アルバムを構成するすべてのトラックをアーティストの好みに合わせてミックスされた後にマスタリングが行われます。
このマスタリングの前段階のミキシングプロセスでは、EQ、コンプレッション、リミッター、パン、その他のエフェクトなどを使用して、各トラックの音量や音質等、様々な要素をアーティストの要望に沿うように調整することで構成されます。
マスタリングではミキシングで出来上がったサウンド品質をさらに向上させるために微調整や、配信プラットフォームに合わせた処理が施されます。またCDのように大量に複製する場合、その元となるマスターを作るといった意味合いも含まれます。
リマスタリングとは?
リマスタリングはビンテージな音源から、時代にマッチしていない要素を取り除くことで、新しい世代のリスナーにも受け入れやすい状態に修復し、過去の素晴らしいミュージシャン達のビンテージパフォーマンスを再び楽しんでもらうことを目的としています。
トラックの音質を現代のオーディオ機器に合うようにバランスを再調整し、競合する現代音楽と同じようなクオリティでリスニングできるようにすることです。このプロセスをリマスタリングと呼びます。
通常このプロセスはイコライザー、ステレオエンハンサー、コンプレッサー、リミッターなどのマスタリングツールを使って、マスタリングエンジニアによって行われます。
リマスタリングを行う理由
音楽テクノロジーの進歩
アーティストが過去作品の一部をリマスターして再リリースする主な理由の1つは、音楽技術の進歩によるものです。
何十年も前のオリジナルレコードに使用されていた録音機器は、現代主流となっているデジタルテクノロジーほど洗練されておらず、iZtopeのOzoneシリーズのような優れたマスタリングプラグインは存在していませんでした。
今はこれらのプラグインを使用することで、60年代、70年代のアナログ主体の録音テクノロジーによって発生した不要なノイズや歪みを取り除くことが可能となりました。
当時の多くのアーティストは、これらのプラグインとソフトウェアを使用して当時のテクノロジーでは実現できなかった、作品に対して持っていたビジョンをより良く改新する新しいバージョンのリマスター音源を作成することを望むようになります。
ステレオにリミックス
リマスタリングするもう1つの理由は、モノラル録音をステレオにリミックスすることです。
左右2チャンネルのステレオ概念は1957年に初めて導入されましたが、1960年代後半から70年代初頭まではまだ業界に普及していませんでした。つまり、この時期以前の多くの音源はモノラルで録音されています。
現在では当たり前ですが、ステレオ音源はイヤホンやヘッドホンで聴くとより立体的な音像空間が広がり、頭をを取り囲んでいるようにリスニングすることができます。
モノラルからステレオにリマスターした最も有名なアーティストとして「ビートルズ」が挙がります。2014年に初リリースから50周年を記念して、ビートルズは12枚のリマスターアルバムをリリースしました。当時の音源はモノラルでしたが、現代のステレオサウンドシステムに合うようにリマスターされています。
商業的理由
最新のサウンドを聴いてもらいたいというアーティストの意思がある一方で、レコード会社としてはリマスタリングによって、音源クオリティが向上した「現代版」としての再販機会を得ることができます。
レコードレーベルはアーティストの忠実なファンがお気に入りのアルバムを再び購入することができる動機になるであろうと考え、リマスタリングを提供します。
リマスタリングのやり方
音楽をリマスターする場合、マスタリングエンジニアはDAWを使用して、トラックまたはアルバムのデジタルコピーを取得し、それを聴いて次の順序で調整を行います。
- 各曲が前後の曲とバランスが取れるように、音楽の流れを確保するようにトラックを並べる。
- ノイズリダクションは、ヒスノイズ、ハム、クリック、ドロップアウト、不適切な編集、歯擦音、マイクのポップ、マイクの配置が不適切なサウンドや古い録音技術によるサウンドを抑える。
- イコライザーで音のバランスを修正し、音楽パーツの解像度が上がるようにオーディオ周波数を改善。
- コンプレッサーとピークリミッターを使用して、ラウドネスを改善し、こもりを無くし、高音と低音をマイルドにすることで全体的なサウンドを豊かにする。
となります。基本的には過去の音源に現代のマスタリングを適応するといった流れです。
→マスタリングのやり方と基礎知識
リマスタリングに反対する人々
多くの熱狂的なファンは、壊れていない作品を修正する理由はなく、リマスターはその時代の象徴としての音楽遺産を傷つけると考えています。
「元の音楽が何十年も賞賛されるほど時代を超越していたのなら、なぜそれを改造する必要があるのか。」というファンの声もあります。
技術的な面でいうと、ノイズリダクションは高周波を低減し、結果的に高音を鈍らせて「こもった」サウンドになる可能性があるという議論も見かけます。他には、サウンドレベルの増加が元の録音を歪め、耳を疲れさせたり、イコライザーを使いすぎるとオリジナリティを損なうような耳障りなサウンドが生成されといった懸念もあります。
音楽のリマスターの本質は、より良く完璧な曲を現代版として作成することです。ビンテージレコードが壊れたサウンドになって返ってきた場合、リマスターの本来の目的を失ってしまうことになります。
まとめ
音楽のリマスタリングは、現代のテクノロジーを活かしたマスタリング技術で過去の作品をクリーンアップすることを目的としています。
音楽トラックのこもった音からノイズに至るまで、作品が制作された時代によっては全体的な音を楽しむことさえ困難になってしまっている作品も多くあります。
現代の技術進歩を使うことで、リマスターによる音の解像度が上がり、今の世代にも馴染みやすいサウンドで再びリスニングの機会を得ることができます。
以上、「音楽の「リマスタリング」の意味とやり方」でした。