自作楽曲によりプロフェッショナルな質感を加える為の「歪み」効果について(DTM)
自分のオリジナル楽曲を作ったものの、プロの作品と比べるとなんだか迫力が足りない気がする…と感じることはありませんか?
そういった場合には、トラックに対して適切な「歪み」を加えることで、よりプロフェッショナルな質感に近づけることができます。
質感を生み出す「歪み」について
歪みは、音楽制作において強力なエフェクトツールです。さまざまなサウンドを作成するために使用でき、トラックに暖かさ、厚み、その他のキャラクター特性を加えるために使用できます。
歪みには微弱なサチュレーションから、オーバードライブ、激しいディストーション等、多くの種類があり、それぞれに独自のサウンドを持っています。
デジタルが主流になった今、アナログ時代にあった独特なノイズ感を再現することで、よりナチュラルでミックスに最適なサウンドを見つけることができます。
歪みが発生する仕組み
一般的な歪み系エフェクトは、音響信号を増幅して、波形がクリップするまで増幅させるエフェクトです。クリッピングとは、信号が増幅回路の限界を超えたときに発生する現象で、信号のピークが切り取られて歪んだ音になります。
歪みが発生する場所は多く、基本的にはオーディオ機器の回路が過負荷になるとノイズ=歪みが発生します。
オーディオ波形が出力レベルの限界(0dB)を超えると、圧縮やクリッピングが起こり、徐々に歪み始めます。
この状態で更に入力レベルを上げ続けるとオーバードライブやディストーションといったような音質すらも変えてしまう激しい歪みとなります。
オーディオ信号が圧縮されると、倍音や高調波を生み出し、サウンドに温かさやエッジを与えます。音質をあまり変えないサチュレーションのような微量の歪みは、キックやスネアのような楽器に対してパンチを加える効果があり、多くのジャンルで使用されています。
激しいディストーションサウンドはロックやメタルミュージックのギターやダブステップのワブルベースのような限られたジャンル、楽器で使用されます。
ここからは、歪みによって得られる5つの効果についてご紹介します。
1. 倍音による深みを生成する
歪みは、楽器やボーカルトラックに対して、音に厚みと深みを加えるためによく使用されます。これは、歪みが楽器の基本周波数に関連した新しい周波数(倍音)を生成するためです。
倍音が付与されることで、楽器の音に広がり、豊かさの感覚を加えることができ、楽器の高周波が目立つようになることで、ミックス内で突き抜けるような存在感を持ちます。
一方で、倍音がないサウンドは、クリアで軽い印象を与えるので、倍音を付与するかどうかはジャンルや目的とするサウンドによって変化します。
2. サウンドキャラクターを加える
歪みで得られるメリットとして、信号を圧縮することによる「サウンドキャラクターの変化」も大きな効果の一つです。歪みで得られる独特なトーンを目的として使用する方も多いです。
色んなメーカーから様々な歪み系エフェクトが販売されていますが、製品によってサウンドキャラクターがまったく異なります。これは、歪み量や、質感、生成される高調波によってトーンが変化する為です。
特に、エレキギターのディストーションエフェクトのような歪みによって大きくサウンドが変化する製品は、どのようなサウンドキャラクターを持っているか?ということが、購入の際の大きな判断要因となります。
3. 楽器やボーカルに存在感を加える
サチュレーションの最も重要な効果として、音が持つラウドネスを増加させることです。
実際には、キックやスネアドラムなどのピークを制御することで、非常にアグレッシブなパンチのあるサウンドにしたり、ベース、シンセサイザー、ボーカル等ほぼすべてのトラックに倍音を付与して、強化する目的があります。
また、一般的なスピーカーでは再生が難しいような、サーブベースといった超低音楽器に対して歪みを加えることで、人の耳が認知しやすいローミッド帯域がブーストされ、存在感が増します。
4. 複数のトラックをまとめる
複数のトラックをまとめたバストラックや、マスタリング段階でも歪みは役に立ちます。
ソフトなクリッピングは信号の最大音量を丸めて抑え込むことで、トラック全体の最終的な音量を底上げするために、パンチ感をキープしながら、スパイク状のトランジェントを制御することが可能です。
一方で、ハードなクリッピングは望ましくない形でポンピングを引き起こしたり、多くのトランジェントを奪ってしまう可能性があるので注意が必要です。
両方の効果を上手く活用するには、リミッターの前にソフトクリッパープラグインを配置したり、段階的にリミッティングするのが効果的です。
5. アナログ感を追加する
さらに、サチュレーションにはデジタルミュージックのようなまったくノイズの無い「冷たい」音源に対して、アナログ時代特有の「暖かみ」を追加する為にも重要な役割を果たします。
ノイズレスなクリアな音源を目指してエンジニアは奮闘していましたが、デジタルが主流となった現代音楽ではテープサチュレーションをはじめとする「ノイズ」を付与することがよく見られます。
実際に高品質な音源サンプルやシンセサイザーのようなデジタル楽器のみで音源制作を完結させると「冷たさ」を感じ、どこか物足りないようなトラックに仕上がります。
そういった場合に、マスタリングの段階でプロジェクト全体にサチュレーションを加えたり、トラックに高周波を追加することで、生の質感やエアー感を演出することができます。
まとめ
サウンドにエネルギーを追加する為の「歪み」効果についてご紹介しました。
歪みは、ロック、メタル、ポップなど、さまざまなジャンルの音楽で使用されており、歪みを上手く取り入れることで、音楽にエッジ、攻撃性、または暖かさとや深みを加えることができます。
また、トラックに対してサウンドテクスチャーを追加するために使用できます。たとえば、ギターの歪みは、よりエッジの効いた攻撃的なサウンドを作成するために使用できます。ベースの歪みは、より暖かく厚みのあるサウンドを作成するために。ボーカルの歪みは、よりユニークで個性的なサウンドを作成するために使用できます。
自作した音楽に何か物足りなさを感じる場合は、「歪み」を効果的に取り入れてみましょう。
以上、「自作楽曲によりプロフェッショナルな質感を加える為の「歪み」効果について(DTM)」でした。
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