ベースギター5つのミキシングテクニック【DTM】
ベースギターは多くの楽器の中でもミックス難易度の高い部類に入り、重要度も非常に高いです。役割としては、音楽のリズム、グルーヴ、ハーモニーを支え、楽曲に深みと力を加えることです。
一般的なリスニング環境ではあまり認識されにくいポジションのベースギターですが、プロフェッショナルはベースギターの持つエネルギーとトラック全体に与える影響を十分理解していて、他の楽器よりも慎重に扱います。
今回はベースギターを上手くミキシングする為に重要な5つのテクニックについてお話します。
ベースギターの役割とミキシングの重要性
ベースギターは楽曲の基盤を支える重要な役割を持ちます。主な役割は以下の通りです。
- リズムの支え
ベースギターはドラムと同じくリズム楽器を担当し、楽曲のタイミングとグルーヴ感を生み出します。正確なリズムセクションによって、楽曲全体に安定感を与えることができます。 - 和音の強調
ベースは基本的に和音のルート音を演奏することで、和音の進行感を強めることができます。これによって、伴奏楽器のハーモニーが補完され、楽曲全体の調性が認識しやすくなります。 - 低音を担当
ベースは音楽の低音部分を担当し、キックドラムと競合することなく上手く住み分けて演奏することで、楽曲に深みとパワーを提供します。 - クリアなサウンド: ミキシングにより、ベースギターの音がクリアで定義され、他の楽器と干渉せずに際立つようになります。これにより、リスナーはベースギターのプレイをより良く楽しむことができます。
ミキシングは異なる楽器トラック(ベース、ドラム、ギター、ボーカルなど)のバランスを取るプロセスです。ベースギターの適切なレベル設定と周波数バランスをとることは、楽曲全体のクリアで均衡の取れたサウンドを得る為にも重要です。
ベースギターの音が他の楽器と干渉しないようにミキシングを施すことで、楽曲全体に深みとエネルギーを与えることができます。
1. アレンジに気を付ける
まずはベース自体のアレンジが音源全体に大きく影響するということです。一般的なベースギターの場合、50~1kHzぐらいで広く鳴っていて、特に60~350Hzぐらいはベースにとって最もおいしい領域です。
これはベースはアレンジにおいて、ルート弾きが好まれる理由の一つでもあり、なるべくこの範囲を飛び出さないようにアレンジするでトラック全体に常にエネルギーを注ぎこむことができます。
ベースがハイフレットに飛ぶということは、ローエンドを空けてしまっている状態だということを理解した上で動きをつけましょう。
次に、ベースがしっかりとその役割を発揮する為には他の楽器のアレンジも非常に重要になります。
ミックス作業を始める前に各楽器のノートを確認して、60~350Hz周辺にベースとマスキングしてしまっているパーツがないかをまず確認します。
- ギターの6弦ローフレット
- ピアノの左手
- シンセサイザーの低音
これらはバンドアンサンブルにおいてはマスキングを起こしやすいパーツです。もしベースと干渉してしまっている場合は、アレンジを変更するか、EQを使いローカット処理を加えてベースの為にスペースを空ける必要があります。
2. レコーディングに集中する
ベースの最終的な音質クオリティはレコーディングの品質で8~9割決まります。上手いベースプレイはどんな優秀なエンジニアよりも強力です。
ベーストーンに関しても、あとからミックスの段階でEQを使って変化させるよりも、アンプで作るベースキャラクターが大切です。メタル、ブーミーベース、スラップ奏法を、ベースを強調したジャズなど、あらかじめそれらに見合った音作りをしてからレコーディングすることで、最終的な仕上がりは大きく変わります。
基礎をしっかり作り上げたうえでミキシングに移ると大幅に作業が楽になります。
4. キックとベースの住み分け
ここからは少しテクニカルなお話になります。まずは、ローエンドをキックとベースのどちらに担当させるかということを決めましょう。
キックとベースはほぼ同じ周波数帯域を持っており、それぞれをしっかり住み分けしてローエンドスペースを奪い合わないように処理する必要があります。
ローエンドミックスに重要なことはこちらの記事でも紹介しているので、合わせてご覧ください。
キックとベースどちらを優先すべきか?
ベースギターかキックどちらを優先するかどうかはジャンルによって変わります。
例えば、HiphopやEDMのようなエレクトロミュージックの場合にはベースよりもキックが優先されることがほとんどで、キックがローエンド(35~100)のほとんどを占め、ベースはミックス内で少し高めのポジション(100~200Hz)になります。
サイドチェインによるダッキングというテクニックを使用して、キックが踏まれた瞬間にベースを引っ込めるというテクニックも存在します。
バスドラムのミキシングテクニック【Rock Kick】
ロック、パンク、メタルといったジャンルではその逆で、ローエンドをベースが担当し、キックはパンチとアタックを重視したハイミッドを強調したサウンドになりやすいです。
メタルコアで使用されるキックドラムではビーターアタックをバチバチと強調したサウンドが特徴です。
どちらを優先していいかわからない場合は、ジャンルごとにリファレンス(参照曲)を用意してスペクトラムアナライザーで見ることをオススメします。
EQでの住み分け
どちらを優先させるか決まったらEQを使って住み分けします。色々なやり方がありますが例えばキックにローエンドをゆずる場合、ベースに対してハイパスフィルターやピーキングを使用します。
逆にベースのほうはローエンドを強調しつつ、ベースの為にスペースを空けます。
ベースを優先させる場合も基本的な処理の仕方は同じですが、キックをハイパスフィルターで処理するとエネルギーの大部分を失ってしまうのであまりオススメしません。
3. コンプレッション
低音楽器で重要なことの一つとしては「音量の均一化」です。ベースギターは常に同じボリューム感でどっしりと支える必要があるので、トラック内で音量差があるとミックス全体がふらついてしまって不安定に聴こえます。
他の楽器よりも思い切って多めのゲインリダクションで、しっかりと圧縮しましょう。ベースに対するコンプレッションのコツは、リリースタイムを長めに設定することです。
ベースは各ノートのサスティンが長くなる傾向にあるので、最後の音までしっかりとコンプで圧縮する必要があるからです。※最近のコンプレッサーにはオートリリース機能が搭載されているので利用しましょう。
ベースコンプレッションの一例
・Ratio > 5:1
・Attack > 5~20ms
・Release > 150~250ms
・Gain Reduction > 5~8dB
ライブでベースを使用する場合もコンプレッサーエフェクターは必須です。
5. サチュレーション
サチュレーションは「歪み」です。ここで扱う歪みはオーバードライブのようなベースキャラクターを変えるほどの深い歪みではなく、耳ではわからないぐらいほんの少しの倍音を付加して、ベースを太くするといった意味合いがあります。
歪みを加えることのメリットは低音再生能力の低いスピーカやイヤホンでもベースを認識しやすくする効果があるということです。
ベースは低い周波数帯域に音の芯が存在します。倍音を付加してローミッドやミドル部分の音をブーストすることで、安価なスピーカーでもベースの存在を際立たせることが可能になります。
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まとめ
ここまでベースの5つのミキシングテクニックをご紹介してきました。冒頭にも言いましたが、ベースギターのミックス難易度は高いですが、じっくりと時間をかけて作業するだけの価値があります。
今回ご紹介した5つのテクニックを試して頂いて、少しでも音源クオリティ向上のお役に立てれば幸いです。
以上、ベースギターを上手くミキシングする5つのテクニック【DTM】でした。