BLACKPINK - Ice Creamの先進的サウンドを分析
世界中で高い人気を獲得しているK-POPアイドルグループの「BLACKPINK」のIce Cream。
2020年10月にリリースされた初のアルバム作品「THE ALBUM」にも収録されており、セレーナ・ゴメスがフィーチャリングとして参加したことでも話題を呼んだ楽曲です。
今回はBLACKPINK - Ice Creamのサウンドをクリエイター目線で徹底解析していこうと思います。
ポップな雰囲気の裏に隠された重低音
Ice Creamはシンプルなリズムと軽快なサウンドが特徴で、アイスクリームという名のとおりクールビューティーなBLACKPINKらしからぬ非常に甘くポップな世界観になっています。
しかし、そんな雰囲気とは裏腹にそのサウンドは808ベースと呼ばれる超重低音サウンドで支えられており、過去作品の中でも最も808ベースにフォーカスを当てたサウンドになっています。
スマホスピーカーや安価なリスニング機器だと再生できないような、とても低い音域がメインで大きく鳴っているので、この楽曲を最大限楽しみたい方は低音再生能力の高いヘッドホンやスピーカーを使用したリスニングを推奨します。
EDMのようにクラブや大きなフェスを意識した音作りになっていて、大きなスピーカーで聴くと胸に響くような「ブーン!」といった心地良さがあります。
大きな会場で聴ける日が待ち遠しいです。
キャッチーさの秘密は超シンプル
BLACKPINKの楽曲といえば、アイドルでありながらもヒップホップビートやトラップビートと呼ばれる先進的なサウンドに合わせて軽快なメロディーやラップを乗せて歌い上げるのが特徴です。
ビジュアル、ダンス、歌はもちろんですが、この世界水準のハイクオリティな楽曲とセンスで世界の頂点まで上り詰めたといっても過言ではありません。
邦楽POPSとの大きな違いは超シンプルな楽曲構成にあります。
邦楽ではAメロ→Bメロ→サビとコード進行を巧みに変えながら起承転結を意識しながらアレンジを加えるのが一般的です。
メロディーや楽曲全体の緩急を付けやすいのが特徴です。
それに比べてIce Creamは曲の始まりから終わりまで2つのベースライン(E→A)のみで構成されており、セクションごとに展開することもありません。
ずーっとこれが続きます。
それでも「メロ→サビ→ラップパート」と展開しているように聴こえるのは、楽器の数を減らしたり増やしたりすることで演出しています。
恐らくみなさんがサビ(Hook)だと感じているパートでは先ほど説明した重低音の808ベースが鳴っていることで一番盛り上がりを感じることができます。
それ以外のパートではベースを抜き、パーカッション楽器も減らして緩急を付けることでここはAメロ(Verse)なんだなと感じているはずです。
コード進行による展開やメロディーの高低差ではなく、楽器の音数やリズム、フロウ(歌いまわし)で演出されています。
音圧の変化
少しマニアックな話になりますが、音圧について触れてみたいと思います。
音圧とは音の密度のことです。
世間では「音圧が高い=良い音」という認識があるので、業界でもほんの少し前まではCDという規格の中にどれぐらい音を限界まで詰め込むかのようなラウドネス戦争時代もありました。
現在は音を潰さずにダイナミクスを活かすような音楽が人気ですが、水面下ではまだまだこっそり音圧をあげるという作業が行われています。
Ice Creamも一見すると圧迫感の少なく、クリアなサウンドに聴こえますが、人の耳が認識しにくい重低音に音を詰め込むことで音圧を稼いでいます。
イントロとボーカルが入る部分の音圧差を波形で見てみると一目瞭然です。
そこまで音圧が急に上がってうるさい!と感じるようなことはありませんが、実際には(機械的)にはかなり音圧が上がっています。
25~80Hzの人間の可聴範囲外に近いところが持ち上がっているので、音量が上がったように思わないだけで、最近のTrapやHiphop系のトレンドを取り入れた先進的なサウンドになっています。
そもそもこの辺りを綺麗に再生できるリスニング機器がなかったので、ここに音を詰め込むエンジニアは少なかったのですが、最近だとApple「Air Pods Pro」のようにテクノロジーの進化を受けて、安価で低音再生能力の高い機器が増えてきたのも要因のひとつです。
まとめ
海外チャートでトップになるだけあって、サウンド面でもしっかりと世界的トレンドを取り入れ、リズミカルなグルーブを重視した楽曲に仕上げられている印象です。
個人的にもビジュアル、ダンス、楽曲、サウンドどれを見ても今のところ弱点が見当ず、BLACKPINKの快進撃はまだまだ続くと思っているので、今後の活躍にも期待が高まります。
以上、「BLACKPINK - Ice Creamのサウンド分析【プロデューサー目線】」でした。