キックがこもって抜けてこない3つの原因【DTM】
キック単体で聴くとスッキリとした抜けの良いサウンドなのに、トラックが増えてくるにつれ徐々にキックがこもってきて困っていませんか?
楽器が増えてくるとどうしてもキックのスペースが無くなってくるので、上手く処理しないとパンチの無い弱々しいキックになってしまいます。
そこで今回はキックがこもって抜けてこない3つの原因とその解決方法についてお話します。
1. ボリュームが足りない
ミキシングの基礎ではありますが、そもそもキックのボリュームフェーダーがしっかり上がっていないということが原因でこもってしまうということが多いです。
特にキックがメインとなるヒップホップやエレクトロ系の音楽では、トラックの中でキックが一番前に出ていないといけないので、思い切ってフェーダーを上げることが重要です。
コンプレッサーを活用する
音量メーターでは「キックが一番飛び出ているのに、いまいち抜けてこない・・・」という方はコンプレッサーを使って圧縮してからゲインアップすることをおすすめします。
キックの音というのは音の出始めにビーターアタックの「バチ!」っとした瞬間的な音のあとに、ボディの「ズン!」とした迫力ある低音が付いてきます。
指パッチンをイメージしてもらうと分かりやすいかと思いますが、瞬間的な音はボリュームは大きいけど、音自体の質量は軽いので、音圧は低いといえます。
コンプレッサーを使って波形のてっぺん(ビーターアタック)を圧縮して、ボディの鳴りを強調することで、キック全体的な音の質量を大きくすることで音圧を上げることができます。
音圧が上がる理屈はこんな感じなのですが、実際にはもっと奥が深い作業です。
アタック部分を潰しすぎると、逆にこもる原因にもなるのでコンプレッサーのパラメーターを調節しながら上手に潰す必要があります。
→コンプレッサーの基本的な使い方
2. 他の楽器とのマスキング
マスキングとは楽器同士の「音被り」のことです。
特にキックの場合はベースとの音被りが原因でこもってしまうことが多いので、しっかりと楽器同士を住み分けさせる必要があります。
住み分け方法としてはイコライザーと呼ばれる音の周波数を変化させるエフェクトでカット、ブーストさせたり、EDMのようなエレクトロ系だとサイドチェインと呼ばれるダッキングを利用したやり方が一般的です。
サイドチェインコンプレッション
サイドチェインとは「ある音をトリガーに特定のエフェクトを作用させる」こと全般に使われる用語です。
サイドチェインを使うことでキックの音に反応してコンプレッサーを作動させることができるので、キックが踏まれた瞬間にだけベースの音量を下げるということが可能になります。
詳しいサイドチェインのやり方については別の記事で解説しているので、そちらをご覧ください。
3. 低音よりの音質
キックが抜けてこない原因として、キック自体の音質が原因であることも考えられます。
音源サンプルによってはかなり低音寄りのサウンドになっているサンプルも多いので、そういう場合は違うサンプルを選択するか、音質を修正する必要があります。
ミキシングにおいて、サンプル自体の音の良し悪しはかなり重要な要素なので、出来れば最高のサンプルを探すのが一番良いですが、少し妥協する場合には下記の方法で修正可能です。
ローミッドをブースト
キックのメインの周波数は40~80Hz辺りに存在しますが、低音再生能力の低い安価なリスニング機器だとうまく再生されなかったり、人の耳には認知しにくい音域です。
他の楽器との兼ね合いも考慮する必要はありますが、200~500Hz周辺のローミッドや2~4kHzのビーターアタックを強調することで、キックの存在感が出てきます。
サチュレーション
サチュレーションとは「歪み」を加えるエフェクトの一種で、トラックに倍音を付加することで迫力やパンチが出ます。
簡単に音圧を上げることができるツールですが、やり過ぎると音の芯が無くなる原因にもなるので、キックに適用する場合はほどほどにしておきましょう。
レイヤー
レイヤーとは異なる音質のサンプル同氏を合成するテクニックのことです。
低音が豊富でこもり気味のキックサンプルと、高音寄りのアタック感のあるキックサンプルを重ねることで、新たにバランスのとれたキックを入手できます。
そのまま重ねるとマスキングの原因にもなるので、必ずイコライザーを使ってキック同士を住み分けしてから重ねるようにしましょう。
まとめ
キックがこもって抜けてこない3つの原因について解説しました。
- ボリュームが足りない
- 他の楽器とのマスキング
- 低音よりの音質
基本的にはこの3点に気を付けて修正を加えることで、抜けの良いキックが手に入ります。
使用するキックサンプルによっては既にコンプレッサーやサチュレーションによって加工されているものもあるので、キックの波形をみたり、耳で聴いて修正か必要かの判断をしましょう。
以上、「キックがこもって抜けてこない3つの原因【DTM】」でした。
※YouTubeでも詳しく解説しています。