エレキギターの木材はサウンドにどのような影響を与えるのか?
「ギター本体に使用されている木材はギターのサウンドに影響を与えます。」というのは事実です。
とはいえ、実際に材質ごとの音質変化を確認したり、どのようなサウンドに変化するのかということを確認するのは非常に困難で、よくギタリストの間でも議論の的になります。
特にエレキギターの場合はギターの本体以外にも、ピックアップやケーブル、アンプ等の他の要因による音質への影響も大きい為、木材による変化がどれほど影響しているのかを中々実感できません。
今回は木材がエレキギターの音色にどのように影響を与えるのかについてお話します。
そもそもの音が出る仕組み
さまざまな種類の木材と、それらがギターの音色にどのように影響するかを知る前に、そもそもギターがどのように音を出しているのかということを理解しておく必要があります。
アコースティックギターは非常にシンプルで、弦を弾いた音がサウンドホールとボディ全体の共鳴により増大されるので、分かりやすく木材の影響を受けます。
エレキギターの場合、 ピックアップの近くで鉄弦が振動することで、コイルの中の磁界が変化し、コイルに電流が流れます。この電流を誘導電流といいますが、磁界の変化の大きさによってこの誘導電流の大きさも変わります。
つまり仕組みとしては、磁石とコイルの上で磁性体が動くと、コイルに電流が流れるという現象を応用したもので、弦振動の波と電流の波が連動する性質を利用して、弦からの音を電気に変換しているのがエレキギターなのです。
エレキギターでも木材は関係あるの?
エレキギターは弦振動を電気に変換していますが、これに木材は関係しているのでしょうか?
結論から言いますと、エレキギターであっても木材によって、ピックアップによって検出される音の共鳴方法に影響を与える為、音質が変化します。
繰り返しになりますが、アコースティックギターでは、振動がサドルに伝わるときに音が発生し、次に本体、そして音がサウンドホールから伝わります。つまり、アコースティックギターでは実際に音を増幅して拾うので、木材の重要度がはるかに高いです。
エレクトリックギターの場合、ピックアップによる割合が大きいですが、木材が弦振動に与える影響を無視することはできません。
例えば、非常に密度の高い重厚感のある木材を使用している場合、振動が持続することでシャープなサウンドが得られます。
反対に密度が低いと振動が吸収されて、まろやかなサウンドになります。
ギターの木材とその音色
エレキギターであってもギター本体も共鳴して弦振動に影響が与えるということについてお話したので、次に具体的に木材ごとのサウンドキャラクターをご紹介します。
ギターに使われる木材はボディ、ネック、フレットボードの3つに分かられます。
ボディ材
アルダー
アルダー材は、北アメリカやロシア、ヨーロッパ、西アジアなどで幅広く生育している広葉樹で、細かく真っすぐな木目が特徴的です。
水との比重は平均0.43と、ギターのボディ材としては密度は高いですが軽量な部類に入ります。アルダーボディウッドはバランスの取れたトーンを生み出す傾向があり、サウンドが共鳴して優れたサスティーンを持ち、音が鈍くなることはありません。
アッシュ
アッシュの木にはいくつか種類がありますが、ギターのボディに使用しているのは、主にアメリカンアッシュ(ホワイトアッシュ、アメリカトネリコ)です。北米原産のハードウッドで、北米大陸の東半分の地域でよく見られます。
アッシュウッドには、ハードとソフト(別名スワンプアッシュ)の2つタイプがあり、よりソフトなものは高音を強調したサウンドで、ジャズやブルースのようなジャンルとの相性が良いとされています。
ハードタイプは非常に高い密度を持ち、長いサスティーンが得られます。
マホガニー
マホガニーはボディウッドの中で最も重いタイプで、サスティーンが長く、低音の周波数が多く、厚みのあるあたたかみのあるサウンドが特徴的です。
アッシュがストラトキャスター系のサウンドで、マホガニーはレスポール系の重厚感あるサウンドになります。
よりまろやかなサウンドや力強いどっしりとしたサウンドを探している方におすすめです。
ネック材
メープル
この非常に用途の広い木材は、ギターのネックだけでなく、ボディやフレットボードにも人気があります。
メープル材はフェンダーによって伝統的に使用されていることで有名で、最も一般的なネックウッドタイプとして使用されています。
密度が高く、耐久性に優れていること。木自体の硬さもあって、サウンド傾向としてはクリアーでアタックの強い輪郭のハッキリしたサウンドが特徴です。
ローズウッド
ローズウッドはネック以外にも指板やブリッジによく使われる木材として人気です。
サスティーンはやや短めで、柔らかめバランスの取れたサウンドを鳴らし、さまざまなジャンルに適した多様性を提供してくれます。
乾燥によるフレットヒビ割れといったトラブルが起こりにくいのも特長のひとつ。
マホガニー
マホガニーは重くて頑丈なため、経年による摩耗や反りに非常に強いため、ネックウッドとしても人気があります。
メープルほど密度が高くないので、音を吸収しやすく、より丸みのある深い音色になります。
フレットボード
エボニー
エボニーは黒く非常に硬い木材で、非常に高い耐久性を持ち、何十年も使ってもほとんどすり減らない頑丈さが特徴的です。
他の木材に比べてヒビ割れが起きやすいので、定期的にオレンジオイルを塗ったりと、まめなメンテナンスを推奨します。
非常に密度が高く重たいので、 サスティーン豊かで輪郭のハッキリしたサウンドが出力される印象。
メープル
メイプルはフレットボードにもよく使用され、ボディ材よりもフレットボードに使われることの方が多い印象です。
クリアで明るいトーンを生み出すことで知られており、白っぽい薄い色がギター本体の色を引き立てます。
他の木材に比べて摩耗しやすいです。
ローズウッド
ローズウッドもフレットボードとして一般的に広く使用されている木材です。
バランスのとれた木材なので、暖かく滑らかな音色を鳴らし、耐久性も高いのが特徴。
エレキギターのサウンドに影響を与える他の要因
木材についてお話しましたが、最後に他にもサウンドに影響を与えるポイントをいくつかご紹介します。
ボディタイプ
エレキギターのボディタイプにはソリッド、ホロウ、セミホロウの主に3つのタイプがあり、もちろんタイプによって異なるサウンドキャラクターを生成します。
ストラトキャスターやレスポール等、エレキギターに一番多く採用されているソリッドボディギターはサスティーンが長く、他のボディタイプより音の共振する部分が少ないので、ハウリング等の問題が少なく、ロック系の音楽との相性が良いです。
中が空洞のホロウボディはよりアコースティックに近いサウンド特性を持ち、あたたかく低音が豊富に含まれたサウンドを生成しますが、サスティーンの持続性は低くなります。ジャズやブルースギタリストに人気のタイプです。
ソリッドとホロウの中間にあたるセミホロウタイプは丸みのある音色とほどよいサスティーンを持つ中間的なサウンドを提供します。代表的な機種としてGibson ES-355があります。
ネックタイプ
ネックタイプには、ボルトオン、セットネック、スルーネックの3つタイプがあります。
ボルトオンネックは最もコストの安いネックオプションで、他のタイプに比べるとトーンの質も少し落ち着いた音色になります。
セットネックはボルトオンよりも少し高価で、より豊かなサウンドを生み出します。
ネックスルータイプは最高のサスティーンと優れたトーンを提供しますが、コストも上がります。
まとめ
エレキギターの木材とそれらがサウンドに与える影響についてお話しました。
冒頭にも言いましたが、アコースティックギターよりかは木材がサウンドに影響を与えるウェイトが少ないものの、木材やそのセットアップ方法により、間違いなくサウンドは変化しています。
とはいえ、実際のところピックアップやアンプ、エフェクターによる影響もかなり大きいと言えるので、エレキギターを購入する際は木材だけでなく、総合的にみて判断することをおすすめします。
以上、「エレキギターの木材はサウンドにどのような影響を与えるのか?」でした。
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