メタルギターをレコーディングする為の7つのヒント
メタルと一口に言っても、現在はメタルコアやジェント等多くの派生ジャンルがありますが、ギターを使用する多くの音楽ジャンルの中でも「メタル」ほどギタートーンが重要なジャンルは他にないでしょう。
ありがたいことにギターレコーディング技術の向上もあって、一昔前のように大がかりなシステムを組み上げる必要も無くなり、その多くはアンプシミュレーターを使用して自宅でレコーディングするというのが主流になってきました。
そこで今回はメタルギターを宅録するときに役立つ、レコーディングの7つのヒントについて解説します。
1. ギターのセットアップ
レコーディングをする前にまずはギターを最高の状態にします。
必要に応じて楽器屋のギターテクニシャンのところに持っていきメンテナンスをしてもらったり、自分で出来るメンテナンスの一部として、ダウンチューニングに最適な弦の太さを選択することです。
多くのメタル楽曲の場合DropD~A#ぐらいまで落とすので、一般的な太さの弦だとテンションが緩くなってしまうので、11~56ゲージぐらいの太めの弦に交換したり、場合によっては7弦ギターやピッチシフターを使用して重低音に対応します。
DTMのようなデジタルの場合、アンシミュ内蔵のピッチシフターやドロップエフェクトを使うことで通常の弦のテンションのまま気軽にダウンチューニングすることができるので、多くのギタリストが採用している方法です。
ギターセットアップを行わないと、チューニングの問題やフレットノイズに繋がり、全体的なトーンの低下が発生します。
2. 歪みの選択
良質な歪みトーンを得る為には、ハイゲイントーンのアンプ、または歪みエフェクターを選択します。
Marshall、Peavey 5150、Mesa Rectifier、ENGL、Diezels、Bogners、PRS Archon、Soldanos等のメーカーからメタル向きの激しい歪みが得られるアンプがリリースされています。
実際には家で大音量アンプを鳴らすわけにもいかないので、ほとんどのギタリストがアンプシミュレーターを選択することになると思います。
歪みにエフェクターを選択する場合は、人気の歪みエフェクターをまとめた記事もあるので合わせてご覧ください。
→高品質のディストーションエフェクター 5選
3. キャビネット/マイクの選択
アンプヘッドと同じように、メタルギターのトーンに非常によく合う特定のキャビネットスピーカーがあります。
メタル向きのスピーカーの1つとして、OrangeやMesa、Marshall、Bogner等の多くのキャビネットに採用されているCelestion Vintage30です。
Celestion Vintage30はホットロッド化されたアンプの普及に伴い、より大きな出力とオーバードライブ・サウンドに対応できるスピーカーとして開発されました。
複雑な倍音を含み、ボーカルのような中域、美しく繊細な高域が特徴。
ダウンチューニングされたギターのタイトなローエンドに対応しており、多くのメタルトーンを生み出しています。
マイクの選択
パワーのある激しい歪みを扱う場合、マイクはオンマイクのみにしたほうが良い結果が得られやすく、Shure SM57、Sennheiser MD421、Royer R-121等を組み合わせて使うと、歪みサウンドとの相性もバツグンです。
もしオフマイクを使う場合はAKG C414辺りが定番です。
アンプシミュレーターなら色々試せるし、予算を気にすることもないですが、もし実機で1本だけ使うならSennheiser MD421をオススメします。
・Sennheiser MD421
SM57と並んで、どのレコーディングスタジオにも必ずといっていいほど設置されているマイクで、音へのこだわりの強い人に人気です。
ドラム用として使用されることも多く、アタックピークの収音とローミッドの存在感が特徴で、いわゆる「ドンシャリ」サウンドになる傾向があり、メタル向きです。
4. ゲインを上げ過ぎない
「ハイゲインアンプを使用する」といったあとに矛盾しているようですが、ここが多くのメタルギタリストが陥りやすい重要なポイントです。
前線で活躍しているメタルギタリストの多くは、実際には想像よりもはるかに少ない歪み量でサウンドメイクされていることがほとんどで、ノイズが少なく、音の芯や演奏の解像度が高いのが特徴です。
確かに大量の歪みを加えることでギター単体だとカッコよく聴こえて、ミスが目立たなくなり、長いサスティーンが得られるので気持ち良いですが、アンサンブルに混ざることで最悪のトーンになり得ます。
コードの分離感、エッジと歯切れの良さを得る為にも、最適な歪み量を研究する必要があります。
5. ブースターを使用する
ブースターを使用することはアンプで使用するゲインを少なくする方法でもあり、チューブアンプによる素晴らしいメタルギタートーンを持ち上げる効果があります。
特にIbanezの「TR-808 TubeScreamer」はハイゲインロックにとって大定番のブースターです。
ギターにとって最もおいしいを帯域をブーストする傾向があり、全体的にタイトでアグレッシブなトーンになります。
好みに合わせて調整しますが、一般的にはゲイン0~2、レベルMAX、に設定してトーンコントロールでブーストする帯域を選択します。
アンシミュによってはファクトリープリセットとしてアンプ前にこの「TR-808」がブースターとして挿し込まれている設定が非常に多いので、ハイゲインな音作りにとってチューブスクリーマーの重要性が伺えます。
6.状況に応じたEQ設定
適切なEQ処理についてはメタルギターに限ったことではありませんが、ギター単体で最高のトーンがバンドアンサンブル全体で最高とは限りません。
特にメタルギターの場合はギターがベースの音域にまで下がっているので、ローカット等の低音の処理は必須です。
単体で聴くと物足りないように感じるかもしれませんが、全体で聴いたときに抜けのある明瞭度の高いメタルギターが聴こえてきます。
7. 複数のバッキングトラック
これはバッキングギターの標準的な録音テクニックです。
リズムパートを2回録音し、1つを左に、もう1つを右にパンするというテクニックで、片側に2つの別のペアを追加することもあります。
メタルギターの録音において、音を重ねることが重要で、一部のプロデューサーは左右に4トラックを配置し、センターに音量を下げた5本目を追加することもあります。
注意点として、コピーして左右に振るとセンターになってしまうので、バッキングトラックを左右に2本振る場合には、左右それぞれを2回レコーディングするようにしましょう。
さらにワンランク上の方法として、例えばハイゲインのハイミッドギターと、ローゲインのローミッド寄りの丸い音質といったような、異なるギタートーンを重ねることです。
まとめ
メタルギターレコーディングの7つのヒントについて解説しました。
- ギターのセットアップ
- 歪みの選択
- キャビネット/マイクの選択
- ゲインを上げ過ぎない
- ブースターを使用する
- 状況に応じたEQ設定
- 複数のバッキングトラック
自宅でメタルギターを録音することは、楽器、プレーヤー、そして適切な機器の選択の間のバランスが大切です。
以上、「メタルギターをレコーディングする為の7つのヒント」でした。