音楽制作に役立つ10のミックスヒント【DTM】
ミックス工程は複数の楽器や音源ソースをもとに各トラックのバランス、音色、定位などを綺麗に混ぜ合わせる作業です。
最近は独立型のアーティストも増えてきたことで、作曲からミキシング、マスタリング、パッケージングとすべてを一人で行う方も多いと思います。
今回のミキシングヒントでは、EQ、コンプレッサー、サチュレーションなど、ミキシングの様々なテクニックを使って、ワンランク上の音源トラックを入手する為のトピックをご紹介します。
1. 音源ソースの質が最も重要
ミキシングは音を良くする為ではなく、楽器同士の干渉を最小限に防ぎながら、決められたスペースに音を綺麗に配置する工程です。
スマホで録音した低品質なピアノトラックをミックスの力で良質なサウンドにすることは難しいです。なので、ミックス段階に移る前にどれだけ綺麗な音で収音できるかが最も重要です。
レコーディング技術に自信がなければ、バーチャルインストゥルメントと呼ばれる音源プラグインソフトを利用するという手もあります。
まずは元となる音源ソースの品質を上げることを考えます。
2. 重要度の高い順にミックスする
ミキシングではジャンルごとに重要度の高い楽器から始めることで、全体のバランスを見失うことなくミックスを進めやすくなります。
また、すべての楽器を聴いてもらおうとフェーダーを均等にしてしまうと、メリハリのないトラックになってしまう可能性があるので、セクションごとに何を一番聴いてもらいたいかを選択して、他の楽器は思い切ってフェーダーを下げるという判断も必要になります。
例えばダンスミュージックであればキックから、ヒップホップであれば808ベースからからスタートします。そして重要な楽器をミックスし終わったら、なるべく後になって微調整したりしないように固定することが重要です。
3. イコライザー(EQ)はマイナス方向に使う
EQによるカット処理はブーストEQよりもはるかに重要です。サウンドを良くしたい場合はなるべくEQをカット方向に使用することを意識して、ブーストは音を変えたいときに使用します。
イコライザー(EQ)を使って不要な共鳴音を処理する方法でもご紹介しましたが、トラックごとに数回のマイナス方向のEQの動きを試してください。最低限、サウンドのローエンドによるトラブルを除去するために、ほぼすべてのトラックに対してハイパスフィルターを適用する必要があります。
その他の一般的な問題点としては200〜400Hzのローミッド部分にはたくさんの楽器が集まりやすく、簡単に飽和してしまう可能性が高いです。
4. ナローバンドを減らし、ワイドにブースト
特定の周波数を修正するQ幅が狭く深いイコライジング(ナローバンド)を減らして、Q幅を広く浅く使うことで、EQで起こりやすい副作用的なトラブルを回避することができます。
一般的にナローバンドを使う時には、特定の問題のある周波数を探している場面がほとんどです。つまり、綺麗な音源ソースであるという前提でいえば、深いカットが必要な場面はそれほど多く存在しないということになります。
ブーストするときはトーンを変更したい場面なので、ワイドな高シェルフブーストでエアー感や煌びやかさを追加したり、低シェルフブーストを使用してサウンドにボトムエンドを追加したりすることが多いです。
5. ミッドサイド処理でローエンドを整える
低音域であるローエンドの処理は難しく、正しく行えていない場合にはミックス全体のサウンドが濁る原因になります。
低音域を修正する場合、センターとサイドの二つに分けて処理できるミッドサイド機能を搭載したEQを使うことで、正しく処理することができます。
やり方は、サウンドチャンネルにハイパスフィルターを追加し、側面のみに影響を与えるように設定し、カットオフを大体100~125Hzに調整します。これにより、キックとベースのローエンドのパワーを維持しながら、横に広がるローエンドトラブルを回避することができます。
ミッドサイド搭載EQは「FabFilter Pro-Q 3」がおすすめです。
6. ボーカルにハイシェルフブーストを追加する
ミックス全体でボーカルは最重要な要素であることが多く、ボーカルに他の楽器が干渉したりして、ミックスの奥に埋めてしまうことは避けるべきです。
ボーカルトラックにハイシェルフブーストをかけることで、こもりがちなボーカルトラブルに対処することができます。
8~16kHzで約3dB程ブーストするとエアー感が加わり、すっきりとしたボーカルトラックが手に入りますが、「歯擦音」が気になる場合はディエッサーをかけることも忘れずに。
7. バストラックを接着させる
複数のトラックを一つにまとめたバストラックにコンプレッサーで圧縮することで「接着剤」的な役割を果たします。
バスコンプのポイントは浅めのレシオ値とゲインリダクションで、すべての楽器要素を「ならす」ように使うやり方です。バスコンプではバス内の個々のトラックのダイナミクスに影響を与えない程度に全体を少しだけ圧縮します。
遅めのアタック、速めのリリース、低いレシオ値、低いゲインリダクションをよく使います。
8. ドラムトラックにパラレルコンプレッション
パラレルコンプレッションは別名ニューヨークコンプレッションとも呼ばれ、サウンドの(立ち上がり)トランジェントを失うことなく、圧縮によるメリットのみをトラックに適用するテクニックです。
ドラムトラックに対してパラレルコンプレッションを使うことで音圧が上がり、力強さが増し、パンチのあるサウンドになります。
※少し複雑なので、詳しいやり方はパラレルコンプレッションの使い方をご覧ください。
9. ボーカルにマキシマイザーを使う
ボーカルトラックは正しくミックスするのが難しいトラックの一つです。理由としては、人間の声のダイナミックレンジの広さにあります。
楽器に比べて人間の発する声は単語とフレーズによって音量の大小が激しく変化し、この大きなダイナミックレンジを正しく処理することが大きな課題となります。
基本的には圧縮が適用されないくらいのボーカルの最も大きな部分だけをキャッチするようにリミッター、またはマキシマイザーを追加して、2~3dB程度のゲインリダクションを狙うことでヘッドルームの消費を抑えます。
時間に余裕がある時は、手動でボリュームオートメーションを書く方法が最善です。
→ボーカル編集に必須の5つのエフェクトプラグイン
10. デジタル楽器はサチュレーション
シンセサイザーやデジタルインストゥルメントを使用する場合には、なるべくサチュレーション状態になっていることが理想です。
すべてに当てはまるわけではないですが、サチュレーションはアナログ特有の暖かさ、聴覚上のラウドネスを追加し、最終的な仕上がりをよりプロフェッショナルなサウンドにする為に有効です。
プロの音源と比べて何か物足りなさを感じたり、音圧が足りないような感じがするときにはサチュレーションによる「飽和感」が足りていない可能性が高いです。
→【2022年最新】高品質のサチュレーションプラグインおすすめ5選
まとめ
綺麗なサウンドを手に入れる為のミックスヒントを10個ご紹介しました。
- 音源ソースの質が最も重要
- 重要度の高い順にミックスする
- イコライザー(EQ)はマイナス方向に使う
- ナローバンドを減らし、ワイドにブースト
- ミッドサイド処理でローエンドを整える
- ボーカルにハイシェルフブーストを追加する
- バストラックを接着させる
- ドラムトラックにパラレルコンプレッション
- ボーカルにマキシマイザーを使う
- デジタル楽器はサチュレーション
一つ一つは些細なことのように思えますが、ミックスは小さな修正の積み重ねで最終的な音源の品質に繋がります。
単一のトラックだけみれば気にならないようなノイズであっても複数のトラックが重なることで、全体に悪い影響を及ぼすこともあります。
今回の内容を参考にしつつ、最終的には自分の耳で判断して修正を加えることでワンランク上の音源を手に入れましょう。
以上、「プロ品質のサウンドを手に入れる為の10のミックスヒント【DTM】」でした。
音圧を上げて迫力あるトラックを入手する為の10のヒント【DTM】
ミックス品質をプロのようなサウンドにする為の5つのヒント【DTM】