
耳コピが苦手でも大丈夫!今日から試せる7つのコツと練習法
「耳コピ」は、楽器を演奏する上で非常に便利なスキルです。これができれば、楽譜がなくても好きな曲をすぐに演奏できるようになり、音楽の楽しみ方が格段に広がります。しかし、「聴いただけで音を判別するなんて、絶対音感がないと無理…」と諦めていませんか?
実は、耳コピに絶対音感は必須ではありません。後からでも鍛えられる「相対音感」と、いくつかの便利なツールやコツを使えば、誰でも音を聴き分ける能力を向上させることができるのです。
この記事では、耳コピが苦手な方でも今日から実践できる、7つの具体的な方法をご紹介します。
1. スローダウン再生で、速いフレーズを確実に捉える

楽曲の再生速度を落とす「スローダウン」機能は、耳コピの最も強力な味方です。速くて聴き取れないギターソロや複雑なパッセージも、速度を落とすことで一音一音がクリアに聴こえるようになります。
多くのDAW(音楽制作ソフト)には標準でこの機能が搭載されていますし、「Amazing Slow Downer」や「Audacity」といった専用ソフトも有名です。
最近では、YouTubeの再生設定にも速度変更機能(0.25〜2倍速)が標準で付いています。まずはこの機能から試してみるのも良いでしょう。速度を落とすことで、今まで気づかなかった細かなニュアンスまで聴き取れるようになり、コピーの精度が劇的に向上します。
2. ループ機能で、難解な箇所を反復練習

特定のパートを繰り返し再生する「ループ機能」は、スローダウン機能と並行して使いたい必須ツールです。どうしても聴き取れない2〜4秒程度の短い区間を指定し、何度も繰り返し聴くことで、脳がその音のパターンを認識しやすくなります。
スローダウン再生とループ機能を組み合わせれば、どんなに複雑なフレーズでもそれぞれの音が聴こえてくるようになります。まずは短いフレーズを完璧にコピーし、少しずつ範囲を広げていくのが上達への近道です。
この反復練習は、音を聴き取るだけでなく、コピーしたフレーズを自分の手で再現する際の練習にもなり、一石二鳥の効果があります。
3. ベース音からコピーしてコードの土台を知る

いきなり全ての音を聴き取ろうとすると、情報量の多さに混乱してしまいます。そこで、まずは楽曲の土台となっている「ベース音」に集中してみましょう。
ベース音はコードの根音(ルート音)を鳴らしていることが多く、この音を拾うだけでコード進行の骨格が見えてきます。低音は聴き取りにくいと感じるかもしれませんが、良質なヘッドホンを使ったり、後述するイコライザーで低音域を強調すると格段に聴き取りやすくなります。
ベースの動きが分かれば、「次はこのコードかな?」と予測を立てながら耳コピを進められるため、闇雲に音を探すよりも遥かに効率的です。
4. 楽曲のキーを見つけて当たりをつける

耳コピ上級者は、全ての音を聴き分けているわけではありません。曲の「キー(調)」を特定し、そのキーで使われる音階(スケール)を予測して当たりをつけています。
例えば、キーがCメジャーだと分かれば、基本的には「ドレミファソラシ」の7音が中心に使われる可能性が高いと予測できます。これにより、探すべき音の選択肢がぐっと絞られ、耳コピの難易度が大幅に下がります。
ベース音を頼りにキーを特定し、ダイアトニックスケールなどの知識と組み合わせることで、コード進行のセオリーや定番フレーズの「型」に当てはめて解読できるようになり、耳コピのスピードと精度が飛躍的に向上します。
5. モニターヘッドホンで音の解像度を上げる

スマートフォンのスピーカーや安価なイヤホンでは、音が団子のように聴こえてしまい、各楽器の音を分離して聴くのは至難の業です。耳コピの精度を上げたければ、再生環境への投資は非常に効果的です。
特におすすめなのが、プロが録音現場で使う「モニターヘッドホン」です。音楽鑑賞用のヘッドホンが迫力あるサウンドになるよう味付けされているのに対し、モニターヘッドホンは脚色のない原音に忠実な再生を目指して作られています。そのため、一つ一つの楽器の音が非常にクリアに聴こえ、音の解像度が格段に上がります。
また、質の良いヘッドホンは低音の再生能力も高いため、前述したベース音の聴き取りにも大きく貢献します。
6. イコライザー(EQ)で聴きたい楽器を分離する

「イコライザー(EQ)」は、音の周波数帯域を調整する機能で、これを活用すると特定の楽器の音を際立たせることができます。例えば、ギターの音を聴き取りたい場合、ギターがよく鳴っている中〜高音域をブースト(増幅)し、邪魔になるボーカルやベースの音域を少しカット(減衰)するといった使い方が可能です。
多くのDAWや高機能な耳コピアプリにはEQが搭載されています。最初は難しく感じるかもしれませんが、「ギターソロが聴き取りにくいから高音域を上げてみよう」「ベースラインが不明瞭だから低音域を上げてみよう」というように、試行錯誤するうちに聴きたい音を分離させる感覚が掴めてきます。これは非常に強力なテクニックです。
7. 最終的には相対音感を鍛えるのが最強の武器

これまで紹介したツールやテクニックは非常に有効ですが、最終的に耳コピを最も確実でスピーディーにするのは、自分自身の聴く力を鍛えることです。それが「相対音感」です。
相対音感とは、基準となる音に対して、次の音がどれだけ高いか低いかを判断する能力のこと。絶対音感とは違い、相対音感は大人になってからでもトレーニングで十分に身につけることができます。
相対音感を身につける簡単なトレーニング
- 音程を歌う練習:基準の音(例:ド)を鳴らし、そこからの音程(「ド→ソ」や「ド→ミ」など)を声に出して歌ってみる練習を繰り返します。
- 簡単な曲で実践:「きらきら星」のようなシンプルな曲を、1音ずつ拾って楽器で弾いてみる練習は、相対音感を鍛えるのに非常に効果的です。
- トレーニングアプリの活用:スマートフォンには、音程の聴き分けなどをゲーム感覚でトレーニングできるアプリが多数あります。隙間時間に活用するのもおすすめです。
相対音感を鍛えることで、音の度数(音程の距離)が感覚的に分かるようになり、音楽理論の理解も深まります。
まとめ
耳コピは、単に曲をコピーするだけでなく、音感を鍛え、音楽の構造を理解するための素晴らしいトレーニングです。しかし、最初から完璧にできる人はいません。大切なのは、便利なツールを使いこなし、簡単な曲から少しずつでも挑戦してみることです。
今回ご紹介した7つの方法を試すことで、今まで聴こえなかった音が聴こえるようになり、耳コピへの苦手意識が薄れていくはずです。ぜひ、諦めずにチャレンジして、音楽の新しい扉を開いてみてください。