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ギターレコーディングで絶対に押さえておきたい7つのポイント

ギター レコーディング

ギターレコーディングで絶対に押さえておきたい7つのポイント

ギターは、音楽制作において非常に使用頻度の高い楽器の一つです。楽曲のクオリティを大きく左右するため、レコーディングでギターサウンドを最適化することは非常に重要です。エンジニアにとって、ギターを高品質で録音できることは大きな強みになります。

しかし、実際にギターレコーディングを行う際には、様々な要素に気を配る必要があります。正確なチューニングはもちろん、曲の雰囲気に合わせてエフェクトや音量、トーンを細かく調整し、理想のサウンドを作り上げなければなりません。

今回は、ギターのレコーディング時に注意すべき7つのポイントについて、初心者にも分かりやすく解説していきます。

ギターレコーディングで一番大切なこと

マイクとミキサー

ギターレコーディングで最も重要なのは、その曲の世界観に完璧にマッチしたギターサウンドを作り出すことです。楽曲のジャンルやアレンジに応じて、エフェクト、トーン、音量を緻密に調整する作業が求められます。

ただし、どんなに素晴らしい音作りをしても、元となるギタープレイの質が低ければ、決して良いサウンドは得られません。どんなに高度なミキシングテクニックを駆使しても、優れたプレイヤーが奏でる音の説得力には敵わないのです。

そのため、プレイヤーが良い演奏をできる環境を整えることにも、細心の注意を払う必要があります。ギタリストがしっかり練習を重ねることは大前提ですが、オーディオインターフェイスの適切な設定、不要なノイズの除去、部屋の響きのコントロールなど、録音環境の整備も同じくらい重要です。

1. すべての基本は「精度の高いチューニング」

ペダルチューナー

レコーディングを始める前に、ギターのチューニングを完璧に合わせましょう。ピッチが少しでもずれていると、他の楽器と音がぶつかり、曲全体のサウンドが濁ってしまいます。最悪の場合、素晴らしいテイクが録れても全て録り直し、ということにもなりかねません。

チューニングは基本中の基本ですが、レコーディングでは普段の練習以上に高い精度が求められます。一部のスマートフォンアプリや安価なクリップチューナーは精度が不十分なことがあるため注意が必要です。

レコーディングでは、精度の高いペダルチューナーやストロボチューナーを使用しましょう。また、ハイポジションのコードが綺麗に響くように「オクターブチューニング」も事前にしっかり合わせておくことが重要です。録音中も、テイクごと、あるいは数分おきに確認するなど、普段よりこまめにチューニングをチェックする習慣をつけましょう。

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2. 演奏に集中できる「プレイ環境」を整える

レコーディングスタジオの様子

プレイ環境を整えることは、良質なギターサウンドを録音し、楽曲全体のクオリティを向上させるために不可欠です。ここでのプレイ環境とは、ギターを演奏する部屋やスタジオの物理的な環境と、プレイヤーの集中力を高める環境の両方を指します。

録音環境が悪いと、不要なノイズや部屋の反響音がマイクに入り込み、ギターサウンドが不自然になる原因となります。具体的には、以下の点に注意しましょう。

  1. 不要な音の反射を抑える
    部屋に厚手のカーペットを敷いたり、壁に吸音材や布を貼ることで、不快な反響音(エコー)を軽減できます。
  2. ギターアンプの置き場所を工夫する
    ギターアンプを壁に近づけすぎたり、部屋の角に置いたりすると特定の低音が不自然に強調されることがあります。少し壁から離すなど、置き場所を調整して部屋の鳴りをコントロールしましょう。
  3. 生活音や環境音をシャットアウトする
    エアコンの風の音、PCのファンの音、外の車の音など、演奏以外の音がマイクに入らないよう最大限注意しましょう。
ギタリストが最高の演奏をするための環境作り

ギタリストが最高のパフォーマンスを発揮できる環境作りも同じくらい重要です。

例えば、座って弾く場合は、演奏しやすい高さの椅子を用意します。可能であれば、肘掛けが動かせるタイプや取り外せるものを選び、ギターを構えるスペースを確保しましょう。

マイクスタンドは、演奏の邪魔にならないブーム型がおすすめです。演奏中にマイクがおじぎしないように、各部をしっかりと固定してください。

ブーム型マイクスタンド

また、演奏前には袖のボタンがギターに当たる音や、ネックレス、指輪などのアクセサリー類が立てるカチャカチャという音にも気を配りましょう。不要な音を拾わないように、外せるものは外しておくのが無難です。

3. サウンドの要「マイク録音 or ライン録音」

レコーディングマイク

ギターの録音方法には、大きく分けて2つのアプローチがあります。一つはギターアンプの音をマイクで拾う「マイク録音」、もう一つはギターの信号を直接オーディオインターフェイス等に入力する「ライン録音」です。

それぞれにメリットとデメリットがあり、どちらを選ぶかでサウンドの方向性が大きく変わります。

マイク録音
メリット デメリット
アンプが空気を振動させるリアルなサウンドと、部屋の響きを含んだ生々しい音が得られる。 周囲の不要な音を拾いやすいため、静かな環境の確保が必須。
アンプヘッドやキャビネット、真空管が生み出す独特の音色や歪みをそのまま録音できる。 マイキングの知識と経験が必要で、理想の音を得るのに時間がかかることがある。
マイクの位置や角度を少し変えるだけで、多彩な音作りが可能。 大きな音が出せない環境では実践が難しい。
ライン録音
メリット デメリット
アンプを鳴らさずに録音できるため、時間や場所を選ばず、周囲の騒音も気にしなくてよい。 アンプを鳴らした時のような空気感や立体感が得にくく、音が平面的になりがち。
ノイズが少なく非常にクリアなサウンド(DIサウンド)が得られる。 サウンドがデジタル的になりやすく、生々しい質感が欲しい場合には向かないことがある。
録音後にアンプシミュレーター等で音作りを自由に変更できるため、編集の柔軟性が高い。  

どちらが優れているというわけではなく、作りたい音楽によって選択は変わります。迫力あるロックサウンドならマイク録音、クリーンで現代的なポップスならライン録音、といった使い分けが考えられます。両方を同時に録音して、後からミックスするのもプロの現場では一般的な手法です。

アコースティックギターの4つの録音方法 | マイク&ピックアップの設置

4. 録りたい音で選ぶ「マイクの種類」

アコースティックギターとマイク

アコースティックギターをマイクで録音する場合、スモールダイアフラム型のコンデンサーマイクが定番としてよく使われます。コンデンサーマイクが推奨される理由は主に2つあります。

第一に、コンデンサーマイクは非常に広い周波数帯域を捉えられる点です。アコースティックギターは、ふくよかな低音から煌びやかな高音まで、非常に幅広い音域を持つ楽器です。コンデンサーマイクはその豊かな倍音成分を余すことなく捉えることができます。

マイクの種類とその効果について

第二に、繊細なニュアンスの表現力に優れている点です。コンデンサーマイクはダイナミックマイクよりも感度が高く、指が弦に触れる微かな音や、ピッキングの強弱といった細かなニュアンスを忠実に拾ってくれます。

また、多くのコンデンサーマイクは指向性(音を拾う範囲)を切り替えられる機能を持っています。これにより、部屋の響きをどれくらい拾うかなどを調整でき、より理想的なサウンドを追求することが可能です。

ダイナミックマイクでの録音も選択肢に
ダイナミックマイク

コンデンサーマイクほど繊細ではありませんが、ダイナミックマイクもギター録音で頻繁に使用されます。特に、ライブハウスやスタジオで定番のShure「SM57」は、その力強く存在感のあるサウンドから「ロックギターのスタンダードな音」として多くのエンジニアやギタリストに愛されています。

アコースティックギターに対しても、アタック感が強く、中音域に特徴のあるサウンドが欲しい場合に有効です。また、コンデンサーマイクに比べて頑丈で価格も手頃なため、初心者の方が最初に手にする一本としても非常におすすめです。

5. 音色を決定づける「マイクポジション」

マイクでギターを録音する際、そのポジションは音質や音の立体感に絶大な影響を与えます。マイクの特性を理解し、耳で確かめながら最適なマイキングポイントを探すことが重要です。

シングルマイク(マイク1本)の場合、最も一般的なのはネックとボディの付け根(12フレットあたり)を狙うポジションです。ギターから15cm~30cmほど離し、ピッキングするあたりに向けてマイクを設置します。

このポジションは、ピッキングのニュアンスを捉えやすく、明るくバランスの取れたサウンドになるのが特徴です。

ネックとボディの付け根を狙うマイキング

もう一つの定番は、プレイヤーの右手に近いブリッジ側を狙うポジションです。
こちらはアタック感が抑えられ、ネック側よりも丸く、甘いサウンドキャラクターになります。

ブリッジ側を狙うマイキング

もしマイクを2本使えるなら、この2つのポジションの音をミックスするのがおすすめです。複数のマイクを使うことで、よりワイドで立体感のあるサウンドを作ることができます。例えば、12フレット付近に設置したマイクで弦のきらびやかな音を捉え、ブリッジ付近のマイクでボディの豊かな低音を捉えることで、非常にリッチで自然なアコースティックサウンドを表現できます。

アコースティックギターの録音時に注意すべき5つのこと

6. 低音をコントロールする「近接効果」の知識

カーディオイドの指向性パターン

カーディオイドとは、マイクの種類とその効果についてでも解説しているように、マイクが音を拾う範囲を示す指向性パターンの一種です。

この心臓のような形をしたカーディオイドパターンを持つマイクには、「近接効果(きんせつこうか)」という特性があります。これは、マイクを音源に近づけるほど、低音域が強調されて録音されるという現象です。

カーディオイドタイプのコンデンサーマイクや、先述の「SM57」のようなダイナミックマイクを使用する場合、この近接効果を理解し、マイクとギターの距離を慎重に調整する必要があります。

意図せずマイクを近づけすぎると低音が膨らみすぎて音がこもってしまう原因になりますが、逆にこの効果を積極的に利用して、サウンドに太さや迫力を加えるテクニックとしても使えます。

もし近接効果を避け、より自然なエアー感を録りたい場合は「無指向性」のマイクを使うのが有効です。無指向性マイクは近接効果が発生しないため、ギリギリまでギターに近づけても低音が不自然に持ち上がることがありません。

7. 音割れを防ぐ「適切な録音レベル」

録音を始める前の最後にして非常に重要なステップが、録音レベル(ゲイン)の調整です。これは、ギターからの信号をどれくらいの音量でPCに取り込むかを決める作業です。

レベルが大きすぎると、音が歪んで「クリッピング」というノイズが発生します。デジタル録音で一度クリップしてしまった音は、後から修正することがほぼ不可能です。逆にレベルが小さすぎると、ノイズ(サーという音)が目立ってしまい、音量を持ち上げた際にノイズも一緒に大きくなってしまいます。

最適な録音レベルの目安は、DAW(音楽制作ソフト)のメーター上で、一番強く弾いたときに-12dBから-6dBの範囲に収まる程度です。リハーサルで一番盛り上がるフレーズを実際に弾いてみて、ピーク(最大音量)が-6dBを超えないように、オーディオインターフェイスのゲインつまみを調整しましょう。

大きすぎず、小さすぎず。この少し余裕のあるレベル設定を心がけることで、後々のミックス作業が格段に進めやすくなります。

まとめ

今回は、ギターのレコーディング時に注意するべき7つのポイントについてお話ししました。

  1. すべての基本は「精度の高いチューニング」
  2. 演奏に集中できる「プレイ環境」を整える
  3. サウンドの要「マイク録音 or ライン録音」
  4. 録りたい音で選ぶ「マイクの種類」
  5. 音色を決定づける「マイクポジション」
  6. 低音をコントロールする「近接効果」の知識
  7. 音割れを防ぐ「適切な録音レベル」

最高の音質で録音された、熟練プレイヤーによるアコースティックギターの音色は、それ単体でもリスナーに感動を与えるほどの力を持っています。

素晴らしいテイクが録れるように日々の練習を欠かさず、今回ご紹介したポイントを参考にして、ぜひ良いレコーディング環境作りに挑戦してみてください。

以上、「ギターのレコーディングで絶対に押さえておきたい7つのポイント」でした。


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