ラップボーカルのミキシングに関する3つヒント【DTM】
ヒップホップは何年にもわたって808による低音の強化や、Lo-Fiのようなリバイバル要素など、多くの変化を遂げてきました。
その中でもヒップホップにおけるラップボーカルは常に最重要な要素として、正しく鳴らすことで多くのエネルギーをトラックに与えてくれます。
最近ではビートパターンやベースグルーブが前面に出てきているサウンドも多いですが、メッセージの伝達に関してはボーカルが依然として最重要です。
伝えるべきストーリー、印象的なフック、またはバズを生み出す為のキャッチフレーズも必要です。
今回はそんなラップボーカルを輝かせる為、ミキシングに役立つヒントについてお話します。
1. 存在感と暖かさを加える
まずはミックス内におけるボーカルトラックの存在感と暖かさを調整します。
これはボーカルに対してのコンプレッション処理で圧縮感を調整して、トラック全体に渡ってボーカルサウンドが前面に張り付くよう、はっきりと聞こえるように調整します。
一般的にはラップボーカルのアタックタイムとコンプレッションレシオの値はかなり高く設定することで、ミックス内で存在感を出すことができます。
また、録音されたボーカルトラックの状態に応じてスレッショルド値とゲイン値は設定されるので、耳で聴いて正しく判断する必要があります。
必要に応じてサチュレーションのような歪み系のエフェクトを追加することで、ボーカルトラックにさらに暖かさと太さを加えることができます。
存在感を増すために強力な圧縮を適用すると、ボーカルフレーズの間にバックグラウンドノイズやブレスノイズが多くなる可能性があります。解消法としてはノイズゲートを適用したり、トラックに編集作業を行って、これらの不要なサウンドをクリーンアップする必要があります。
2. ノイズを除去して音質を整える
EQを使ってボーカルボディに十分な低音と低中音域のサウンドを与えます。
80Hzから300Hzの範囲の周辺でEQブーストを行いますが、ボーカリストごとに数値が異なるのと、ブーストしすぎには注意しましょう。
次に歌詞を聴き取りやすくする為に鮮明さと明瞭さを与え、トラック全体にエアー感を与えます。
一般的には約1kHzから4kHzの範囲のいくつかのスポットに小さなEQブーストの狭帯域を追加することで、子音に含まれる音が歌詞の中ではっきりと聞こえるようにします。
さらに上の帯域通常4kHzから8kHzの範囲で狭いEQバンドブーストを適用します。
この周波数帯域をブーストすることでボーカルトラックは非常にクリアで透明感のあるサウンドに聞こえますが、ミックス内でヒスノイズを感じる可能性のある過度の歯擦音(さしすせそでよく聞く空気漏れ)を生み出す可能性もあります。
これを回避するためには一般的にはディエッサーエフェクトを使用し、飛び出した歯擦音を制御します。
3. バランス調整
存在感と音質を整えたら、ラップボーカルとバックビートを馴染ませる為にトラック全体のバランス調整が必要です。
適切に音量バランスの取れたボーカルとインストルメンタルトラックがあっても、時々ぶつかり合って干渉しているように聴こえることもあります。
解消するにはスペクトラムアナライザーのような周波数を目視できるツールを使用して、ボーカルのおいしい周波数帯域(通常は200〜2,000Hz周辺)を見つけます。
次にインストゥルメンタルトラックのほうで、この辺りの周波数帯域をEQを使ってカットすると、ボーカルが入る為の多くのスペースを確保することができます。
トラックメイカーは自分の楽器の音がどれだけ好きであっても、ヒップホップにはラップが必要であることを忘れないようにしてください。
最近のタイプビートのような後からボーカルトラックが入ることを前提として作成されているトラックにもかかわらず、ボーカルが入るべき中域の周波数領域に楽器がひしめき合ってるトラックも多いです。自分のトラックを良く聞かせたいが為に、インストの段階で完成してしまっているトラックは、ラップの入るスペースが確保されていないことが多いので注意が必要です。
まとめ
ラップボーカルのミキシングに関する3つヒントについてお話しました。
ヒップホップミュージックにおいてラップボーカルは最重要な要素なので、今回の内容を参考にしながら時間をかけてボーカルミックスしましょう。
最近はアーティスト側がネットでビートをダウンロードして、そのままミックスをせずにラップを乗せて配信しているようなトラックも多くみかけます。
そういった場合には最低限スペクトラムアナライザー等を使用して、ボーカルが入る為のスペースが確保されているトラックかどうかは確認することをオススメします。
以上、「ラップボーカルのミキシングに関する3つヒント【DTM】」でした。