トゥルーピーク値とは?その意味と設定方法
トゥルーピークを正しく理解してトラックに適応しないと、せっかく時間をかけて作った音源の一部が削られたり、クリップノイズが乗る原因にもなります。
トゥルーピークの測定は、高品質のオーディオ再生を保証するだけでなく、オーディオ録音が放送や規制の基準を満たすことを保証する上でも重要な要素です。
国によっては、放送用オーディオのラウドネス基準を設けており、この基準を満たさない場合、罰金やその他の罰則が課されることもあるくらい、重要な指針として利用されています。
今回は、トゥルーピーク値の知識と正しい設定方法について解説します。
→マスタリングのやり方と基礎知識
トゥルーピーク値とは?
トゥルーピークとは、簡単にいうと曲がオーディオに変換されたときに発生するピークのことです。
オーディオ再生中に音の波形が到達しうる最高レベルの大きさを表す値で、オーディオ録音を可能な限り高いクオリティを確保するために重要な要素です。
従来のオーディオの録音やミキシングでは、音の波形の平均的な大きさを時間的に推定するRMS(Root Mean Square)を使ってラウドネスを測定していました。しかし、RMS値は音の波形の真のピークレベルを正確に反映していないことが多く、再生時に音声の歪みを引き起こす可能性があります。
この問題を解決するために導入されたのが「トゥルーピークバリュー測定」です。これによって波形の実際の最大レベルを測定することができます。
ピーク値とトゥルーピーク値の違いは?
続いて、トゥルーピークについてより深く理解する為に「ピーク値」について説明します。
ピーク値は一般的なDAWや音声編集ソフト上でミックスがクリッピング(音量が限界値を超えた状態)しているときに表示される値です。
一般的にはリミッターやラウドネスメーターなどを使用することで数値として目視することができます。
→マスタリングでの音圧の測り方について【LUFS】
ミックスの音量が大きすぎてこのようなクリップ状態になると、音量の大きい部分は潰れ、ダイナミックレンジが狭くなり、歪みやクリップノイズが生じます。
意図させてクリップさせる場合も多いですが、望まないクリッピングは制作段階のミスとしては明らかです。
音の限界=ピーク値
このようにピークの値が分かるピークメーターを使用することで曲がクリップするポイントを表示してくれます。
しかし実際にはミックスを終えたあとにも、MP3のような圧縮音源として書き出した際や、ストリーミングサービスに配信した時など、様々な場面でクリップが起こりうる場面があり、そのときのピークまでは測定できません。
そこで重要なのが「トゥルーピークメーター」なのです。
トゥルーピークを回避する方法
トゥルーピークによるオーバーシュートを回避するのに有効な2つの方法を挙げてみます。
1. ヘッドルームを確保する
一番簡単な方法はマスタリングの最終段階で使用するリミッターやマキシマイザーのCeiling値を少し下げてヘッドルームを確保することです。
すべてのトゥルーピークを回避するのは難しいですが、WAVでストリーミング配信するという用途の場合、一般的には-0.5~2dBほどスペースを空けてやると無難です。
2. トゥルーピークリミッターを使う
トゥルーピークを抑えてくれる機能を持ったリミッターを使うのも有効です。
多少の音質変化はありますが、色んなストリーミングサービスから配信したり、CDに焼いたりする予定がある場合には必須のプラグインです。
特にロックやEDMのような限界まで音を詰め込んだ音圧の高い音源の場合は変換した時にハードクリップしてしまう可能性が非常に高いので注意しましょう。
おすすめプラグイン
おすすめのトゥルーピークが測れるプラグインをご紹介します。
Youlean Loudness Meter 2
無料のラウドネスメーター「Youlean Loudness Meter 2」です。
無料なのにかなり高性能なので、愛用者も多いのではないでしょうか。
もちろんトゥルーピーク値も測定可能です。
→Youlean Loudness Meter 2のダウンロードはこちら。
FabFilter Pro-L 2
予算に余裕がある方は「FabFilter Pro-L 2」がおすすめです。
プロ御用達の定番リミッターでトゥルーピークだけじゃなく、高度なアルゴリズム、線形位相オーバーサンプリング、ディザリング、ノイズシェーピング、サラウンドサポート等の多くの機能を備えています。
→FabFilter Pro-L 2の詳細はこちら。(英語ページ)
トゥルーピークメーターの使い方
最適なピーク値を得るために、エンジニアはミキシングやマスタリングの際にオーディオ録音のレベルを注意深く監視して、調整する必要があります。
実際にトゥルーピークメーターを使って、メーターに表示された値分だけ最終段階のリミッターのCeilingでカットします。
トゥルーピーク値を確認して・・・
リミッターのCeiling値で調節します。
トゥルーピーク搭載のリミッターを使用する場合はオンオフのボタンがどこかに備わっていると思うので、オンにするとD/A変換後のアナログ信号のレベルに合わせてカットしてくれます。
まとめ
トゥルーピーク値について解説しました。
ヘッドルームの推奨値に関してはSpotifyは-2dB、Apple Musicは-1dBであったりと、ストリーミング配信だけみても最適なCeiling値は変わってくるので、配信先に合わせたピーク値を知るというのも重要です。
現在は一昔前ほどの音圧の高い音源を扱うことも少なくなってきたので、-0.5~-1dBぐらいのヘッドスペースがあればリスニングに影響の出ないクリアな音源が手に入るかと思います。
以上、「トゥルーピーク値とは?その意味と設定方法」でした。