音楽ストリーミングサービスごとの最適なLUFS目安はいくつ?
マスタリングを行うときにApple MusicやSpotifyといった主要音楽プラットフォームに自分の楽曲をアップロードする際に、最適な音量を知っておくことは非常に重要です。
YouTubeにアップロードしたけど、自分の音源だけ小さく聴こえたり、Soundcloudにアップロードしたときにサウンドが異なって聴こえる場合には今回の記事の内容が役に立ちます。
ラウドネスノーマライゼーション
ほとんどのオンライン上の音楽プラットフォームには「ラウドネスノーマライゼーション」と呼ばれる音量を正規化する仕組みが組み込まれています。
これにより、アーティストごとにアップロードされた音源の音量にバラつきがあった場合でも、リスナーは常に一定の音量で音楽を楽しむことができます。
一昔前のように音楽を連続で聴いている時に「急に音量が上がってびっくりした!」といったような不快な感情に悩まされることは無くなったわけです。
つまり、静かなメロウなジャズ音楽と爆音のEDMを続けてリスニングしても音量差を感じることが無くなりました。
音量を上げることによるデメリット
ラウドネスノーマライゼーションが働くことから、以前のようにリミッターやマキシマイザーを使用して音圧を上げることによるメリットはかなり薄れました。
一般的に多いとされている現在の「-14LUFS」でオーディオをストリーミング配信した場合と、音圧レベルの高い「-8LUFS」をアップロードした場合は、両方の音源ともストリーミングプラットフォーム上でトラック音量が-14LUFS前後にまで減少します。
つまり、音圧を上げたとしても、その過程で失われたトランジェントを取り戻すことができないので、結果的には非圧縮の音源の方がよりダイナミックで迫力のある楽曲に聴こえます。
ラウドネス戦争の考え方であった「トラックの音量が大きいほど、リスナーにとってより良い音になる」というものは必ずしもそうとは限らなくなりました。
音楽ストリーミングサイトごとの最適なLUFS値
音圧を上げることによるメリットが薄れたということで、ではどれくらいの音圧レベルが最適なの?ということなのですが、それはプラットフォームによって異なります。
2021年時点の音楽ストリーミングサイトごとの最適なLUFS値は以下になります。
Platform | Peak | Loudness | Dynamic Range |
Spotify | -1.0 dBTP | -14 LUFS | >9DR |
Apple Music | -1.0 dBTP | -16 LUFS(±1.0 LU) | >9DR |
Apple Podcasts | -1.0 dBTP | -16 LUFS(±1.0 LU) | >9DR |
Amazon Music | -2.0dBTP | -9 to -13 LUFS | >9DR |
Spotify Loud | -2.0 dBTP | -11 LUFS | >9DR |
Youtube | -1.0 dBTP | -13 to -15 LUFS | >9DR |
Deezer | -1.0 dBTP | -14 to -16 LUFS | >9DR |
Soundcloud | -1.0 dBTP | -8 to -13 LUFS | >9DR |
音圧最適化のやり方は別記事のマスタリングでの音圧の測り方について【LUFS】 をご参照ください。
音楽をアップロードする際のいくつかのヒント
- -14LUFSよりも大きい音楽は音量を下げられます。反対に-14LUFSよりも小さな場合は音量が上がり、リミッティングされる可能性があります(0.0dBを超えずに音量を大きくするため)。よりダイナミックでパンチの効いたミックスを選ぶことで、過度に圧縮されて音圧を上げたマスター音源よりもサウンドが良くなります。
- リミッティングによる質感変化もあるので、-14LUFSを厳守する必要はありませんが、Apple MusicやSpotifyのような主要サイトでは曲の最も大きな部分で約-8LUFSよりも大きくしないことをおすすめします。
- Spotifyは音楽をアップロードするときには少なくとも-1dBTP(デジタルトゥルーピーク)のヘッドルームを残して、最適化することを提案しています。EDMのような大音量のトラックはトランスコーディング中にクリッピングする可能性が高いため、さらに-2dBTPのヘッドルームがあることを示唆しています。
- あまりに小さすぎるマスター音源も不利です。アマゾンの音楽は大きな曲を下げますが、現在は静かなトラックの音量を上げることはしません。他の楽曲と比べたときの音量不足は避けたいので、-16LUFS以上に保つようにします。
- 音源が複数用意できない場合は、-14LUFSに設定することですべてのプラットフォームで上手く機能します。SoundCloudも検討している場合は-9LUFSくらいを検討しましょう。
LUFSを測れるマスタリングソフト
LUFSを測定できるマスタリングソフトは多くリリースされていますが、特にiZotopeの「Ozone 9」はDTM初心者の方にもおすすめできます。
AI搭載なので「Lean Threshold」を-14LUFSに設定するだけで自動的に最適な音量を設定してくれる非常に便利なソフトウェアです。
トップクリエイターも多く利用している定番ソフトなので「マスタリングソフトに何を使っていいか分からない」といった方は検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
音楽ストリーミングサービスごとの最適なLUFS目安についてお話しました。
音圧を稼ぐために圧縮してリミッティングする必要は無くなり、ダイナミックで押しつぶされていないトラックのほうが、ストリーミングプラットフォームで他の楽曲よりも目立つようになります。
とはいえ、プラットフォームごとにルールは多少異なるので、それぞれのサイトの概要をチェックするようにしましょう。
特にSoundcloudはラウドネスノーマライゼーションが無く、ストリーミング用にすべてのオーディオを128kbpsMP3にトランスコードすることによるクリッピングや歪みには注意しましょう。
以上、「音楽ストリーミングサービスごとの最適なLUFS目安はいくつ?」でした。