ダイナミックEQとは?正しい使い方とおすすめの製品をご紹介
ダイナミックEQは、コンプレッサー、エクスパンダーとパラメトリックEQを組み合わせ、入力信号のゲイン量に応じてEQでのブーストやカットの量が変化するイコライザーです。
最近では、有料のプラグインやマスタリングプラグインとして搭載されることが増えていますが、比較的新しいタイプのエフェクトであるため、正しい使い道やどういった場面で使えばいいのか、迷っているクリエイターの方も多いかと思います。
そこで今回は、ダイナミックEQの正しい使い方とおすすめのソフトウェアをいくつかご紹介します。
ダイナミックEQの使い方
ダイナミックEQは、通常のEQとは異なり、音の振幅に応じて自動的にフィルターを調整することができる便利なツールです。ディエッサーとしての使用法が一般的で、歌声を他の要素から際立たせるために高域を上げ、コンプレッサーを通したときの歯擦音や母音の強調を抑えることができます。
マルチバンドコンプレッサーと動作が似ていますが、ダイナミックEQはフィルターの形状やEQのカーブを通常のEQのように選択でき、メーカーによって選択の幅が異なります。通常のEQと同じように、上げ下げする周波数とゲイン量、Q幅とカーブ特性、そしてコンプレッサーでいうところのスレッショルドやレシオ値といったパラメーターを搭載しています。
ダイナミックEQの特徴は、スレッショルドを超えたら徐々に効果が深くなっていき、ある程度までいくと効果が最大になり、効き具合は一定になります。スレッショルドを超えた分をどれくらいの割合でカットするかを決めるものが多く、例えば50%だとスレッショルドの値を10dB超えたら、5dB分カットするということになります。
また、サイドチェイン機能を備えた製品も多く、別のトラック音をトリガーとしてカット/ブーストできる製品もあります。例えばキックが踏まれた時にベースの60Hz周辺を3dBカットするといったことも設定できるようになります。
コンプレッサーとの併用
ボーカル録音したものを編集する際によくある例として、録音時にコンプレッサーをかけすぎて、その後の加工が難しくなる場面があります。
EQでは高域をブーストしにくい状況や、声を張った瞬間に特定の帯域が飛び出したり、帯域が極端に狭くなってしまっている場合があります。例えば、声を張り上げた際に1kHzと3kHz周辺にピークが飛び出し、そのピークが録音時のコンプレッサーが強く反応してしまっている。というような状況です。
この場合は、高域が広く圧縮されてしまって、ピークが減衰しているとともに、同じタイミングで弱くなった高域をシェルビングEQでブーストします。ダイナミックEQでは、ピーク以外の瞬間には動作することがないので、必要以上にカットされるのを回避できるというわけです。
サウンドデザインとしての使い方
楽器やサウンドデザインにおいてもダイナミックEQは効果的です。例えば、ドラムキックサンプルを加工する場合、サンプルの3kHz付近にビーターアタックがあり、100Hzから1kHz付近の胴鳴り部分が不足していたとします。
この場合は、3kHzの帯域をアタック時に下げるようにして、300Hz付近をアタック時に持ち上げるように設定します。全体として重心を低音に移動させることで、胴鳴り部分を強調することができます。
ドラムのバストラックに使用する一例です。スネアの胴鳴りの部分を狭いEQで狙ってカットしつつ、ヒットの瞬間に高域部分を少し上げています。カットのアタックは少し遅めで、トランジェント部分には干渉しないようにします。
通常、EQで単独のスネアに対してカットするのが一般的かもしれませんが、マイクが複数立っていて他のトラックにもスネアが混ざっている場合には、グループで処理した方が良い場合があります。
通常のEQではスネアが鳴っていない時にも減衰されてしまうので、レベルに応じて動かす方が他のドラムパーツが自然に聞こえます。
おすすめのダイナミックEQプラグインソフト
ここからはおすすめのダイナミックEQプラグインソフトをいくつかご紹介します。
FabFilter Pro-Q3
- ハイエンドEQ
- 最大24のバンド
- ダイナミックEQモード
FabFilterの「Pro-Q3 EQ」プラグインは最も人気のあるイコライザーソフトウェアとして多くのエンジニアから高い評価を得ているEQプラグインの1つです。
非常に直感的な操作感で、美しく使いやすいデザインでありながら、プロフェッショナルが必要とするすべてのEQプロセスを提供してくれます。
Pro-Q3 EQは大きくて見やすいEQバンド波形ディスプレイに最大24バンドを好きな場所に配置して微調整することができます。可変ステレオ配置やダイナミックEQ機能もあります。
Oxford Dynamic EQ
- 原音に忠実なクリアな音質
- M/S処理
- 万能タイプ
Oxford Dynamic EQは、必要なときに必要なだけの増減処理を提供し、素早いパラメーター設定が可能なダイナミックEQソフトです。
音楽的なType-3 EQカーブの5バンドを搭載しており、シングルソース、バストラック等に対応した幅広いコントロールと、Sonnoxの原音に忠実なクリアな音質が特徴です。
このダイナミックEQには、トランジェント検出によってエフェクトを適用する機能などのユニークなオプションがいくつか搭載されており、ドラムやパーカッションを調整したい場合に非常に便利です。
Oxford Dynamic EQ
MAutoDynamicEQ
MAutoDynamicEQは高性能なパラメトリックイコライザーで、驚くべき多用途性と使いやすさを組み合わせて、実用的かつ音楽的なサウンドを生み出します。
アナログ機器からインスピレーションを得て設計されており、調整可能なスロープフィルター (MASF) テクノロジーは、他のイコライザーに伴う共鳴のない、自然なサウンドの多用途フィルターを提供します。
高度な調整が可能なダイナミックEQの各バンドを使用すると、ミックスをまとめる場合でも、コンプレッション、エンハンシング、ディエッシングの工程に取りかかる場合でも、問題となる箇所を必要な量だけ編集することができます。
MAutoDynamicEQ
まとめ
ダイナミックEQは、音の振幅に応じて自動的にフィルターを調整することができるイコライザーです。
ボーカルや楽器、サウンドデザインにおいて、他のエフェクトと組み合わせて使うことで、自然な音を保ちつつ理想的なサウンドに近づけることができます。
ダイナミックEQはクリエイターにとって非常に便利なツールであり、正しい使い方で音楽制作やサウンドデザインの幅を広げることができます。
以上、「ダイナミックEQとは?正しい使い方とおすすめの製品をご紹介」でした。
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