理想的な音質を手に入れる!最適なマイクを選ぶ為の完全ガイド
初めて音楽制作をする方にとっては、オーディオレコーディングの世界は少し複雑に感じることもあるかもしれません。特に高品質なプロ品質のレコーディングをスタートさせるためには、まずはプロジェクトに合った最適なマイクの選択が肝心です。
実際、練習用スタジオ、レコーディングスタジオ、ライブハウスといった場所では、様々なタイプのマイクが設置されています。色んな種類があるのは、異なる音源には異なる収音方法が必要であり、使うマイクの選択がサウンド品質を大きく左右するからです。
今回の記事では、理想とする最高の音質を手に入れる為に、マイクを選ぶ際に知っておくべきポイントを解説します。
マイクを使用する用途を考える
まずはマイクをどのような用途で使用するのかを考えてみましょう。ストリーミング配信の為にデスク上で使うものなのか、それとも本格的な音楽レコーディングの為に使用するのか等、どのような使い方をするのかによって選択するマイクは異なります。
例えば、配信用のトークマイクを検討している場合には、超高感度のコンデンサーマイクは少しオーバースペックかもしれません。逆に、繊細なボーカル録音を行う本格的なレコーディングをしようとしている場合、USBマイクでは、ボーカルの歌声を正確に収音することは難しいでしょう。
マイクの種類
代表的なマイクの種類とその効果について知ることで、使用用途や環境に応じた最適なマイクをチョイスすることに役立ちます。
宅録のようなあまり予算をかけられない状況では、録音環境に適したオールラウンダーなマイクを1本用意したり、逆にドラムキットのレコーディングのような大掛かりな場合は、ドラムパーツごとにさらにマイクを使い分けるということもあります。→ドラム用レコーディングマイクのおすすめ5選
まずは、マイクの特性について理解しておくことで、自分に最適なマイクを選ぶときの手助けになります。
ダイナミックマイク
ダイナミックマイクはマイク界の中では万能タイプに属しています。他のタイプのマイクよりも比較的安い値段で購入でき、耐久性にも優れているので長く使用できます。
ボーカルや楽器の録音等、ほぼすべての工程で平均的な能力を発揮してくれるのでホームスタジオに最適です。
ダイナミックマイクはマイク内の可動コイルを振動させ、音エネルギーを電気に変換して増大させたり、記録可能な状態にします。
ダイナミックマイクのベストセラー製品であるShure SM57は大きな音圧にも耐えることができるので、比較的音の大きいエレキギター、ベース、生ドラムの収音に適しています。
【そのマイクで合ってる?】自分の声質とマイクの特性が合っているかを判断する方法
コンデンサーマイク
コンデンサーマイクはダイヤフラムと呼ばれる振動版を使い、静電容量を変化させて電気エネルギーに変換します。その為、電気を蓄積する必要があるので、ファンタム電源が必要となります。
音質はダイナミックマイクよりもはるかに繊細かつ高音質で、細かい音まで拾ってくれるので音楽スタジオやプロユースとして使われることが多く、値段も少々お高くなっております。
主にボーカルや、アコースティックギター、ピアノ等の繊細なニュアンスを拾いたい場合によく使用されます。
コンデンサーマイクはさらに「ラージダイアフラム」と「スモールダイヤフラム」タイプに分けることができます。
ラージダイアフラムコンデンサー
ダイアフラムは、振動や音波を感知して変換するための薄い振動板のことを指します。ラージダイアフラムタイプはレコーディングマイクとして最も適しています。
ほとんどのラージダイアフラムコンデンサーマイクには、複数のピックアップパターンとdBパッドが備わっており、マイク市場で最も汎用性の高いタイプのマイクとなっています。
どんな音でも鮮明にキャプチャすることもあり、ボーカル以外のアコースティック楽器全般に使用することが可能で、音響設備が整えられたスタジオ環境で真価を発揮します。
スモールダイアフラムコンデンサー
スモールダイアフラムコンデンサーマイクは、鋭いトランジェントを持つ高SPL(音圧レベル)のオーディオソースを録音する場合に最適です。
例えば、スネア、ハイハット、アコースティックギターのような瞬間的な音量が大きくなるようなタイプの音源ソースの録音を得意としています。
ただし、スモールダイアフラムコンデンサーマイクは内部ノイズが多く、感度ではラージダイアフラムに劣っていることもあり、限定的な使用用途が多い傾向にあります。
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リボンマイク
リボンマイクはダイナミックマイクと仕組みは似ていますが、コイルの代わりに磁場に吊るされた金属製のリボンを使用して電気信号を生成します。
高価で壊れやすく、割と古いタイプのマイクなので以前ほどの人気はありませんが、現在のLo-Fiブームで再び注目されはじめています。
耳障りな高音を拾わずに、柔らかいヴィンテージ感溢れるサウンドが特徴で、 初期のアナログ感溢れるウォームな音が好きな方にはオススメです。
最近ではリボンマイクも進化しており、より頑丈で安価なモデルも発売されているので、 高解像度化の進むデジタルレコーディングにおいて、古き良き時代のアナログ録音の手法やサウンドキャラクターを使うのもありです。
マイクの指向特性について
マイクのもうひとつの重要な要素として、指向特性というものがあります。
ポーラーパターンとも呼ばれ、振動版の周囲360度の音の収音特性のことで、どの方向からの音をよく拾うかを表しています
代表的な3つのパターンについて解説していきます。
全方向
名前の通り、全方向に対して均等な収音特性を持ったマイクです。
無指向性なので部屋のどこに設置しても、同じような音をキャプチャしてくれるので、オフマイクとして全体の音を拾うことに適しています。
コンデンサーのハイエンドモデルに切り替えとして「全方向」が付いている場合が多いです。
カーディオイド
心臓の形に似ていることからその名前が付けられました。
もっとも一般的な指向性パターンで「単一指向性」です。前方からの音に対してもっとも敏感で、後方からの音はあまり拾わないので、ステージ上でのサウンドシステムに使われたり、ボーカルマイクとしてよく使用されます。
カーディオイドタイプのマイクを使用する場合に注意する点として「近接効果」というものがあり、マイクが音源に近づくにつれて低音を増強させる特性をもっています。
双方向
リボンマイクに多い指向性パターンで、前方後方に敏感で、サイドからの音はあまり拾いません。
ラジオのように向かい合って話す場合に使われたり、双方からの音を同時に当てて相殺するノイズキャンセリングに使われたりもしています。
レコーディングという意味合いでは、カーディオイドや全方向に比べてあまり使用されることはないですが、ヘッドホン内を左右に行きかうリアルなステレオ音像を表現したりと、特殊な使い方がされる場合が多いです。
マイクの種類とその効果について
マイクの近接効果について
マイクの近接効果とは、マイクと音源の距離が近づくと低周波応答(低音)が増幅する現象です。
主に男性の声でよく発生することがあり、マイクに近づきすぎて低音が「ボワッ」と膨れ上がるのを経験したことがある方もいるのではないでしょうか?
全方向以外のすべての指向性マイクは近接効果による影響が発生しますが、これはマイクの動作の性質によるものです。特にカーディオイドタイプは近接効果が発生しやすいので注意が必要です。
場合によっては、サウンドに少し「図太さ」を持たせたい時に、近接効果を利用して低音を強調するというテクニックもあります。
ボーカルミックスがこもる時の解決方法
マイクごとの周波数応答を確認
周波数応答とは、マイクが再生できる周波数の範囲のことです。周波数応答は、マイクがどのようなサウンドで収音して再生できるのかということに影響します。
理想的を言えば、マイクで拾った音をそのまま完璧に再現できること、つまり原音をそのまま正確に再生機器から出力することですが、残念ながら電流の性質とマイクからスピーカーまでの一連のコンポーネント内を信号が流れることで、それは不可能となっています。
マイクごとのサウンドの特徴を判断する方法としては、製品ホームページにある「周波数応答グラフ」を参考にすることです。
横の数字は周波数範囲を表し、縦の数字は相対応答をデシベル単位で表されています。SM58では、3~6kHzの間が大きくブースされており、ボーカルや楽器に明瞭さと「パンチ」を加えることができます。
マイクごとの周波数応答を確認することは、最適なマイクを選ぶ際に非常に重要な要素となります。
音圧レベル
音圧レベルは、歪みを発生させることなくマイクが処理できる最大音量レベル(dB単位)を表しています。平均的なSPL定格は約100dBであることが多いですが、130dB以上の高いものもあります。
例えば、楽器の収音で定番となっている「Shure SM57」マイクでは、1kHzで約160dBのサウンドを処理することが可能となっており、これはかなり驚異的な数値です。これによりスタジオ環境にあるほぼすべての種類のサウンドに対応することができるようになっています。
このように収音可能な音圧レベルが大きいと、瞬間的な音量が最も大きくなるドラムのような楽器に対しても、信号が歪んだりすることなく、クリアな収音が可能になります。
マイクプリアンプについて
マイクプリアンプの役割は、ダイナミックマイクやコンデンサーマイクからの弱い信号を受け取り、それをスタジオモニターやDAWに取り込めるようなラインレベルにまで引き上げることです。
マイクプリアンプの理想はマイクで収音したサウンドを、できるだけクリアかつ正確に増幅することですが、製品によってはある程度のサウンドキャラクターを付けるように設計されたマイクプリアンプもいくつか存在します。
もしもマイクプリアンプで色付けされたキャラクターが、自分の理想とするトーンにマッチする場合、より高品質なサウンドをキャプチャすることが可能になります。
まとめ
ボーカルや楽器を録音するには、まずは適切なマイク選択が非常に重要となります。
声が低くて暗く印象の場合は、明るい周波数特性を持つマイクを使用するとクリアな音質になるかもしれません。逆に声が非常に明るくて細い印象の場合は、リボンマイクが合うかもしれません。
コンデンサーマイクは高価な製品もあるので、実際に録音して試すことは難しいので、製品ページの周波数特性を参考にしながら、最適なマイクを選択しましょう。
以上、「理想的な音質を手に入れる!最適なマイクの選ぶ為の完全ガイド」でした。