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「濁った」サウンドを避ける為に気を付けるべきこと

2023年12月24日

「濁った」サウンドを避ける為に気を付けるべきこと

トラックの数が増えてくるにつれて、鈍くて濁ったようなサウンドになってしまうことはありませんか?このような"マディー"なミックスは、熟練のプロデューサーでも起こり得るトラブルの一つですが、少しテクニックを加えるだけで解決することができます。

このような濁ったサウンドは、一般的に周波数スペクトル上の中低周波数範囲(約200〜500Hz)が飽和することで発生します。色んな楽器が重なりやすい帯域でもあり、正しく処理しないとダイナミックレンジが損なわれ、サウンド全体がくすんだ印象になってしまいます。

そこで今回は、濁ったサウンドを避けるためにミックスで気を付けるべきことをいくつかご紹介します。

サウンドが濁る原因は?

サウンドが濁っていると感じる場合は、まずは濁りの原因を理解することが重要です。

以下は、ミックス全体が濁って聞こえてしまう原因となっている可能性のあるものです。ミックス内の問題を素早く特定し、修正に多くの時間を費やす前に対処するのに役立ちます。

録音の品質が悪い

正しい録音プロセスはミキシングの基本となります。ボーカルマイクに近づきすぎた「近接効果」による中低音域のふくらみや、楽器のマイキングを適切に行えていない場合、最初から音が濁ってしまう可能性があります。各楽器の周波数応答を理解し、適切に配置することが重要です。

低中周波数の飽和

ミックスの多くは、中低域のサウンドが過剰であることが原因で濁ります。特に200~500Hzの範囲は多くの楽器が占領しやすいので注意が必要です。この帯域が過度に増加しすぎると、ミックスのダイナミクスと明瞭さが損なわれやすいです。

トラックが多すぎる

ミックス内に楽器をたくさん配置しすぎることで、楽器同士が競合し合いミックスが濁る可能性があります。各トラックには余裕をもって、ヘッドスペースを確保してダイナミクスに余白を作ることも大切です。

低音楽器をブーストし過ぎる

ミックスの低域をブーストしすぎることで濁りの原因となります。特にサブベースのような認識が難しい低音楽器は過剰にブーストしすぎてしまい、ミックス全体を濁してしまうことがよくあります。→ローエンドミックスの為の重要な5つのヒント

空間系エフェクトをかけすぎている

過剰なエフェクトの使用は位相の問題や濁りを引き起こす可能性があります。特に空間系エフェクトの使用は慎重なる必要があり、エフェクト成分にもハイパスフィルターをかけて不要な低音をカットする必要があります。

これらの要因を考慮して、ミックス内の濁りを特定し、対処することで、よりクリアでバランスの取れたサウンドを実現できるでしょう。

濁りを特定する方法

もしミックスが濁っていると感じる場合は、アレンジを損なわずに濁りを取り除く方法がいくつかあります。対処の前に、まずは濁りの発生源を特定することから始めましょう。

スペクトルアナライザーやグラフィックEQなどのツールを使用して、飛び出している周波数帯域に注目して、不要な周波数やエフェクトを取り除きます。こうすることで、ミックス全体の濁りが減少し、クリアな音源を維持することができます。

キックとベース、ベースとギター、ギターとピアノのように、ぶつかり合う楽器同士で一つずつチェックして、低音に限らず必要ないサウンドをカットすることで、明瞭感のあるトラックになります。

サウンドが濁ってしまった時の対処法

1. EQのハイパスフィルターをかける

濁りを除去するには、基本的にはEQを使用して問題となっている部分を取り除きます。低音成分が必要ない楽器には、中音域から高音域のトラックにローパスフィルターをかけることで全体がクリアになります。

ギターやピアノ、シンバル、スネア等、個別だとそれほど低音が出ていないので影響が無さそうに思えますが、色んなトラックの不要な低音が重なることで濁りの原因になってしまいます。

次に、ピークEQを使用して、ボーカルや楽器トラックの「ブーミー」な部分をカットすることも効果的です。ただし、※3dBを超えてしまうような場合は、EQでカットするよりももう一度正しくレコーディングする必要があるかもしれません。

ミックスの前にアレンジメントの段階で、ミックス内に不要な周波数や楽器の重なりが生じないようにバランスよく配置することも大切です。キックドラムとベース、ベースとギターのアレンジメントを調整するだけでも解消されることも多いです。

2. マルチバンドコンプレッサーで圧縮
マルチバンドコンプ

マルチバンドコンプレッサーを上手く使うことでEQよりも自然に低域を処理することが可能です。問題の周波数帯域に絞って適用することで、飛び出した低音にだけ反応して圧縮してくれるので、低音カットによる音痩せを最小限に抑えることができます。

効果範囲を400Hz以下の濁りの原因となる音域に設定して、レンジとスレッショルドのパラメーターで「どれぐらい飛び出した音をどれぐらいカットするか」を決めれば、あとは自動的に反応してゲイン圧縮してくれるという便利ツールです。

3. サイドチェインコンプレッション

サイドチェインによるコンプレッションは非常に強力なミキシングテクニックで、飽和状態のミックス内にスペースを確保することができる便利なテクニックです。

サイドチェインとは、エフェクトが特定のオーディオトラックによってトリガーされアクティブになるように設定することです。例えば、キックに反応してベースにかけたコンプレッサーをONにするという設定にすれば、キックが踏まれた瞬間にだけベースの音量をぐっと押し下げるといったことが可能になります。

EDMのようなジャンルでよく使用されてるテクニックですが、現在はほぼすべてのジャンルで使用されているテクニックなのでうまく活用しましょう。

サイドチェインコンプレッションの重要性とテクニックについて

4. 高域をブーストする

基本的には低音域をカットすると高音域が抜けてくるので、あまりEQをブースト目的で使用するのはおすすめしませんが、どうしてもこもった感じが取れない場合に有効な方法です。

高域を追加する方法として主に以下の3つがあります。

4-1. ハイシェルフでエアー感を追加

ハイシェルフを使用して6kHzから上をまとめてブーストすることで、エアー感が追加されて抜けが良くなります。

音源によってはあまり音が含まれていないこともありますが、試してみる価値はあります。

4-2. 1.5k~3kHzをブースト

人の耳は構造上、1.5k~3kHzの音が聴き取りやすく一番大きいと感じます。

猿の「キーキー」鳴く声がこの辺りなので、そのなごりだとも言われています。

ラウドネス曲線


どうしてもミックスの奥に引っ込んで聴こえる場合は、この辺りの周波数帯域をブーストすることで単純に音量を上げるよりも、より効果的に抜けの良いトラックになります。

4-3. サチュレーションで歪みを加える

ボーカルサチュレーション

微量な歪み成分を持つサチュレーションを加えることでトラックに自然なハーモニクス音を追加することができます。

倍音を追加することでハイエンドを強調し、よりパンチと煌びやかさを与えるのに役立ちます。

まとめ

濁ったミックスの原因は中低周波の飽和から発生していることが多く、ダイナミックレンジの損失やマディーミックスになってしまいます。

レコーディングの段階から注意して、トラック数の過多、低音楽器の過剰ブースト、空間系エフェクトが多くなりすぎないように注意しましょう。

もし濁りを感じた時には、EQのハイパスフィルターやピークEQを使用して不要な低音を取り除き、マルチバンドコンプレッサーやサイドチェインコンプレッションを活用することで、ミックス内の濁りが取れ、クリアでバランスの取れたサウンドを実現することができます。

以上、「「濁った」サウンドを避ける為にミックス時に気を付けるべきこと」でした。


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