ギターアンプのゲイン(歪み)を使って音作りする方法
ギターアンプのプリアンプ部を使用してディストーショントーンを作成することで、迫力のある太いサウンドを生み出すことが可能ですが、正しく使いこなすにはある程度の知識と経験が必要になります。
そこで今回は、アンプの歪みを使って音作りをするときに気を付けるべきことと、正しいサウンドメイク術についてお話します。
アンプ音作りの基礎
アンプで音作りをする場合、ギター本体、アンプ特性、シールド等の様々な要素によって最終的な出音が決定され、正しい設定方法は目的としているディストーションサウンドによって異なります。
いくつかの教則本やネット上で公開されているつまみの設定値をそのまま真似ても、ピックアップやスピーカー、収音するマイクの違いでサウンドは大きく異なるので、常に自分の耳を使って音を確認しながら音作りすることをおすすめします。
もちろん、初心者の頃からいきなり耳で判断して良い音を作るというのは中々ハードルの高い作業なので、つまみの設定値を参考程度にしながら「こういう音が出るんだ」と認識しながら試してみることで、耳もだんだん良くなっていきます。
→ギターアンプの音作りと正しい使い方
アンプを歪ませる方法
アンプを歪ませるには、主に次の2つの方法があります。
アンプの設定を変える
アンプには、ゲインやトーンなどのコントロールがあります。これらを調整することで、音を歪ませることができます。また、アンプによっては、特定のエフェクトを内蔵しているものもあります。
ギターエフェクターを使う
ギターエフェクターのオーバードライブやディストーション、ファズといった音を歪ませるための装置を使用することで、歪みを発生させることができます。
アンプタイプによる音の違い
アンプに搭載されている一般的なつまみによるコントロール部分と、使用しているアンプのタイプに応じてサウンドがどのように変化するのかを見てみましょう。
アンプにはざっくりと大きく分けて「真空管タイプ」と「トランジスタタイプ」の2種類に分けることができます。※最近だとモデリングタイプの含む3つのアンプタイプが主流です。
→ギターアンプの種類とその特性について
それぞれの特徴は以下の通り、
真空管タイプ
真空管を使用した増幅回路が組み込まれており、歪んだ音色を実現するには、音が飽和するまで音量を上げる必要があります。
粒の細かい自然なディストーション効果が得られることが特徴で、多くのロックギタリストに愛されており、歪み系ペダルを使わずにアンプの歪みを使っているギタリストも多いです。
通常はパワーアンプ部分のマスターボリュームとプリアンプ部分のGAIN(歪み量)とEQ(音質)コントロールがあります。
代表的な機種はMarshall JVM、Mesa/Boogie、Orange等、多くのスタックアンプで採用されています。
トランジスタタイプ
真空管と同じく一般的なアンプタイプとして広く普及しており、ギターの音色をトランジスタ回路によって増幅する仕組みになっています。「ソリッドステート」と呼ばれることもあります。
メンテナンスの必要が無く、故障しない限りはほぼ半永久的に使い続けることができます。歪み方の特徴としてはあるレベルを超えると急激に歪みだし、少し耳に刺さるような高音も出ます。
音作りの幅も広く、真空管よりも現代的なソリッドなサウンドが特徴です。
代表的な機種はRoland JC-120、BOSS KATANAシリーズ等、コンボタイプに多い印象です。
真空管は小さな音だと綺麗に鳴らない?
トランジスタタイプは歪みを作るために音量を上げる必要がないため、小さい音でも歪んだトーンを作るのが簡単です。
真空管タイプで美しい歪んだトーンを鳴らすにはある程度の音量が必要なため、場合によってはディストーションペダルを購入してアンプ前で歪みを作った方が良い場合もあります。
ただ、現在のほとんどのアンプでは「プリアンプ」部分のコントロールを使用して歪み量やボリュームを調整することができるので、低レベルでも歪みを作成することが可能です。
クリーン/ゲインチャンネル
ほとんどのアンプには、少なくとも2つの「チャンネル」が搭載されています。
1つは「クリーン」チャンネルで、もう1つはオーバードライブやディストーション、またはゲインチャンネルのいずれかの呼ばれ方がありますが、名称に関係なくすべて歪み効果を得ることができます。
アンプで歪みを得る場合にはオーバードライブ/ディストーション/ゲインチャンネルに設定します。 ディストーションエフェクターを使用して歪ませる場合は、クリーンチャンネルを使用することで、エフェクト本来の最高品質の歪みを得ることができます。
イコライザー(EQ)コントロール
トランジスタと真空管アンプの両方にEQコントロールが搭載されており、つまみを使って低音、中音、高音のトーンコントロールが可能です。
一部のアンプは超高音や超低音コントロールも付いていたりと、多少の違いはありますが、一般的な機能としては以下の通りです。
- Low:低音域をコントロールします。ギターのズンズンした部分。
- Middle:中音域をコントロールします。おいしい部分、トーンの奥行きを調節。
- High:高音域をコントロールします。ブーストすることで、トーンがより鮮明でシャープになります。
- Tone:これは、低音、中音、高音のコントロールを組み合わせたものです。コントロールを下げると低音が強調され、上げると高音が強調されます。
- Resonance:最終的な低音域の調節。レゾナンスを上げると重低音が増します。
- Presence:最終的な高音域の調節。プレゼンスコントロールを上げると、エアー感が付与されます。
アンプを使ったサウンドメイク方法
アンプを使ってディストーショントーンを鳴らす為の具体的な手順です。
- ギター本体のボリュームとトーンコントロールを最大にします。
- アンプのマスターボリュームを適切な音量に合わせます。
- EQコントロールをとりあえず12時方向に合わせておきます。
- ゲインコントロールを徐々に上げて、サウンドの変化に耳を傾けます。
十分なレベルのディストーションが得られるまで上げますが、歪ませすぎて音の芯が無くなったり、コード感が損なわれない程度で止めます。 - 再度マスターボリュームで音量を整えます。
- 必要に応じてMiddleコントロールを調整します。アンサンブルの中でのギターのポジションを決定します。
- 低音と高音コントロールを微調整して、目的の音質になるように調節します。片方を絞ると相対的にもう片方の音域が飛び出してくるので、バランスよく調節します。
アンプ設定の例
いくつかのアンプ設定の例をご紹介します。
冒頭にも言った通り、アンプ以外の様々な要素を通過して最終的な出音は決まるので、設定例はあくまで参考程度にして、実際には自分の耳を使って最適な音質を探してみてください。
バッキングギター
ロックギターでは「ドンシャリ」サウンドと呼ばれるミドルを削ったセッティングがよく使われます。
ボーカルと被る中音域を削ることで、一歩後ろに下がった伴奏ギターとしての役割を果たします。
リードギター
ミドルとハイを強調することで抜けの良いリードサウンドになります。
ギターソロのようなギターに注目を集めたい場合にはミドルの量をさらにブーストしてコントロールします。
ヘビーメタルリフ
激しく歪ませる為、倍音が膨らみがちになるので、高音の量に気を付けます。
必要に応じてブリッジミュートの刻みの「ズンズン」とした低音を強調することでメタルらしいサウンドになります。
カッティングギター
ピッキングのアタック感と音の粒立ちを強調したいので、低音を削ってハイミッド周辺をブーストします。
音の解像度が無くならない程度に歪み量もコントロールしましょう。
まとめ
アンプのゲイン(歪み)を使って音作りする方法についてご紹介しました。
ゲインつまみやEQコントロールを調節するときは一度に1つずつ調節するようにして、サウンドの変化を聴くことを忘れないでください。
また、アンプでサウンドメイクする場合であっても、よりプロフェッショナルなディストーションサウンドを実現するには、追加でコンプレッサーやディレイ等の購入を検討してみてください。
以上、「アンプのゲイン(歪み)を使って音作りする方法」でした。