
リバーブの種類とその効果について
制作において、非常に重要なポジションを担うエフェクトである「リバーブ」
リバーブとは空間で起こる「残響音」のことで、カラオケのエコーを想像してもらうと分かりやすいと思います。
自然界で残響音がない音は存在せず、普段生活しているときに聴こえる音には、必ずどこかに跳ね返った音も一緒に混ざって聴こえています。
デジタル上の音源サンプルやシンセサイザーのみで作られた音のような、残響音が無い状態だと違和感を感じてしまうので、それを避ける為にもリバーブの付加は重要になってきます。
一言でリバーブと言っても、ルーム、ホール、プレート等、種類やそれによるリバーブの効果も様々です。
室内における残響は次の2つの部分から成り立っているといわれている
・ 初期反射 (early reflection)
室内では、直接音が聞こえたあと数 ms から 100 ms くらいの間に、条件によっては、壁、天井、床などからの数十個の反射を他の音から分離して聞くことができる。これが初期反射である。部屋の形状が直方体であれば、 1 回反射は 6 個だけだが、より複雑な形状・または家具などがある部屋では反射音の数が増え、また壁などで複数回反射した音も聞こえる。初期反射は直接音とまとめて、ひとつの流れの音として認知されるという
・ 後期残響 (late reverberation)
直接音が聞こえてから 150 ms 以上過ぎたころには、音は多数回反射し、反射音の数も増えているため、もはや個々の音を区別して聞くことはできない。また、音は等角反射するだけでなく、壁・天井などでも散乱されるため、残響の構造はさらに複雑になる。これらによって構成されるのが、後期残響である。このような後期の残響は、方向・位相がランダムで指数関数的に減衰する音によってモデル化される。後期残響は直接音とは異なる系統の音として認知されるという
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
これらの違いにより、リバーブの種類によって使用用途も変わってくるので、リバーブをかけるトラックに対して最適なリバーブを使うことがミックス品質向上に繋がります。
それでは、リバーブの種類とその効果についてお話します。
Room Reverb

ルームリバーブは寝室やリビングぐらいの広さの空間で起こる残響音です。
使用頻度は一番高く、普段生活している中でも、一番よく耳にするであろう残響音なので馴染みやすいです。
Decay(音の減衰)は短くて初期反射は大きいタイプの密度の濃いリバーブなので、EQ等での低音処理は必須です。
ドラムや弦楽器との相性が良いです。
Chamber Reverb

スタジオの音響室のような残響を録音するための空間です。
ルームと似てDecayは短く、初期反射の大きめのサウンドですが、非常にクリアで整ったリバーブ成分が特徴で、濁りの少ない明るい音色がします。
ボーカルやリードギター等のトラック内の主役的なポジションに適応されることが多いですが、癖が少ないので万能型のリバーブともいえます。
Hall Reverb

ホールリバーブはコンサートホールのような音響設備のある程度整った、比較的大きい空間の残響音です。
Dacayや初期反射は遅く、やや遅れてから密度の濃いリバーブ本体が跳ね返ってくるイメージです。
壮大な雰囲気の楽曲やオーケストラサウンドにはピッタリなリバーブです。
他にもソロピアノやシンガーソングライターの声などのゆったりとしたバラード調の楽曲にもよく使用されています。
Cathedral Reverb

大聖堂のような残響音がこちらのカセドラルリバーブです。
ホールに似ていますがリバーブテールが長く、ホールよりもウェットな質感を持つのが特徴です。
音の反射率が高く、正方形や長方形の形をしていることでDecayは長くなりやすいです。
ハイテンポな曲を避け、しっとりとしたスローテンポな楽曲やメロディックな楽曲との相性が良いです。
Plate Reverb

こちらのプレートリバーブはメカニカルリバーブと呼ばれ、今までの自然界の残響とは違い、薄い大きな鉄板を振動させて作られています。
1957年に開発されたElektro Mess Technik社の「EMT-140」が有名で、 古い装置ではありますが、現在でもこのシステムは多く残っています。
初期反射が大きく、音の立ち上がりも早いのが特徴で、主にボーカル用のエフェクトとして利用されています。
Spring Reverb

スプリングリバーブもプレートと同じくメカニカルリバーブの一種で、こちらは金属製のバネを使用した装置です。
暗く金属的な音質が特徴で、主にギターアンプに多く使われています。
ノイズを拾いやすく、 バネで振動を伝えるため特有の共振特性があり、正直あまり良い音とはいえませんが、現在ではこの「バネっぽさ」が独特のサウンドキャラクターとして多く使われいます。
Convolution Reverb

コンボリューションリバーブはデジタルリバーブの一種で、IR(インパルスレスポンス)データを用いて残響音を再現するタイプのエフェクトです。
音響空間をサンプルとして実際に記録し、分析して周波数プロファイルを作成するのでいわゆる「空間シミュレーター」ともいえる装置です。
とあるコンサートホールと同じ音の響きにするとか、あのレコーディングスタジオと同じ音の響きにするといったような、自由な効果を得られるのが大きなメリットです。
Gated Reverb

ゲートリバーブは長いDecayを持つこと以外はほとんどルームリバーブと似ています。
特徴としては自然減衰で音量がゼロになる前に、テールを遮断するノイズゲートを通過させることで、リバーブによる音の被りや濁りを最小限に減らすことが可能になります。
スネアやドラムキットのような楽器に最適で、次の音が鳴る手前でリバーブを消すことで、ドライサウンドの邪魔をすることなく、深いリバーブをかけることも可能です。
以上、リバーブの種類とその効果についてでした。