DTM

サイドチェインコンプレッションの重要性とテクニックについて

2020年5月20日

ミキサーの画像


サイドチェインコンプレッションの重要性とテクニックについて


サイドチェインによるコンプレッションは非常に強力なミキシングテクニックで、飽和状態のミックス内にスペースを確保することができる便利なツールです。

キックが鳴った瞬間だけベースを圧縮したり、ボーカルが鳴っている間だけギターの音量を少しだけ下げるといったことが簡単にできます。


DTMのようなデジタル処理の音楽のほぼすべてのトラックに使われており、プロのような音源を手に入れたいのなら必ず実行する必要があります。

今回はサイドチェインを使ったいくつかのテクニックをご紹介します。


サイドチェインとは?


サイドチェインとは、エフェクトが特定のオーディオトラックによってトリガーされアクティブになるように設定することです。

分かりやすい例として、ラジオDJがBGMが流れている状態で話しているところを想像してみてください。

ラジオの画像


DJの話し声に反応してリミッターが働き、BGMの音量が下がり会話の邪魔になりません。
会話が終わるとBGMの音量がもとに戻ることで再び音楽が流れ始めます。

このように特定の音源に反応してコンプレッサーやリミッターをONにして、鳴りやんだところで再びOFFに戻すといったようなことを自動で行ってくれるのがサイドチェインです。

サイドチェインの画像


この原理を利用して一般的な音楽プロダクションで、EDMやベースミュージックのようなキックとベース両方に重要な役割があるジャンルでは、ベースにサイドチェインをかけ、キックをトリガーさせます。

そうすることでキックが踏まれた瞬間の一瞬だけベースの音量をグッと下げることで、ローエンドの濁りを低減して、両トラックのエネルギーとパンチを常に最大限に鳴らすことが可能となります。


このような圧縮のことを一般的に「ダッキング」と言います。


コンプレッサーをサイドチェインする方法


細かい手順は使用するDAWによって多少異なりますが、設定方法は比較的簡単です。

Ableton、Cubase、Logic、FL Studioすべてにサイドチェーン機能をもった純正のコンプレッサーが標準で付属しているかと思います。

もし無い場合には、新しくサイドチェーンコンプレッサーを導入してみてください。

FL Studioの場合


今回はFL Studioを使って解説していきます。


まずはトリガーしたいトラックから圧縮したいトラックへのサイドチェイン信号を流します。

サイドチェインの画像


圧縮のきっかけとなる(キック)

圧縮されるトラック(ベース)

にサイドチェインを流します。


続いてベーストラックにサイドチェイン機能付きのコンプレッサーを挿します。

サイドチェインの画像


COMPを押してSIDECHAINを右クリックしてトリガーとなるトラックを選択します。

サイドチェインの画像


これでサイドチェインの設定は完了です。

どのDAWでも基本的な設定の流れは同じだと思います。


続いてコンプのパラメーター値です。


オレンジ枠内の左から順に

・THRES
圧縮する量を決めます。

・KNEE
使わないです。

・RATIO
レシオは最大にしてください。

・ATT
アタックは最速です。

・REL
リリースで圧縮が戻るタイミングを調節します。
BPMによって値は変わってくるので、結構重要。


スレッショルドとリリースでダッキングの量とタイミングを決めます。

リリースはキックの長さに合わせるか、BPMの4分音符の長さに合わせるのが一般的です。

・リリースタイムの計算方法

60,000 / BPM =ミリ秒単位の4分音符。
→トラックのBPMが120の場合、4分音符は500ms(60,000 / 120 = 500)です。
→トラックのBPMが200の場合、4分音符は300ms(60,000 / 200 = 300)です。


以下にダッキング無しと有りのトラックを用意したので聴き比べてみてください。

ダッキング無し
ダッキング有り


分かりやすいように多めにダッキングをかけてます。

キックが踏まれたタイミングでベースのボリュームが下がっているのが分かるかと思います。

※サイドチェインは慣れるまでは設定が少し複雑なので、手軽にダッキング効果を得たい方は「Duck」の導入をおすすめします。

海外の大手プラグインサイトでレビュー数800以上で満点評価を得ているプラグインで非常に便利なツールです。



ボーカルスペースの為のサイドチェイン


ボーカルに対してのサイドチェインコンプレッションもよく使われるテクニックの一つです。

主にギターやシンセ、ピアノ等のバッキング系の楽器に対して使用されます。


設定方法は同じなので省略します。
ヴォーカルからバッキング楽器にサイドチェインを流します。

サイドチェインの画像


ボーカルサイドチェインの場合はレシオ値を2:1~3:1の浅めにして、-2~3dBの圧縮となるように設定します。

やりすぎるとバッキングが不安定になり、かなり気持ち悪いので気を付けましょう。
耳で変化が分からないぐらいの圧縮量にするのがコツです。


特定の周波数のみを圧縮


トラック単位の圧縮ではなく、EQを使って特定の周波数のみにコンプレッションをかける高度なサイドチェインテクニックです。
(EQなので厳密には圧縮ではないのですが。)


先ほどのボーカルサイドチェインでいうと、ボーカルに対してマスキング(音被り)している部分だけに焦点を当てて圧縮すればさらに、効率良くサイドチェイン効果を発揮することができます。

これはキックとベースのサイドチェインに関しても同じことが言えます。


FL Studioの場合「Fruity peak Controller」と「Fruity parametric EQ 2」を使用します。

まずキックの一番おいしい周波数を「スペクトラムアナライザー」で調べます。

キックの周波数の画像


今回使っているキックサンプルは65Hzにピークがあることを確認します。


続いてキックのトラックにFruity peak Controllerを挿します。

キックの画像


ベーストラックにFruity parametric EQ 2を挿して、トークンをキックのピークである65Hzに合わせます。

EQの画像


2番のピンク色のトークンを使用しているので、右側の左から2番目のピンクのところを右クリックして、「Link to Controller」を選択。

Link to controllerの画像


「Peak ctrl - Peak」→「Accept」の順にクリック。

Remote control settingの画像


これで設定は完了です。

あとはFruity peak Controllerのパラメーターを調節します。

peak controllerの画像

・BASE
50%に設定します。

・VOL
カットする量

・TENSION
使わないです。

・DECAY
カットしたあとにどれぐらいの時間をかけて元に戻るか。
コンプレッサーのリリースと同じです。


これでキックが踏まれた瞬間にだけ、ベースの65Hz周辺だけをカットできます。

ローエンドがスッキリして、ローミッドの150~250Hzぐらいのベースのおいしい帯域は常に鳴らした状態のままにできます。

EQの画像


色んな楽器に応用が効くテクニックなので、色々試してみてくださいね。


以上、サイドチェインコンプレッションの重要性とテクニックについてでした。


YouTubeチャンネルで実際にサイドチェインのやり方を実践しているので、さらに詳しく知りたい方はご覧ください。



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