Spotifyがオーディオデータを自動でMIDI変換するAI搭載ツール「Basic Pitch」をリリース
Spotifyは「Basic Pitch」と呼ばれるオープンソースのAIを活用したツールをリリースしました。
Basic Pitchは指定したオーディオデータを数秒でMIDIへ変換してくれるコンバーターとして機能します。ユーザーはサイト内で手持ちの音楽ファイルをアップロードすることで、ニューラルネットワークを介したAI機械学習を利用して、瞬時にMIDIに変換します。
出力されるMIDIは、一般的な電子機器で使用される音楽デジタル標準規格なので、そのままDAWのピアノロールにドロップすることで別の楽器に変換したり、編集、修正を加えることが可能になります。
Spotifyは「録音したアイデアを簡単にMIDIに変換したいアーティストや、プロデューサー向けに構築されたものです」と述べています。→Spotify Basic Pitch 公式ページ
Basic Pitchの特徴
オーディオからMIDIへの変換機能はすでにいくつか存在しますが、SpotifyによるとBasic Pitchの音符検出システムは既存の製品よりも優れているとのこと。
- 複数の音や楽器に対応
既存のMIDI変換ツールは、単音のみに制限されていたり、楽器の種類も限定されていることがほとんどですが、Basic Pitchでは複数の音や楽器の種類関係なく変換してくれます。 - ピッチベンド検出
実際のオーディオデータには歌声のビブラートやギターのチョーキング、スライドのような僅かな音程の変化による繊細な表現が含まれていますが、従来のMIDI変換ツールの場合はこれらのピッチベンドが反映されないことがほとんどです。しかし、Basic Pitchでは細かな音程変化も再現して出力してくれます。 - 高速変換
実際に使用するとわかりますが、既存のソフトに比べて非常に速い速度で変換してくれます。Basic PitchはMIDIへ変換するときにPCへの負担が少なく、高速変換が可能になっています。 - エディター付属
オーディオをMIDIノートに変換後に、Basic Pitch搭載の専用エディターを使うことで、音符の分割、音程の幅、音符の長さ、テンポ等、いくつかのパラメーターを制御することが可能です。
実際に使ってみた
筆者も「ギターソロに厚みを出したいときに別の楽器でレイヤーする」ということをよくやるので、自分でMIDIを手打ちしなくても、実際にBasic Pitchで自動MIDI出力されたものが使えるのかやってみました。
まずは、メインのギターフレーズのみを書きだしたデータを、Basic Pitchの指定のエリアにドロップします。
すると、2秒ほどでデータを解析して、MIDIデータが出力されます。
※ちなみに右上の「RECORD」ボタンを使えば、音声をマイク入力することができるので、歌声をその場でMIDIデータで出力する。といったことも簡単にできます。
次にダウンロードしたMIDIデータをDAW内のピアノロールにドロップします。
ベロシティ値まで出力されているので、音の強弱も判別して変換してくれているんですね。
実際に変換したMIDIデータをDAW付属のピアノソフトで鳴らしたものがこちら。
歪んだエレキギターなので、難しいかなとは思いましたが、中々の再現度です。
少し細かいところを手動で修正する必要はありそうですが、自分でゼロから手打ちするよりかは全然スピーディーだと思います。
Basic Pitchの活用方法
Basic Pitchは音楽クリエイター向けに開発したツールだとSpotifyは述べています。
Basic Pitchの実践的な使い方としては、出先で思いついたアイデアを譜面におこす代わりにMIDIで保存しておいたり、既存の楽曲をMIDI変換してリミックスしたりと、色々な使い方が思い浮かびます。
また、ボーカルリムーバーで抜き出したボーカルメロディーをMIDI化して、違う楽器で鳴らしてみたり、ボコーダー機能を使って機械的なハモりパートを作成したりと、アイディア次第ではこれまで手間がかかっていた作業も、簡単に素早く行うことができるようになります。
既存の変換サービスよりも機能面で向上しているので、音楽クリエイターの方は実験的に色々試してみてはいかがでしょうか。
Basic Pitch
https://basicpitch.spotify.com/
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