【DTM】ヘッドホンミックスの落とし穴!単一のモニターでミキシング作業する場合の注意点について
DTMを使った音楽制作をしているとき、特にマンション住まいや深夜に作曲作業を行っている場合には、どうしてもモニター環境をヘッドホンだけに頼ることになってしまいます。
ヘッドホンのみを使用してミキシング作業を行う際には、単一のモニターでの作業によって発生する不具合に注意する必要があります。
ヘッドホンは、音楽の細部や微妙なバランスを聴き取るのに便利ですが、空間的な情報や各音の配置などが正確に行えなくなる可能性があります。
そこで今回は、ヘッドホン等の単一のモニターのみでミキシングを行う場合の注意点についてご紹介します。
単一のモニター環境を避けるべき理由は?
通常、マスタリングと呼ばれるミックスの最終工程では、様々なリスニング環境での最適な音質を提供するために修正が行われます。自分の音楽がスマホやイヤホン、電車の中、ラジオ、クラブなど、異なる場所や環境で再生されることを考慮し、それに合わせて調整を行う必要があります。
例えば、ヘッドホンだけでミックスを行うと、スマホでの再生では低音が弱く聞こえたり、大きなスピーカーで再生した際にステレオ感に不自然さを感じることがあります。そのため、作曲家自身が様々なモニター環境で音楽を聴き比べることが最も理想的です。
リスナーのリスニング環境を想定し、自身も異なるモニター環境で確認することで、より正確なマスタリングが可能となります。
ヘッドホンしか持っていない場合は?
ヘッドホンだけでミックス作業を行う際には、最低限モニター用のヘッドホンを使用するようにしましょう。
一般的なリスニング用のヘッドホンよりも、低域から中域、高域に至るまでのフラットな周波数特性や高い解像度を持ち、原音に忠実な音を鳴らせることができるヘッドホンです。
エンジニアやプロデューサー向けのプロユースヘッドホンとなっており、細部の音まで鮮明に聴き分けることが可能となっています。
→【2023年最新】DTMに最適なミックス用ヘッドホンおすすめ10選
ステレオイメージの制限
ステレオイメージの制限とは、ヘッドホンミックスのように単一のモニターで行う際に生じる、音像の広がりや位置の正確な判断が難しくなる現象を指します。
ヘッドホンは、左右のチャンネルをそれぞれの耳に直接送るため、音源が頭の中央に集中して聴こえる傾向があります。これにより、ステレオイメージの広がりや位置の感覚が制限され、音が中央に寄りやすくなります。
例えば、ステレオで録音された楽曲の場合、楽器やボーカルが左右に広がっているはずですが、ヘッドホンで聴いた場合には、中央に集まっているように感じることがあり、広がりや立体感が損なわれることがあります。
これによって、パンニングやスペーシャリティ(立体感)の微調整が難しくなってしまい、空間表現の正確性に影響を与える可能性があります。
これを回避するためには、ヘッドホンだけでなくモニタースピーカーや他の再生機器でも確認することが重要です。モニタースピーカーを正しく設置して、広がりや定位感を確認することで、ステレオイメージをより正確に把握することができます。
→モニタースピーカーの正しい配置方法【DTM】
音質の違い
ヘッドホンの場合、モデルタイプやブランドによって、周波数応答特性が異なる場合があります。
例えば、密閉型のヘッドホンであれば、他のリスニング機器よりも低音が強調されて聴こえたりと、それ以外にもヘッドホンのタイプによって得意な音質は変化します。これによって一部の周波数帯域が強調されたり、逆に弱められたりすることがあります。
一般的にはスピーカーよりも、ヘッドホンの方が低音と高音がよく聴こえるとされています。つまり、ヘッドホンのみでミキシングを行った場合は、低音と高音が小さくなってしまうことがあります。
ベースミュージックのミキシングの場合
最近の808ベースなど、非常に低い周波数帯域を扱うジャンルでは、ヘッドホンを基準にミックスすると一般的なリスニング機器では迫力に欠ける場合があります。このような場合によく用いられる解決策として、倍音をブーストする方法があります。
倍音を増幅するために、サチュレーションなどのドライブエフェクトを使用することで、どの機器でも再生可能な周波数帯域を強調することができます。
この手法により、低音の存在感や迫力を確保しつつ、一般的な再生機器でもバランスの良いサウンドを実現することができます。
→ローエンドミックスの為の重要な5つのヒント
パンニングの違い
スピーカーであれば、出力された音というのは扇形に広がっていくので、極端にハードパンニング(L or Rに100)されたサウンドでも、壁に反射されたりして左右の音が混ざり合って耳に入ってきます。
しかし、ヘッドホンでは左耳には左チャンネルのみ、右耳には右チャンネルのみがダイレクトに入ってくるので、ハードパンニングされたサウンドは片方の耳からしか聴こえないので不自然に聴こえてしまうことがあります。
片方にハードパンニングされた、いわゆる「片耳モノラル」状態の音は、長時間聴き続けると耳が疲れる原因にもなり得ます。最も簡単な回避方法としてはLRに100パンニングするのではなく、85~90ぐらいにするということです。
スピーカーだとこの違いはあまり感じられませんが、ヘッドホンやイヤホンリスニングする場合には大きな効果を発揮します。
→ステレオ音像を大きく広げる為のミキシングテクニック
まとめ
ヘッドホンのみを使用してミキシング作業を行う際、単一のモニターでの作業には注意が必要です。
ヘッドホンのメリットもあるものの、ステレオイメージや空間的な情報の制限、低音の聞こえ方などの問題が生じる可能性があります。
可能であれば、ヘッドホン+スピーカーのような複数のリスニング機器を使ってミックスをすることで、どんな環境でもバランスの取れた音に近づけることができます。
以上、「【DTM】ヘッドホンミックスの落とし穴!単一のモニターでミキシング作業する場合の注意点について」でした。