
知らずにやってしまっている…ミックス中にやってはいけない7つの間違い【DTM】
ミックス作業は、音楽制作において楽曲のクオリティを決定づける非常に重要な工程です。しかし、正しい知識がないまま作業を行うと、いくつかの間違いを犯してしまうことがあります。
例えば、ミックスの過剰処理やエフェクトのかけすぎ、マスタリングにおける過剰な音圧上げ等、さまざまな要因が考えられます。
これらの間違いに気付けないまま作業を進めると、結果的に音質を悪化させたり、リスナーに意図が伝わらない品質の低い楽曲になってしまう可能性があります。
今回は、特に初心者が陥りがちな、ミックス中にやってはいけない7つの間違いについてご紹介します。
1. 音圧の上げ過ぎ

ミックス&マスタリングの大きな間違いの一つとして、「音量を上げすぎること」があります。
自分の楽曲をいかに大きくパワフルに聞こえるようにするかは、音楽制作において重要なテーマの1つですが、音圧を上げ過ぎることで音質を損ね、ミックスバランスが大きく崩れる原因にもなります。
人の耳は大きい音ほど「良い音」と認識する傾向にあるので、実際はリミッティングのかけ過ぎでミックスが破綻していても、音圧を上げるだけで簡単に迫力のあるカッコいいサウンドと錯覚してしまいます。
かつてのCD時代では、市販音源の音量を限界ギリギリまで上げるために、リミッターやマキシマイザーでパツパツになるまでブーストされた「海苔波形音源」が主流でした。

しかし、現在のYouTubeやSpotify等のストリーミング配信では「ラウドネスノーマライゼーション」が働くので、どんなに過剰に音量を上げても、サービスごとに定められた一定の音量まで自動的に下げられてしまいます。
音量を上げすぎて失われたダイナミクス(音の強弱)は回復しないので、結果的に他の楽曲より迫力のない、のっぺりした音に聞こえてしまいます。各ストリーミングサービスが推奨する最適な音圧値に合わせることが、現代では非常に重要です。
2. エフェクトをかけすぎる

各種エフェクトプラグインは、音の質感や空間表現を豊かにする上で欠かせない要素です。しかし、適切な量や種類を選ばないと、音楽のクオリティを逆に下げてしまうことがあります。
以下は、エフェクトを挿しすぎることによる代表的なデメリットです。
- 音の解像度が低下する
ディレイやリバーブのような空間系エフェクトを掛けすぎると、音の輪郭がぼやけてしまい、各楽器の細かいニュアンスや立体感が失われてしまうことがあります。 - 音が不自然になる
EQを使って加工しすぎると位相トラブルが生じたり、コンプレッサーで過剰に圧縮しすぎると、音が平坦になってしまいダイナミクスが失われてしまいます。
そもそもの録音や打ち込みの段階で元の音が良くなければ、いくら高価なエフェクトプラグインを使って加工したところで「根本的な音質向上」は見込めません。
ミックスはあくまで各トラックの音を整理整頓し、聴きやすくする作業です。元の音が良ければ、必ずしもすべてのトラックにEQやコンプレッサーをかける必要はないのです。
3. 低音が飽和している

特に初心者のミックスで起こりがちなのが「低音の飽和」です。各楽器の不必要な低音域をカットすることは非常に重要で、この作業を怠るとミックス全体が濁り、「泥ミックス」の原因になります。
ローエンドの処理は曲全体の土台を作る上で非常に重要な役割を担っています。しかし、ボーカルやシンセ、ギターなど、低音域がそれほど重要でない楽器にも実は多くの低音成分が含まれています。これらが積み重なることで、キックやベースが埋もれてしまうのです。
「なんだか音がこもる」「音の抜けが悪い」と感じたら、まず高音をブーストするのではなく、不要な低音をカットすることを試してみてください。それだけで驚くほどミックスが見違えることがあります。
4. パンニングを誤った方法で使う
パンニングは、ステレオフィールド内で音源の位置を左右に配置することで、音像を広げたり、楽器同士の棲み分けを良くするための重要なツールです。
しかし、すべての楽器をやみくもに左右へ大きく広げると、かえって中心がスカスカになり、まとまりのない不安定なミックスになってしまいます。
原則として、楽曲の土台となる低音楽器(キック、サブベースなど)や、主役となるボーカルやリード楽器は中央に配置し、中高音域の楽器になるにつれて左右に広げていく「逆三角形」の形が理想的なミックスとされています。

例えばキックとサブベースをセンターに置き、ハットやシンバル、シンセサイザーの高域部分などを大きく広げるといった具合です。
また、重要度の高いトラック(ボーカル、キック、ベース、ギターソロ等)は、なるべく中央に配置することで、リスナーの注意を引きつけ、楽曲のメッセージをストレートに伝えることができます。
5. ソロ再生に頼りすぎる

特定のトラックの音作りをする際、ソロボタンでその楽器だけを聴きながら作業するのは非常に効率的です。しかし、その状態だけで判断を完結させてしまうのは大きな間違いです。
なぜなら、ミックスとは、すべての楽器が同時に鳴った時に最高のバランスで聴こえるように調整する作業だからです。ソロで聴くと完璧に聞こえるギターの音が、ミックス全体で聴くとボーカルとぶつかって邪魔に感じたり、逆に他の楽器に埋もれて全く聴こえなくなってしまう、といったことは頻繁に起こります。
EQで特定の帯域を大胆にカットしたり、コンプレッサーで音を潰したりする処理は、単体で聴くと不自然に聞こえるかもしれません。しかし、それが他の楽器との棲み分けを良くし、結果的に全体のサウンドを向上させることが多々あります。
ソロでの音作りはあくまで下準備と考え、最終的な判断は必ず他の楽器と一緒に鳴らしながら行う癖をつけましょう。
6. リファレンストラックを聴かない

ミックス作業中に、自分の好きなアーティストの楽曲や、目指しているサウンドに近いプロの楽曲を「リファレンストラック(参照曲)」として用意していますか?
特に初心者の頃は、リファレンスを聴かずに自分の感覚だけを頼りにミックスを進めると、客観性を失い、独りよがりなサウンドバランスに陥りがちです。例えば、低音の量感は適切か、ボーカルはどれくらい前に出ているか、全体的な明るさはどうか、といった点をリファレンストラックと比較することで、自分のミックスの方向性が正しいかどうかを常に確認できます。
DAWのプロジェクトにリファレンストラックを読み込み、自分のミックスと同じくらいの音量に調整して、頻繁に切り替えながら聴き比べてみましょう。これにより、自分のミックスに足りない要素や、逆に行き過ぎている処理に気づくことができます。
7. 長時間作業する

ミックスにおいて耳を使った判断は不可欠ですが、人間の聴覚は非常に疲れやすいという性質を持っています。長時間同じ音を大音量で聴き続けていると、耳がその音に慣れてしまい、正常な判断ができなくなります。
クラブやライブハウスに入った直後はとても大きな音に感じますが、しばらくするとその音量に慣れてしまいますよね。これと同じ現象が、ミキシング中にも起こっています。これを「聴覚疲労」と呼びます。
聴覚疲労に陥ると、知らず知らずのうちに高音域を強調しすぎたり、必要な音量を判断できなくなったりと、バランスがどんどん偏ってしまいます。
作業が長時間に及ぶ場合は、最低でも1時間に1回は10分程度の休憩を挟み、耳をリセットするようにしましょう。また、「スペクトラムアナライザー」を使って聴覚だけでなく視覚でも音のバランスを確認する方法も、客観的な判断を助けてくれます。

そして、最終的なミックスバランスの確認は、一晩寝るなどして十分に時間を置いてから行うのが理想です。フレッシュな耳で聴き直すことで、それまで気づかなかった問題点を発見することができます。
まとめ
ミックス中にやってはいけない7つの間違いは以下の通りです。
- 音圧の上げ過ぎ
- エフェクトをかけすぎる
- 低音が飽和している
- パンニングを誤った方法で使う
- ソロ再生に頼りすぎる
- リファレンストラックを聴かない
- 長時間作業する
これらの内容は、どれも結果的に音質を悪化させ、楽曲のクオリティを下げてしまう可能性のあるものです。
もちろん、制作している音楽ジャンルやスタイルによってミックス&マスタリングの正解は一つではありません。しかし、まずはこれらの基本的な間違いを避けることが、理想のサウンドへの近道となります。
以上、「【DTM】ミックス中にやってはいけない7つの間違い」でした。