【音のモヤモヤを解消!】EQハイパスフィルターでクリアなミックスを実現する為の5つポイント
ハイパスフィルターは、EQ(イコライザー)で使われる形状の一つで、設定した周波数より低い音をまとめてカットするツールです。不要な低域をカットすることで、ローエンドの濁りをクリーンアップし、楽器同士の分離を明確にするなど、ミックス全体の品質を格段に向上させることができます。
ただし、ハイパスフィルターをかけすぎると、音の厚みや音の芯が無くなってしまう可能性があります。楽器ごとの適切な周波数設定とカット量を見つけることが重要となります。
今回は、ハイパスフィルターの効果的な使用方法とその注意点、そして具体的な使用例についてご紹介します。
1. 不要なローエンドを取り除く
最も基本的な使い方として不要なローエンドを取り除くという役割があります。例えば、バスドラムやベースなどの低音楽器にハイパスフィルターを適用することで、不要な低域成分を除去したり、それぞれを住み分けすることで、よりタイトでパンチのあるサウンドを実現できます。
また、ボーカルやギターなどの楽器にもハイパスフィルターを適用することで、他の楽器との干渉を減らし、よりクリアで存在感のあるサウンドにすることができます。→EQ(イコライザー)を使って不要な音をカットしよう
ほとんどの音源ソース、特にマイク録りした音源には80~100Hz以下に不要なノイズが含まれている可能性が高いです。メインとなる楽器サウンドが鳴っていて気付かないことが多く、慎重に耳を使って聴き取らないと見落とされがちなポイントでもあります。
さらに20~40Hzのサブベース領域に到達すると、聴覚的にも聴き取れる限界の音域になるため、ノイズや不要な音の塊に気付けなくて、多くのヘッドルームが犠牲になってしまっていることもあるので注意が必要です。
2. リード楽器の存在感を高める
ボーカルトラックやギターソロなど、楽曲内の主役となる要素がクリアに聴こえていることは、ミックスにおいて最も重要なポイントの一つです。
例えばボーカルトラックの場合、ミックス内の中心ポジションに配置するためには、ハイパスフィルターで約100Hz以下の周波数帯域の濁りを除去して、他の低音楽器と干渉を回避します。しかし、男性ボーカルや低音域に特徴がある楽器の場合、必要な低域までカットしてしまうと、そのトラックの迫力が損なわれる可能性があります。
トラックごとのサウンドキャラクターに合わせて、ハイパスフィルターのカットオフ周波数を慎重に調整し、不要なノイズ要素だけを取り除くようにしましょう。
3. 低音楽器のスペースを確保する
ミキシングにおいて、キックとベースが持つ低音は楽曲全体にインパクトを与える非常に重要な要素の一つです。しかし、キックやベースから迫力感じられない場合は、他の楽器が持つ低音成分が邪魔をしている可能性があります。
問題となるのは、主に150〜350Hzのローミッド帯域です。ここは音楽に重厚さとパワーを与えるために重要な音域ですが、キックやベースの中高域成分に加えて、ギター、シンセサイザー、ピアノなどの低域成分もここに集中しやすく、飽和することでマディーミックス(濁った音源)の原因になります。
クリアでエネルギッシュな低音の厚みを手に入れたい場合は、個々の楽器のローミッド成分を削り取り、キックとベースのためのスペースを作る必要があります。
4. マスタリング時のハイパスフィルター
最終的なマスタリング時にも、ハイパスフィルターはよくに利用されます。一般的には20~30Hz周辺からカットすることが多いですが、この"どこからハイパスフィルターをかけるか"ということに関しては、エンジニアやクリエイターコミュニティ内で常に議論が交わされています。
「人間の耳は20Hz以下は聴き取れないため、カットすべきだ」という意見もあれば、「普段のリスニング環境では聴こえないが、クラブやライブハウスのような大音量再生環境では重要な帯域だ」という意見もあり、マスタリング時のハイパスフィルターの使用には様々な見解が存在します。
EDMや808ベースを使用するヒップホップのようなジャンルでは、より低い周波数を残しておくことで、重低音の迫力を維持することができます。一方、アコースティックやポップ系のジャンルでは、不要な帯域としてカットしても問題ない場合が多いので、ジャンルやスタイルによって決定するようにしましょう。
5. ハイパスフィルターの注意点
ハイパスフィルターは簡単に使えるうえ、サウンドに分かりやすく影響を与えるため、最も使用頻度の高いツールの1つとして人気があります。
とはいえ、中音域と高音域に配置した楽器からワンクリックですべての低音を取り除くことができ、その過程でミックスの深さと厚みの為に必要な要素を意図せずに削除してしまうことも多くあります。
さらには、必要以上に急こう配のカーブを使用すると、カットオフポイントの周りにリンギングや歪み、位相のずれをもたらす可能性があります。これはコンプレッサーをたくさん使用して音が詰まっている状態のときに特に起こりやすいです。
ミックス全体の仕上がりはEQとフィルタリングだけに由来するものではありません。 ハイパスフィルターを使用する前に音量やパンニング、その他多くのエフェクター類も考慮にいれて、すべてを削り落とす必要性があるのかを検討してみる価値があります。
まとめ
ハイパスフィルターはEQ(イコライザー)ミックス全体の濁りをクリーンアップし、マスキングを回避したりと、正しく使用することでミックス全体の品質が格段に向上します。
ただし、指定した帯域より下をまとめてカットしてしまうので、本来楽器にとって重要な音域まで削ってしまう可能性もあるので、耳で聴きながら慎重に判断しましょう。
以上、「【音のモヤモヤを解消!】EQハイパスフィルターでクリアなミックスを実現する方法」でした。
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