バスドラムのミキシングテクニック【Rock Kick】
バスドラムはミキシングにおいて最も重要な要素の一つで、ベースと共に楽曲全体を支え、リズムを生み出します。
バスドラムをアンサンブルの中で最高の状態で鳴らすために必要な作業は多く、しっかりと時間をかけて、まずは安定した土台を作り上げてからベースやギター、ピアノのような上物楽器に取り組んでいきましょう。
それでは具体的にどのようにすれば、パワフルなバスドラムサウンドを得れるのか解説していきます。
1.録り音にこだわる
バスドラムのレコーディングとミックス作業を行う場合、録り音のクオリティーで最終的な音質や、ミックス作業時間が決まります。
貧弱なキックドラムをミックスで修正することは難しく、どれほど凄腕のエンジニアでも熟練のプレイヤーの鳴らすバスドラムよりは劣ります。
もうひとつは録音に使用するマイクの選択です。
キックドラムに使用するマイクは高SPL(大きな音声信号を入力しても歪まない)必要があり、その中でもAKG D112、Shure Beta 52やNeumann U47等、多くのキックドラムマイクの選択肢があることは強みです。
気に入ったマイクサウンドが見つかったら次に様々なマイクポジションを試します。
一般的にはバスドラムに空いた穴からビーターのアタックポイントを目掛けて狙います。
複数のマイクを所持している場合は、2本目で胴鳴り部分を拾うことで更に厚みのある低音を取得できます。
2.位相を解消する
複数のマイクで録音する場合は、音の位相の問題について考える必要があります。
簡単に説明すると、バスドラムの真正面からの音と真反対からの音をそのままミックスするとお互いを打ち消しあいます。
対局のポジションでなくてもこの位相問題は発生するので、片側のトラックを反転させてみたり、手動で波形をズラしたりすることで解消する必要があります。
音がこもって聴こえていたり、音像がはっきりしない場合には位相を正すことで、よりパワフルでパンチのあるバスドラムサウンドになります。
3.ベースとの住み分け
ジャンルにもよりますが、ローエンドの空間にはバスドラムかベースのどちらを優先して配置するほうが明瞭感が増し、よりクリアなローエンドになります。
具体的な方法としては、EQを使用してキックとベースを住み分けます。
例えば100Hzでバスドラムをブーストする場合にはベースの100Hzをカットします。
そのほか、500Hzをブーストしてベースにパンチを加える場合には、バスドラムの500Hzをカットします。
このように2つの楽器が同じミックススペースで競合しないように処理することが重要です。
バスドラムの重要な周波数帯域は以下です
・50~60Hz : 低音エネルギー
・400~500Hz : 胴鳴り
・ 3k~5kHz : ビーターアタック
これらを意識して他の楽器との住み分けをしましょう。
4.他の楽器のハイパス処理
バスドラムのローエンドはミックスの中でも膨大なスペースを占有するので、しっかりとEQ処理しないとミックス全体の濁りの原因にもなります。
ほとんどの楽器は不必要な低音を鳴らしているので、バスドラム以外のすべての楽器の80~150Hzからハイパスフィルターをかけて、バスドラムの為のスペースを確保します。
この処理をするだけでもバスドラムの存在感は増し、ミックス全体にパンチを加えてくれます。
もっと詳しいEQ処理を知りたい方はこちらの記事を合わせてご覧ください。
5.コンプレッション
バスドラムは非常に高速なトランジェント(音の出始め)があり、特に人が踏むバスドラムはダイナミクスにばらつきがあるので、必ずコンプレッサーを使って圧縮する必要があります。
バスドラムの音量を均一化することは非常に重要です。
音の波形によってコンプレッションの値は変わるので、一概には言えませんが
・レシオ : 4:1~6:1
・アタック : 中~低速
・リリース : 80~200ms
・ゲインリダクション : 3~6dB
ぐらいで使用します。
メタル系だとバチバチにパンチをきかせたり、POP ROCKならナチュラルなサウンドが求められるので、ジャンルによっても使い方は変わってきます。
もっと詳しくコンプレッションについて知りたい方はコンプレッサーの基本的な使い方をご覧ください。
6.サイドチェイン
サイドチェイン(ダッキング)とはバスドラマが踏まれた瞬間にだけベースの音量を下げ、ローエンドに効率的にスペースを確保する最も強力なテクニックです。
エレクトロミュージックのようなサンプルキックとシンセベースによく使われていたテクニックですが、最近ではロックのようなベースギターと生ドラムに対しても使われるのが一般的になってきました。
サイドチェインのやり方については色々な方法があるのですが、Nicky Romeroの「Kick Start」が有名かつ、初心者の方でも非常に簡単にダッキングの効果を得ることができるのでオススメです。
Nicky Romero Kick Start 公式サイトはこちら。
7.サイン波でブースト
バスドラムに厚みが足りない場合に、サイン波のサブベースを加えてブーストさせるテクニックがあります。
楽曲のキーに合わせた40〜80Hzのサイン波を加えることで低音を強化し、太いバスドラムのローエンドを追加します。
具体的には先述のサイドチェインテクニックを使って、バスドラマが踏まれた瞬間にだけサイン波を加えるのですが、少し複雑な為Waves社製プラグインの「Renaissance Bass」を使用することでも同じような効果が得られるのでオススメです。
Renaissance Bassの詳細はこちら。
まとめ
演奏スタイルやジャンルによってミキシングの方法は異なりますが、どんな音楽でもバスドラムが最も重要な要素だということは変わりありません。
しっかりと時間をかけて、納得がいくまで最高のバスドラムに仕上げましょう。
以上、バスドラムのミキシングテクニック【Rock Kick】でした。