エフェクターとは?その歴史と音作りに役立つ豆知識
コンパクトエフェクターはギターサウンドを強化し、用途に合わせて音質変化させる為に欠かせない必須のツールです。
各メーカーから様々な種類のエフェクターが発売されており、足元に複数ならべて使うのに便利なコンパクトエフェクターから、色々な機能が搭載されたマルチエフェクターまで、幅広いラインナップがります。
今回はギタリストが知っておくべきエフェクターについての動作原理や、ギタリストの音作りに役立つ内容についてお話します。
エフェクターとは?
エフェクターとはギターからの信号を変化させる為の道具です。「変化させる」といってもコンプレッサー、リミッター、歪み系の音量のダイナミクスを変化させるタイプや、ディレイ、リバーブのような空間の響きを変化させるタイプまで様々です。
エフェクターによる音質変化技術は、なにもギター用に作られたわけではなく、ラジオやテレビ、レコーディングのような制作現場でも広く使用されている技術なので、基礎原理を覚えてしまえば他の現場でも役立つ知識となります。
エフェクターの原理
ギターに限らず、エフェクトによる音質変化を加えることは「音が良くなる」ことだと誤解しているギタリストも多いですが、基本的にはエフェクトを加えて音質が向上するということはありません。
誤解を恐れずにいうと、多くのエフェクトは耳をごまかすための効果が付与されることで、あたかも「良い音」になったような錯覚である場合が多いです。
例えば、オーバドライブやディストーションのいわゆる歪み系エフェクターで得られる効果は、音量増加による飽和状態にあり、ギター本来の音の芯やダイナミクスを犠牲にしている為、本質的にはサウンドは劣化しているといえます。
原理的にはレベルの過大入力によるクリッピングノイズが膨れ上がったものなので、本来は避けるべき現象だといえます。とはいえ、60年代後半から伝説的ギタリスト達が意図的にアンプの限界を超えた飽和サウンドを大音量で鳴らし続けた結果、それがクールでロックのスタンダードとなり、現在にまで引き継がれているわけです。
本物の音は超えられない
エフェクターによる装飾効果はよく「お化粧」に例えられることがありますが、ギターも同じようにエフェクター本体の品質よりも、ギター本体やアンプの品質が最終的な出音に大きく影響します。
エフェクターについてもその多くは何かをシミュレートした製品が多く、本物を超えられないという壁が存在します。特に70年代のロック全盛期に発売されたエフェクターは、現在からみると未完成である製品が多く存在し、その未完成のサウンドをエフェクターにしか出せないサウンドとしてギタリスト達からの支持を得ました。
例えばリミッターやイコライザーのようなエフェクトもラジオやレコード、CDの音質の限界をごまかすために使われていたり、オーバードライブはチューブアンプを大音量で鳴らした時に得られるサウンド、空間系エフェクターは教会や大きなコンサートホールのような、日常空間では再現が難しい音の反響を疑似再現したものです。
もちろん本物のアンプ、大きなコンサートホールで鳴らした音を収音したギターサウンドに勝るわけはなく、あくまで「何かをシミュレーション」した未完成なサウンドに面白さを感じ、ギタリスト達の間で幅広く使用されることになります。
制作者の意図に反したサウンド
エフェクター製作者は、プレイヤーが用途に合わせて適切にエフェクター効果を利用することで最大限に効果を発揮するように設計しています。使用環境を間違えたり、過度なエフェクトはむしろ逆効果となり、本来のギターサウンドを大きく劣化させてしまうこともあります。
とはいえ、エフェクターが急速に発展していき、60年70年代以降のポピュラーミュージックがレコード機器で聴かれるようになると、ロックアーティスト達は生演奏による興行から、スタジオレコーディングによってパッケージングされる新しい芸術形態だと捉えはじめます。
そしてギタリスト達がガレージ、スタジオ、レコーディングブースにこもって、エフェクターを使った様々な実験を繰り返していくうちに、ミュージシャンが生み出した独自のエフェクターの使い方やセッティングは、エフェクター製作者の意図とは大きく反するものになっていきます。
デジタルエフェクトの登場
90年代になるとデジタルで動作するプラグインエフェクトやモデリング技術も進歩していきます。
プラグインエフェクトはDTMのようなコンピューターミュージック上でエフェクト類を使えるように開発された技術です。これによりスタジオレコーディング中のエフェクターの使われ方も多少変化しましたが、物理エフェクトをデジタルに移行したものが多く、これまでのギターサウンドを一新するような革新的なテクノロジーとはいえませんでした。
モデリング技術はコンピューターの処理能力を活かして、楽器、エフェクター、アンプ等の構造や回路、さらには空間音響までも再現するために開発されたテクノロジーで、より現実空間に近いサウンドをデジタル上で再現できるようになりました。
市場ではアンプシミュレーターやモデリングエフェクトがリリースされ、この新しいテクノロジーによって本物とシミュレーションされた音質にほとんど差はなくなり、プロミュージシャンでも聴き分けられないほどに音質が向上しました。
利便性の大幅な向上
モデリング技術がギタリスト達にもたらした大きな恩恵の1つとして、利便性の大幅な向上があります。
これまでのギタリストはエフェクターを大量に足元に並べるために、大きなボードを買い、アンプを運搬するための機材車が必要になり、活動規模が大きくなるにつれコストも増すといった状況でした。
現在販売されているモデリングプロセッサーの多くは何十種類ものアンプとキャビネット、何百のエフェクトが付属している製品も珍しくなく、これらをタッチ操作で簡単に入れ替えることも可能です。
例えば先日リリースされたBOSSの「GX-100」はアンプ23種類、エフェクト群は150種類以上搭載した大ボリュームでありながら6万円台でき、サイズ的にも幅46センチの重要が3.5キロなので、片手で持ち運びができます。
音楽的な面以外の、アーティストに音楽活動にかかるコストを大幅に抑えることができることを考えると、モデリング技術の音楽界への貢献は非常に大きいものといえます。
まとめ
機能性や価格など、市場にはさまざまなエフェクターが並んでおり、60年代、70年代の実験的に生まれたサウンドエフェクトがそのまま使用されている製品もあります。
結局のところは音の品質よりも、エフェクターにより変化させたサウンドが自分の音楽ジャンルやスタイルに合っているかどうかが重要で、本質的には劣化したサウンドであっても「これが俺のサウンド!」と胸を張っていればまかり通るのがロックの良さでもあります。
モデリング技術の発展でアンプやエフェクトの組み換えや、セッティングも自由に行えるので、ここからまた誰も聴いたことないようなオリジナルサウンドを作り上げるというのも面白いかもしれません。
以上、「エフェクターとは?その歴史と音作りに役立つ豆知識」でした。