サウンドを劣化させない「パラレルコンプレッション」の効果と簡単な設定方法【DTM】
パラレルコンプレッション(Parallel Compression)とは、コンプレッションを掛けていないナチュラルな原音と圧縮した音を混ぜ合わせ、両方の良いとこ取りができる高度なミキシングテクニックの一つです。
通常のコンプレッサーで失いやすいトランジェントを維持しながら、過度に圧縮したトーンをブレンドすることができる便利な方法です。
パラレルコンプレッションは、初心者にとっては少し難しいように感じるかもしれませんが、状況に合わせてパラレルコンプレッションを取り入れることで、ミックスを次のレベルに引き上げることができる可能性を秘めています。
パラレルコンプレッションのメリット
パラレルコンプレッションで得られる一番大きなメリットは、ドライ信号とウェット信号をブレンドすることで、トランジェントを残したまま、圧縮による重厚感のある音を追加することができることです。
一見すると複雑なように思いますが、考え方はサウンドを重ね合わせるレイヤーと同じです。同じオーディオ信号のコピーが2つあり、一方のみに圧縮を適用し、それぞれを補うようにして重ね合わせます。
パラレルコンプレッションは優れたミキシングテクニックですが、あくまで圧縮処理の中の1つの方法にすぎません。必須のテクニックではないので、状況に合わせて並行圧縮が必要かどうかを判断する必要があります。
パラレルコンプレッションの効果
パラレルコンプレッションは、サウンドのアタック部分を残しながら、サスティーン部分を大きくしたい場合に最適です。原音を重ねるので、通常よりも過度に圧縮することができます。
例えばキックにパラレルコンプを使う場合、ドライ信号による豊富なダイナミクス感は残しつつ、強く圧縮してサウンドのボトム部分を残したウェット信号をレイヤーすることで、瞬間的に大きいアタック以外のキックドラム全体の「鳴り」を増強します。
アタック感はそのままで、キックの胴鳴りや部屋の反響音が大きく鳴っているのが分かるかと思います。
パラレルコンプレッションのやり方
1. 2つをレイヤーする
パラレルコンプレッションのやり方はいくつかありますが、一番簡単で分かりやすいのは、そのままのドライ音源とコンプでかなり強めに圧縮したウェット信号を用意して、2つを重ね合わせる方法です。
シンプルで簡単ですが、耳で確認しながら圧縮を調整することができないのがデメリットです。
それぞれのオーディオ音源をレイヤーする場合には、2つのボリュームバランスとEQ処理が重要になります。EQを使って不要な部分をしっかりとノッチ処理しないと耳障りな音が目立ちます。
重ねたことで盛り上がりすぎた帯域をカットしましょう。
2. パッチ機能を使う
DAWによってはパッチ機能が搭載されているものもあるので、利用すると設定がとても楽になります。
筆者が使用しているFL Studioの場合「Patcher」というプラグインエフェクトを使用すると
このように、信号を2つに分けて並列で繋ぎ合わせることができるので便利です。
3. ミキサーで分ける
DAWごとにやり方は異なりますが、筆者使用のFL Studioの場合で説明します。
まず、ドライ信号を空のミキサートラックに通し、FXスロットに「Fruity Send」を挿します。
ドライ信号のミキサートラックを選択します。となりの空のミキサートラックの下部にある矢印にカーソルを右クリックし、「Sidechain to this track」を選択します。
分かりやすいように2つ目のミキサートラックの名前を「WET」に変更しましょう。
次にDRY側のミキサートラックに戻り「Fruity Send」を開きます。その中の「Send to」をクリックし、WETを選択します。
これでドライ信号が2つのトラックに分かれたので、WETトラックにお気に入りのコンプレッサーを挿して圧縮すれば完了です。
音量や圧縮感を耳で確認しながら調節することができるので、おすすめのやり方です。
まとめ
別名「ニューヨークコンプレッション」とも呼ばれるパラレル コンプレッションでは、ドライ信号とウェット信号の良い部分を重ね合わせて、通常よりもはるかに多くの信号を圧縮することができます。
コンプレッサーの種類を変更したり、追加でリバーブ、ディレイ、サチュレーション、コーラス…等、アイディア次第でさまざまなサウンド効果を得ることができます。
パラレルコンプレッションは、ドラムトラック、ボーカル、エフェクト、と色んなトラックに適用できるテクニックなので、実際に使ってみて質感の変化を感じてみてください。
以上、「サウンドを劣化させない「パラレルコンプレッション」の効果とやり方について【DTM】」でした。