ドラム打ち込みの完全ガイド!リアルなビートを生み出す10のテクニック
音楽制作において、リアルでエネルギッシュなドラムビートを作成するスキルは非常に重要です。特にDAWを使った制作においてのドラム打ち込みスキルは、初心者からベテランのプロデューサーまで、あらゆるミュージシャンにとって必須のスキルと言えます。
今回は、プログラミングされたドラムビートに、まるで本物のドラマーが演奏しているかのような自然なニュアンスを加えるための実践的なテクニックをいくつかご紹介します。
"打ち込みドラム"と"生ドラム"の違い
まず、打ち込みのドラムと生ドラムの大きな違いは以下の通りです。
- 打ち込みドラム
正確性や緻密な制御に長けており、様々な音色や編集が可能ですが、演奏の表現力や生のエネルギーにはやや欠ける場合があります。 - 生ドラム
リアルな演奏感やグルーブを持ち、演奏者の表現力や即興性を生かすことができますが、音色や編集の自由度は限られます。
打ち込み制作を行う場合であっても、基本的なリズムの要素については実際に演奏される生ドラムと同じです。
4/4のバックビートであれば、キックドラムが1拍目と3拍目のビートを強調し、2拍目と4拍目のスネア、そしてグレイスノートやフィルで装飾されています。
もちろん、この他にも様々なリズムパターンがありますが、現代音楽の大部分はこのシンプルな構造で出来上がっており、違うビートであっても基本構造は似ているので、ドラムトラックのヒューマナイズをしようとしている人にとっては重要となる要素です。
今回ご紹介するいくつかのテクニックを使って、生ドラムの表現力を打ち込みで再現することができれば、楽曲に迫力やダイナミズムを与えることができます。
1. 良質なドラムサンプル選び
リズムの元となるドラムサンプル選びの段階で、最終的なリズムトラック品質の7割くらいは決定していると言っても過言ではありません。
音楽ジャンルや楽曲雰囲気にあった最適なサンプルを選び、必要に応じてEQやコンプレッサーを使ってミキシング処理を施します。楽曲の雰囲気に合っていないサンプルを選んでしまうと、どれだけ加工しようと質の良いリズムトラックに仕上げることは難しくなるので注意が必要です。
リズムトラックに存在感を持たせるには、まずは高品質なサンプルを入手することから初めてみましょう。
2. ドラムパターンを理解する
ドラムの打ち込みの完成度を上げる為の第一歩は、自分が制作する音楽のジャンルに適したドラムパターンを理解することです。ロック、ヒップホップ、ジャズなど、それぞれのジャンルには特徴的なドラムパターンがあります。
例えば、ロックでは力強いスネアのバックビートが特徴的であり、ヒップホップではキックとスネアのシンコペーション、ジャズでは複雑なリズムと繊細なシンバルワークが求められます。これらのパターンを把握することで、ドラムプログラミングの基礎を築くことができます。
3. ビートに人間味を加える
人間味あふれるドラムビートを作成するためには、ドラムヒットのタイミングやベロシティに微妙な変化を加えることが重要です。DAWに備わっている「クオンタイズ機能」はとても便利ですが、過度に使用すると機械的なサウンドになってしまう可能性があります。
キックのような重要なノートはクオンタイズし、他の要素をグリッドから少しずらすことで、より自然なグルーヴを生み出すことができます。また、各ドラムヒットのベロシティを調整して音の強弱をコントロールすることも効果的です。例えば、ハイハットの2回目と4回目の偶数ヒットを弱くすることで、よりグルーヴィなパターンになります。
4. パンニング
パンニングはステレオ空間の中のどこに楽器を配置するかということです。ドラムをパンニングするときは、ビートに最もインパクトを与えるキックとスネアをセンターに配置することで、リズムの土台をしっかりと作ります。
通常、タムや金物系はその周りに配置するのですが、実際にドラマーが椅子に座って叩いている状況をイメージして、その通りの楽器ポジションに配置するのがオススメです。
高い音ほど大きく広げるとより効果的になるので、
- タム系 : LR 20~60
- ライド : LR 40~70
- クラッシュ : LR 70~90
のようなイメージで広げると綺麗です。ハイハット常時鳴っている楽器なので、あまり広げ過ぎると違和感を感じるのでセンターかもしくはLR 10~40ぐらいの間が理想です。
もうひとつのポイントは重要な楽器ほど中央に寄せるということです。例えば、ハイハットの場合で考えると、ジャズやロックでは片方に寄ったパンニングになることが多いですが、HipHopやTrap系の音楽ではハイハットの重要度が高いのでセンターに配置されることが多いです。
重要な楽器ほど中央に寄せるという概念は、ドラム以外のパンニングにもあてはまることなので覚えておくと便利です。
5. スイングとグルーヴ感
スイング機能とグルーヴのテンプレートは、ドラムトラックに自然なリズム感を加えるための強力なツールです。FL StudioやAbleton Liveなどのビートメイクに特化したDAWであれば、あらかじめリズムをスウィングさせる機能が付いていたり、グルーヴテンプレートが用意されていることもあります。
様々なスイング設定を試して、自分のパターンに最適なグルーヴを見つけましょう。特にファンクやジャズのようなジャンルでは、スイングが重要な役割を果たします。
グルーヴの追加
リアルなドラム演奏のドラマーごとの個性やグルーブ感を再現するために、微妙なタイミングのズレやアクセントを追加してみましょう。
グリッドに揃った完璧なタイミングではなく、わずかなズレを意図的に加えることで、より人の演奏に近い自然なリズムトラックに仕上げることができます。編集は、ノートを手作業で微調整するか、タイミング編集機能を使用します。
また、リアルなドラム演奏には、アクセントや強調する部分が欠かせません。特にスネアドラムやハイハットなど、リズムの中で重要な役割を果たす楽器にアクセントを加えることで、グルーブ感を強調することができます。ベロシティで変化をつけたり、コンプレッサーやトランジェントシェイパーのようなダイナミクス系のプラグインを使って簡単に強調することができます。
→単調なリズムトラックに変化を加える為の5つのヒント【DTM】
6. レイヤー化テクニックの使用
ドラムサウンドにより深みを加えるには、レイヤー化(サンプルを重ねること)が効果的です。複数のドラムサンプルを重ねることで、厚みのある豊かなサウンドを作成することができます。例えば、タイトなスネアに、響きの豊かなクラップを重ねることで、サウンドにパンチと奥行きを出すことができます。
実際に2つのサンプルを重ねる時には、そのまま重ね合わせるのではなく、EQによる住み分けを行うことで、より両方の強みを活かしたサウンドに仕上げることができます。
実験的に色んな楽器を重ね合わせたり、それぞれ各レイヤーのボリュームや音質を調整することで、単発で鳴らすよりもバランスの取れたサウンドを目指しましょう。
レイヤーを使用してサウンド強化する為の10のヒント【DTM】
7. ゴーストノートの組み込み
ゴーストノートは、ドラムパターンに微妙なニュアンスを加えるためのテクニックです。特にロックやジャズで多用され、メインのビートパターンを変えることなく、よりリズムに深みと複雑さ加えることができます。
スネアやハイハットにゴーストノートを追加することで、パターンはより複雑かつダイナミックになります。DAWでゴーストノートを打ち込む際は、メインのヒットの間隔を調整しながら、ベロシティ設定で音の強弱をコントロールしながら配置していきましょう。
8. オーバーラップ編集
音と音が重なる部分のことを"オーバーラップ"といい、打ち込みドラムにおいて重要な要素であり、特にリアルな演奏感を作り出す上で、オーバーラップの繊細な調整は欠かせません。
連続して打楽器音が重なる部分。例えば、キックの連打、スネアドラムの連打、シンバルの連打などが典型的なオーバーラップの例ですが、現実では2発目を打ったときに1発目の音は残響音のみになりますが、デジタルだと実音が鳴ったまま残ってしまいます。
オーバーラップの設定は、ドラムパターンや楽曲の雰囲気に合わせて調整する必要があります。リズムの細かな変化や表現力を重視しながら、自然でリアルなオーバーラップを追求してみてください。
9. ダイナミックバリエーション
ドラムビートにダイナミックな変化を加えることは、リスナーの興味を引きつける上で重要となります。ベロシティの強弱を変えたり、小節ごとにフィルインを追加したり、シンバルパターンを変化させることで、ドラムトラックに動きを出すことができます。
ダイナミクスの再現
ダイナミクスとは"音の強弱による抑揚"のことですが、リアルな演奏感を生み出すために欠かせません。
通常は、ベロシティと呼ばれるDAWパラメーターを使って、各音に対しての音の強弱を表現することで、生演奏のようなダイナミクスを演出することができます。
人間による演奏の場合、同じような強さで叩いているつもりでも、必ず音の強弱が発生しています。それをデジタル上で再現することで、よりリアルな演奏に近づけることができます。
単一のサンプル音源を使っている場合、単純に音量感しか変化しないですが、プラグインソフトのバーチャルドラムキットを使えば、叩き方の強弱によって、サウンドの質感も変化するのでおすすめです。
10. 空間系エフェクトの追加
リバーブのような空間エフェクトは、現実味を再現する為に欠かせないエフェクトの一つです。リバーブやルームサウンドエフェクトを使って、特定空間の反響音を付与することで、ドラムが実際にその空間に存在しているかのような、生々しい演奏感を演出することができます。
→リバーブVSTプラグインおすすめ10選【DTM】
実際にはアコースティックドラムでドラマーが叩いてレコーディングする場合、一つの空間でマイクを使って収音していることが多い為、音の反響もほぼ同じになります。
キックはドライでパンチを効かせて、スネアはホールリバーブで壮大さを演出。といったことも効果的ではありますが、よりリアルを追求したい方はリバーブ専用トラックを作ってすべてのキットをルーティングさせるのが理想的です。
1つのリバーブを共有する方法は、一つ一つにリバーブを挿すよりもCPUの大幅な節約にもなるので、ドラムトラックに限らずよく行われるテクニックです。
まとめ
打ち込みドラムをリアルにする10のテクニックをご紹介しました。
- 良質なドラムサンプル選び
- ドラムパターンを理解する
- ビートに人間味を加える
- パンニング
- スイングとグルーヴ感
- レイヤー化テクニックの使用
- ゴーストノートの組み込み
- オーバーラップ編集
- ダイナミックバリエーション
- 空間系エフェクトの追加
高品質なサンプル選びから始まり、ドラムパターンや人間らしいグルーヴの理解、パンニングやスイング、レイヤー化、ゴーストノート、オーバーラップ編集、ダイナミックバリエーション、そして空間系エフェクトの追加まで、多岐にわたるテクニックを駆使することで、打ち込みドラムは生ドラムのようなリアルなサウンドへと進化します。
これらのテクニックは、音楽ジャンルや楽曲の雰囲気に合わせて自由に組み合わせることが可能なので、ぜひこの記事を参考に、オリジナリティの溢れるリアルなドラムビートを作成してみてください。
以上、「ドラム打ち込みの完全ガイド!リアルなビートを生み出す10のテクニック」