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生成AIによって変化しつつある音楽業界の5つのトピック

生成AIによって変化しつつある音楽業界の5つのトピック

「偽ドレイク」のようなAI生成ボーカルによるトラブルと音楽界への影響について論争が起こったり、日本でもJASRACが生成AIと著作権についての考え方を発表したりと生成AIと音楽に関する話題が注目を集めていますが、音楽におけるAI使用のすべてが懸念材料となるわけではありません。

人工知能に関する誇大宣伝も多いことから、どの分野でも生成AIに関する期待と不安が混ざりあっており、それは音楽業界も同じです。今後AIによって生成されるであろう大量の楽曲群が芸術性と市場を大きく変える可能性があるため、多くの企業がアーティストと著作権を保護する方法を検討しています。

AI×音楽の現在の状況

AIが一瞬で音楽業界をひっくり返すほどのパワーを持っていると期待していた人達もいましたが、現状はゼロから生成AIによって生まれた楽曲が世間に認められている事例は少なくAIシンガーの「Anna Indiana」がデビューシングルをリリースというニュースが入ったときには酷評が集まるという結果になっています。音楽におけるすべてのAI事例がこういった革新的なものではなく、実際にはまだ補助的な使用に留まっているといえます。 

例えば、ビートルズのポール・マッカートニーがAI技術を使って「最後」の未発表曲を制作すると言った時に、ファンや音楽業界など広範囲にわたる混乱を引き起こしました。多くの人が、AIを使ってボーカリストの声を蘇らせ、何もないところからジョン・レノンの声を生成することを意味すると考えました。しかし、実際には生前の頃の歌声を「ステム分離」として知られるプロセスを使用して、古い録音をクリーンアップするという内容でした。

新しいテクノロジーを使用するすべての状況で、コンピューターで瞬時に作成されたコンテンツが簡単に成功するわけではありません。生成AIによるコンテンツは、法的および倫理的な問題を引き起こす可能性がありますが、ミュージシャンや権利所有者に新たな創造的な機会を提供するものもあります。

1. 音楽生産に革命を起こす

音楽生成におけるテクノロジー品質と利用するハードルが下がってきたおかげで、プロフェッショナルなサウンドの音楽を作成することがますます簡単になりました。

プロミュージシャンでなくても、Apple製品を購入して「GarageBand」で音楽制作を始めることが出来たり、オンラインで「タイプビート」を購入してスマホを使ってボーカルを録音することもできます。しかし、これ以上に生成AIによるテクノロジーは、一般人とミュージシャンの壁を壊して革命を起こす可能性があります。

例えば、音楽生成サービス「Mubert」を使えば、「エレキギターを使った激しいメタルソング」のようなテキストを入力するだけで誰でも簡単に音楽を生成できる革新的なツールとして機能します。

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2. ステムデータの入手

AIテクノロジーは、ゼロから曲を生み出すだけでなく「ステム」と呼ばれる楽曲を構成する個別の要素に分割して、個別にデータとして抽出することも得意としています。

例えば、ボーカルリムーバーと呼ばれるツールを活用すれば、ワンクリックで既存曲のボーカルトラックとインストゥルメントトラックのそれぞれを入手することができます。この技術を活用して、映画予告編に主題歌のインストゥルメンタルバージョンを挿入したい場合や、ブランド広告にアカペラのボーカルトラックを挿入したい場合、これらのオーディオ要素を準備するのが簡単になります。

また、リスナーが自分の好きなオーディオを使って、YouTubeやTikTokでバイラルヒットを狙って注目を集める為のオリジナルリミックスを作成したりすることも容易になっています。

3. 供給が増えすぎる

これまでの音楽業界は、プロフェッショナルな音楽の供給が非常に限られており、そのほとんどが少数の大企業によって管理されることを想定して設計されていると言えます。しかし、生成AIの発達によって、プロ品質の音楽であっても簡単かつ迅速に作成できるようになりました。

これはメジャーレーベルにとっては大きな不安要素となり、楽曲の作成プロセスとコストが大幅に下がることで参入者が増え、供給が大きく増加することで「市場シェアの希薄化」の問題に直面しています。

さらに、既存の楽曲すらも改変されたり、プラットフォーム側のルールによってオリジナルコンテンツとして再利用することが可能かつ収益化が可能となっている場合、メジャーレーベルの経営に大きな影響を及ぼすことは間違いありません。

4. 好みに合わせて最適化されたサウンドトラック

作成のために特定のアーティストを必要としない音楽、例えばゲーム、映画、ワークアウト、作業用、ショート動画などのコンテンツをさらに強調するための、BGM要素を含んだ音楽は生成AIが最も得意とするジャンルです。

最先端の技術を駆使したReactional Music、Life Score、Minibeatsなどの企業は、これらを「ダイナミック」または「パーソナライズド」音楽と呼び、AIを採用してワンクリック生成するのではなく、人間が作った音楽を個々のステム要素ごとにシャッフルして、ユーザーのニーズやアクションを強調するのに最適な音楽にアレンジすることも可能になっています。

アーティストによる作品としての音楽ではない、このようなBGM的要素を多く含んだ音楽は、現状ほとんどが生成AIに置き換わっているといえます。

5. ボーカロイド(歌声合成技術)

日本だとボーカロイドは一般的ですが、世界でみるとこのような歌声合成技術を採用しているシーンはまだまだ非常に少ないです。しかし、海外でも一部のソングライターやパブリッシャーの中には、自分の作曲した曲を一流アーティストに売り込むために、AIの歌声合成技術を取り入れる機会も多くなってきています。

プロのソングライターが作曲し、後にアーティストにレコーディングを依頼するような楽曲でも、楽曲制作プロセスでより高い品質を望むアーティストが増えていることもあり、特に採用されるのが難しくなっている現状があります。

お気に入りのアーティストに似た声でボーカルトラックを生成することも簡単になったことで、楽曲イメージが伝わりやすくなり、理想とするデモシンガーを雇うよりも安価で確実な代替手段だという意見も広まってきています。とはいえ、これによってシンガーの仕事の機会が減る可能性があると警告を鳴らす反対派の意見もあり、生成AIの中でも特に議論が多いトピックとなっています。

まとめ

AIによる音楽生成は、まだ補助的な役割が中心ですが、今後さらに進化していく可能性が高いです。音楽制作の効率化やパーソナライズ化、歌声合成技術の進化など、様々な可能性を秘めています。

一方で、AIが音楽の芸術性や市場に与える影響について懸念する声も多くあります。著作権やアーティストを模範することの倫理的な問題も議論されており、これは音楽業界関係者だけでなく、リスナー側もこれらの問題について考えていくことが重要です。

以上、「生成AIによって変化しつつある音楽業界の5つのトピック」でした。


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