ミキシングエフェクトの基礎知識【DTM】
トラックメイカーが一連の制作手順の流れで、学んでおきたいのがミキシングエフェクトについての知識です。
EQ、コンプ、サチュレーション等の動作原理をしっかりと理解しておくことで、VSTプラグインの選択や、正しいエフェクトのかけ方が自然と分かるようになります。
今回はミキシングに使用する代表的なエフェクト類の基礎知識についてご紹介します。
1. ボリュームフェーダー
ボリュームフェーダーは音量バランスをコントロールする部分です。
トラックごとのレベルまたは聴覚的な音圧感のバランスをとることは、ミキシングの最も基本的なステップの1つです。
プロジェクトの音量バランスをとる方法は主に2つあり、一つはフェーダーを使用する方法と、もう一つはオートメーションを使用する方法です。
フェーダー
フェーダーを上下の方向にドラッグすると、デシベル(dB)で表された値が上下します。
デシベルはレベルを表すために使用される単位であり、ほとんどのDAWでは新しいトラックのフェーダーはデフォルトで0.0dBに設定されます。
フェーダーを調整しながら曲を再生すると、トラックの音量変化がリアルタイムで聞こえるので、トラック全体を相対的にみて個々のボリュームバランスを調節します。
オートメーション
その名前のとおりオートメーションを使用することで、音量に限らず特定のパラメーターを時間の経過とともに自動的に調整できるようにするテクニックです。
すべての一般的なDAWには、使い方は違えど何らかの形でオートメーション機能が搭載されているはずです。
さまざまな値を垂直に表す点と線を描画することにより、特定の時点でのパラメーターを調節できるようになるので、より高度なミキシングを行うことが可能です。
→ミキシングの3大要素【音量・定位・音質】について
2. パン
パンは、ステレオ空間の中の特定の位置に個々のトラックを割り当てるためエフェクトです。
オーディオ信号が左のスピーカーから100%出ている状態から、反対に右のスピーカーから100%出ている状態までをコントロールすることができ、センターは両方から均等に出ている状態です。
パンニングのコツ
異なる楽器を両側に配置した場合でも、ミックス全体で両側からほぼ同じ量の質量感を意識します。
たとえば、ギターとシンセの両方を伴奏楽器として配置する場合、一方を左に、もう一方を右に同じ量だけパンして、同じ音量感で使用します。
極端な話、右にキックドラム、左にスネアを配置すると楽器の持つ質量が異なる為、バランスが崩れたミックスになってしまう可能性があるので、全体的な平衡感覚を考えながら作業しましょう。
→ステレオ音像を大きく広げる為のミキシングテクニック
3. イコライザー
EQ(イコライザー)は、音源の持つ周波数のバランスを制御できる便利なエフェクトです。
特定の楽器の不要な音をカットしたり、足りない音域をブーストしたりすることができる、ミキシングにおいて非常に重要なエフェクトです。
DAWで使用したことがない場合でも、オーディオシステムの低音と高音のノブであったり、ストリーミングサービスやスマホのイコライザー設定など、一般的に備わっているものと基本的には同じです。
DAWで使用するパラメトリックEQと呼ばれる、より細かい音質調整が可能なエフェクトを使用するのが一般的で、大体20Hz〜20kHzの間で特定の周波数を自由にブーストまたはカットすることができます。
→EQ(イコライザー)を使って不要な音をカットしよう
4. コンプレッサー
数あるミキシングエフェクトの中でも最も奥が深いと言われているコンプレッサーエフェクト。
オーディオ波形を圧縮することでダイナミクス量をコントロールするエフェクトで、簡単に言えば圧縮によりトラックレベルをより均一化させることが主な目的です。
オーディオ音量が指定されたレベルを超えたことを検出し、スレッショルドの値を超えた場合にレシオの比率に従ってオーディオを圧縮することにより、オーディオ全体のダイナミックレンジ(最も大きい音と最も小さい音の差)を減らします。
その他にも圧縮による音質変化を目的として使用されることもあります。
→コンプレッサーの基本的な使い方
5. ディレイ
ディレイは音の遅延のことでやまびこ効果とも言われており、一般的だとカラオケに付いているエコーをイメージしてもらえると分かりやすいかと思います。
原理的には単純な空間再現エフェクトでありながらも、使用用途は広く、上手く使いこなすことで強力な効果生み出してくれます。
Delayはオーディオの一部を指定された時間が経過したあとに再び再生し、繰り返し再生される回数の指定も可能です。
ショートディレイを用いてダブリング効果を得たり、付点八分音符を利用したフレージング構築等、アーティストによって様々な使い方があります。
過度に使用すると、濁りが発生してミックスの透明度が低下する可能性があるのでほどほどにしておきましょう。
→ディレイの使い方【ミックスで使える5つのテクニック】
6. リバーブ
リバーブはディレイと同じく空間再現の為のエフェクトで、原理的にも近いですが、実際には特定の空間の反射音を再現します。
普段意識することはないですが、現実世界ではどんな音でも反射音が聴こえています。周囲の壁、天井、床に音は反射して、いつでもこれらの反射音を浴びています。
例えば、空のホールに立って拍手すると、直接音(耳に直接伝わる音)と反射音(壁やその他の物体に当たって跳ね返る音)が混ざり合って聞こえます。これらの反射音を再現するのがリバーブであり、反射の無いデジタル世界では必須のエフェクトです。
リバーブの場合、ディレイと違って反射で起こる遅延信号は時間的に非常に近く、密集しているため一つ一つの信号を区別できません。
→クリアで立体感のあるミックスの為の5つのリバーブテクニック
まとめ
ミキシングエフェクトの基礎知識についてお話しました。
- ボリュームフェーダー
- パン
- イコライザー
- コンプレッサー
- ディレイ
- リバーブ
ミキシングは非常に奥が深く、学ぶべきことはたくさんありますが、今回はほぼすべてのプロダクションで使用されているエフェクトについて説明しました。
どれもトラックの品質を向上させるために必要なエフェクトで、音楽制作に携わるなら間違いなく使用することになるので、早い段階で理解を深めておくと後々有利です。
基礎的なことを学んだら、実際に実験して楽しんでみてください。
以上「ミキシングエフェクトの基礎知識【DTM】」でした。