DTMを始めるなら覚えておきたい7つのミックステクニック
これからDTMを使って音楽制作を始めようと思っても、ソフトウェアの使い方やミキシングのやり方等、覚えることが多すぎて、少し億劫になったりすることもありますよね。
曲のアイデアを生み出して、たくさん時間を使って、使用する楽器を完璧に録音し、音質バランスを整えて、マスターで全体を上手く馴染ませているのに、出来上がった音源は何か物足りないように感じることはないですか?
プロのエンジニアはこの問題を解決する為にミックスに微妙な変化を加えて、優れた耳を持ったリスナーでさえほとんど気づかれないような、僅かなニュアンスの変化を積み重ねることで最終的な音源品質を向上させています。
今回ご紹介するヒントを使えば、ポップ、ヒップホップ、ロック、EDM、カントリー等、ほぼすべてのジャンルにおいて上手く機能するような基礎的なテクニックになります。
1. サビでマスターフェーダーをプッシュする
これは、多くのエンジニアが使用するよく知られたテクニックで、非常にシンプルなので簡単に採用することができます。
曲のさまざまなポイントでマスターフェーダーのボリュームにオートメーションを使用することです。曲が盛り上がるようなポイントでは音量を+1dB程プッシュします。セクションが終わったら元に戻します。
音量が大きいと単純に迫力が増す以外にも、大きい音ほど人は「良い音」と感じる傾向にあるので、メインセクションがより洗練されたサウンドに聴こえるというメリットもあります。
2. リバーブをオートメーション化する
※オートメーションとは「自動化」のことで、DAW内の様々なパラメーターを自動的に操作することができるツールです。
リバーブは非常に奥が深いエフェクトの一つで、上手く使いこなすことで、音の前後左右と多彩な空間表現が可能になります。
例えば、リバーブエフェクトのステレオ幅をオートメーション化して、曲全体でリバーブを左右100にパンしたままにするのではなく、サビ前のセクションではリバーブを左右50に狭めて、サビに入った瞬間に左右100に開くことで、相対的に大きなトラックが入手できます。
また、リバーブ信号のプリディレイをオートメーション化することもおすすめです。通常20ms→メインセクション100msといった具合に初期反射の音をコントロールします。
これは特にボーカルトラックに最適なテクニックで、ボーカルスペースが確保されることで、ボーカルは同じ空間に存在するように聴こえますが、より広い空間表現が可能になります。
→【ワンランク上の空間表現】リバーブエフェクトの3つのテクニック
3. ローカットをオートメーション化する
EQによるローカットフィルターをオートメーション化することも一般的に広く使われているテクニックです。
メインセクションに入るまでローエンドの一部をカットしておくことで、メインセクションで迫力ある低音を一気に再生することで、よりダイナミックな演出をすることができます。
DTM以外でもクラブDJも取り入れているテクニックで、特にEDMやヒップホップ、トラップ系のベースミュージックとの相性が抜群のトリックです。
キックの低音やサブベースが丁度切れるあたり(80~100Hz)からローカットすることで、余計にカットし過ぎてスッカスカになることを回避できます。
→EQ(イコライザー)を使って不要な音をカットしよう
4. バストラックコンプのオートメーション化する
バストラックとは複数のトラックを一つにまとめたトラックのことです。
ミックス全体を「接着」させるためにバストラックに対してコンプレッサーで1〜2dBのゲインリダクションで圧縮することは非常に効果的です。
しかし、曲全体を通して常にミックスを接着し続ける必要はありません。一時的にダイナミクスレンジを幅広くとった余裕のあるセクションがあったり、音圧が欲しい場面で強力に接着させたりすることは、ミックステクニックとして非常に強力です。
これを効果的に適用するため、バスコンプレッサーのレシオやスレッショルドに対してオートメーションを試してみることをおすすめします。
→コンプレッサーの基本的な使い方
5. ディレイをオートメーション化する
ディレイをオートメーション化することでもリバーブと同じような効力が期待できます。
以前は常に8や16分音符のディレイを設定して、曲全体に残していましたが、ディレイタイムを変更したり、オンオフを切り替えるだけでも、さまざまなポイントで空間効果を追加する為の優れたテクニックとして利用できます。
短いショートディレイを使用したり、部分的に強調されたディレイ(ブレイクの一番最後の言葉にだけディレイがかかるようにしたり)サビでディレイをオフにしたりと、発想次第で様々な効果を得ることができます。
6. サイドチェイン
サイドチェインといっても様々なテクニックがありますが、特にサイドチェインによるコンプレッション(ダッキング)は非常に強力なミキシングテクニックで、飽和状態のミックス内にスペースを確保することができる便利なテクニックです。
キックが鳴った瞬間だけベースを圧縮したり、ボーカルが鳴っている間だけギターの音量を少しだけ下げるといったことが簡単にできるようになります。
特にEDMといったキックドラムを主体とするジャンルでは必須のテクニックとして、多くのエンジニアに利用されています。
→サイドチェインコンプレッションの重要性とテクニックについて
7. ミッドサイド処理
ミッドサイド処理は少し難しいテクニックにはなりますが、正しく適用することが引き締まったローエンドやトラックの分離感、ワイドなミックス音像を手に入れることができます。
通常、音楽を作る場合には右と左に分かれたステレオ空間の中で作業を行っていきますが、MS処理の概念は、センターであるMid成分とその両サイドに分かれたSide成分に分けて作業を行うことで、さらに高度なミキシング処理を行えるようにすることです。
間違えるとミックスバランスが崩れてしまう可能性もある為、他の6つに比べると注意が必要ですが、簡単な方法として、MS処理が可能なハイスペックなEQを使用して、ミッドをそのままにして、サイド信号を変更することです。
盛り上がるセクションでは2kHz、5kHz、8kHz付近をサイド信号のみ+1~2dBブーストします。これにより壮大さが増し、ステレオフィールドを大きくみせることができます。
→MS処理(ミッドサイド)の効果を利用して幅広いミックスに仕上げる
まとめ
ミックス品質を向上させるのに役立つ7つのヒント【DTM】についてご紹介しました。
- サビでマスターフェーダーをプッシュする
- リバーブを使いこなす
- ローカットをオートメーション化する
- バストラックコンプをオートメーション化する
- ディレイをオートメーション化する
- サイドチェイン処理
- ミッドサイド処理
もちろんこれら以外にも様々なテクニックが使用されていますが、今回は基礎的な7つのテクニックについてご紹介しました。
デジタル音楽だとオートメーションによる恩恵がやはり一番大きな効果を発揮するので、今回紹介したエフェクト以外にも、様々なパラメーターを自動化してみたりしてみるのも、おもしろい発見があったり、自分流のミキシングテクニックを身につけたりもできるのでおすすめです。
以上、「DTMを始めるなら覚えておきたい7つのミックステクニック」でした。