ロックサウンドをミックス&マスタリングする時の5つのミキシングヒント
バンドレコーディングによるロックサウンドのミキシングは、一般的なソロアーティストのトラックよりも収音するべき楽器が多くなり、複雑になりやすいです。
さらに、それぞれの楽器担当者の音へのこだわりを保ちつつ、すべてのバランスを取りながらファイナルミックスを決定する必要があります。
そこで今回は、ロックサウンドをミックスするときの設定方法、トラックの扱い方といったミキシングするためのヒントをいくつかご紹介します。
1. 最高品質の録り音にする
エフェクトプラグインをいくら挿しても良いサウンドにならない時は、そもそもの録り音である音源ソースのサウンド品質が良くない可能性があります。
ギターアンプ、ドラムキット、ボーカルなどをマイキングして収音する場合には、ミキシング工程で調整する前に、録り音を徹底的にこだわる必要があります。
レコーディングに対応できる高品質な楽器を使用し、弦を交換したり、より精密なチューニング、ボーカリストであれば体調管理に気を付けて、レコーディングの日に最高のパフォーマンスを出せるようにしておきましょう。
2. 原音の良さを活かしたミックス
生の楽器を収音してミキシングを施すときに何十個ものプラグインは必要ありません。たくさんのプラグインを使用して良い音にしようとすることは実際には逆効果であることがほとんどで、元となる音源ソースの品質を損なう可能性の方が高いです。
エレクトロミュージックのプロデューサーであれば、何百ものトラックに、いくつものプラグインを挿してサウンドメイクすることもありますが、ロックサウンドの場合は、アナログ感のある生の質感を活かすことが重要となります。
先述したように、素晴らしいサウンドは元となる録り音の段階で決定しているため、クオリティの低い音源をミキシングで改善するよりも、優れたサウンドのトラックを収音することに注力する方が理にかなっています。
3. 生ドラムか打ち込みドラムか
ドラムトラックは、ロックサウンドの中で最も重要かつ、収音の難易度が高いトラックである為、ドラムキットのマイキングやミックスに自信が無い場合は、ドラム音源ソフトを使って打ち込んだ方が遥かに品質が良くなります。
ドラムは複数の太鼓が集合した特殊な楽器であり、迫力のある音源を録ろうとする場合、マルチマイクでドラムキットの音を個別に録音することが必須となります。ドラム全体をキャプチャするには、キット構成にもよりますが大体5~8本のマイクが必要です。追加してオーディオ変換する為の8つのプリアンプを備えたオーディオインターフェイスも必要になります。
マイキングも他の楽器に比べて設置難易度は高めなので、もし自分でレコーディングする場合は別記事の「自分でドラムレコーディングする為の5つのステップ」をご覧ください。
4. ダイナミクスを残したマスター
音圧を上げたマスターにすることは、プラットフォームにアップロードした際に音圧が下げられるため、各プラットフォームに適した音圧値に設定するのがベストです。
とはいえ、ロックサウンドに関しては音圧を高くした時の圧縮感のある質感が好まれるジャンルもあるので、すべてにおいてヘッドスペースを確保した、ダイナミクスを活かしたマスターが正解とは限りません。
リファレンス音源を用意して、マスタリングでの音圧の測り方について【LUFS】を参照しながら正しい音圧値に設定しましょう。
5. リズムギター、ベース、キックを整える
ロックサウンドの要である、リズムギター、ベース、キックのこれらの3つの要素を競合することなく、上手くミックスすることが非常に重要となります。
これら3つの処理をする前に、リファレンストラックを参考にしながら、どういったサウンドを必要としているかを慎重に考える必要があります。キックとベース、ベースとリズムギターはそれぞれ干渉しあう可能性が非常に高いので、どの帯域にどの楽器を配置するのかを決定しましょう。
順番としては、ドラムキット全体をリファレンスサウンドに近づけたら、ベースとの兼ね合いを見ながら、ハイパスフィルターを使用して不要なローエンドを削除し、Q値が高いピーク処理で、ローミッドの濁り、楽器間のマスキング、重要な周波数帯域をブースト等、必要に応じてEQを使って処理します。
カットが必要かどうかは自分の耳で判断する必要があります。ドラムは瞬間的な楽器である為、EQでカットするよりもサイドチェインコンプレッションを利用してカットしたほうが良い場合もあります。
サイドチェインを利用することで、例えばキックが踏まれた瞬間にだけ対象となるベースの低音をカットするといったことも可能になるので、より高度なミキシング処理ができるようになります。
ドラムとベースが固まったら、リズムギターをその上に重ねてみて、ベースの上で競合しないように上手くミックスします。キックとベースの時と同じテクニックを使って、濁った周波数をクリアにすることができます。
これら3つのバランスが取れたら、それらを中心にその他のミックスを構築していきましょう。
まとめ
ロックサウンドのミキシングにおいて、まずは録音の段階で高品質の音源ソースを入手することが重要になるので、楽器演奏やボーカルのパフォーマンスにこだわりましょう。
次に、音源の良さを活かすため、過剰なプラグインの使用は避けて、アナログ楽器特有の質感を重要視しましょう。ドラムトラックに関しては、生ドラムと打ち込みドラムの選択肢を考えて、収音の難易度や品質を考慮して判断するようにしましょう。
リズムギター、ベース、キックのバランスを取りながら、競合を避けてミックスすることで、よりパワフルかつクリアなサウンドを実現できるようになります。
以上、「ロックサウンドをミックス&マスタリングする時の5つのミキシングヒント」でした。