ギター用コンプレッサーエフェクターの正しい使い方
みなさんギターにコンプかけていますか?
ギターのコンプといえば、MXRのダイナコンプのように「ポコポコ」させるイメージが強いですが
ギターの場合このように強く圧縮してブーストしたサウンドを目的として使用することが多いですが、本来コンプレッサーの目的は「音を圧縮することで、楽器の最大音量と最小音量の差を少なくする効果と、音の立ち上がり部分と持続音を調節すること」であり、非常に奥が深いエフェクターなのです。
※音のピークを圧縮することで音量を均一化します。
正しく使うと、いまいち変化が分かりづらく、歪みやディレイのように目に見えてカッコよくなるエフェクトではないので、そこまでコンプにこだわるギタリストの方は少ないかと思いますが、コンプを上手に扱うことでワンランク上のサウンドメイクが可能になります。
コンプレッサーの仕組み
コンプレッサーとは「音を圧縮することで、サウンドの最大音量と最小音量の差を少なくする効果と、音の立ち上がり部分と持続音を調節すること」ができるエフェクトです。
もっとも基本的な使い方としては、大きい音を圧縮することで、小さい音との音量差を小さくして、全体の音圧を上げることが目的です。
このように、これ以上ボリュームを上げるとクリップしてしまうというような場合に、飛び出した音を圧縮することで更に全体のボリュームを上げることができます。
これがコンプレッサーの基本的な仕組みと使い方です。
その他にも適用する楽器によって使い方は様々で、一概にこう使えばいい!というような簡単な攻略法は存在せず、それぞれに最適な圧縮を加えるには経験と熟練の耳が必要になるので非常に奥が深いです。
→コンプレッサーの基本的な使い方
ギター音量を均一化することのメリット
1. 音の強弱が無くなることで、音圧を稼ぐ場合に有利です。
瞬間的な音量よりも、持続する音量が大きい方が人は音圧があると感じます。
2. ピッキングによる音のバラつきを抑えることで上手く聴こえる。
アルペジオやカッティング奏法において、音量感が均等な演奏なほうが聞き手には上手く聴こえます。
3. サスティーンを稼げる
リードギターのような単音弾きをする場合に、音のサスティーン(持続音)を伸ばすことで、より太く伸びのあるサウンドが手に入ります。
4. ミックス内で定位が安定する。
ミックス内で大きい音は手前に、小さい音は奥に引っ込みます。音量を均一化することで音の定位を安定させることができます。
コンプは絶対かけたほうがいいの?
ギターの場合結論からいうと、かけた方がいい場合と、かけなくてもいい場合があります。
例えば、伴奏のクリーンのアルペジオや、アコースティックギターのコード弾き等は、なるべくダイナミクスレンジ(最大音量と最小音量の差)を少なくした方が良いので、コンプをかけたほうが良くなる場合が多いです。
逆にジャズ系にみられるような音の強弱で表現力をつける演奏をする場合や、ディストーションぐらいの歪みギターに対してはかけないほうが良かったりもします。
ディストーション=きついコンプなので、そもそも音が潰れている状態です。
コンプレッションを理解する
コンプレッサーを使用するときに、よく使うパラメーターの解説です。
THRESHOLD(スレッショルド) | コンプレッサーがかかり始めるまでの値。 |
RATIO(レシオ) | 音を圧縮する量 |
ATTACK(アタック) | レシオの値まで圧縮するのにかかる時間 |
RELEASE(リリース) | 圧縮された音が元に戻るのにかかる時間 |
GAIN REDUCTION(ゲインリダクション) | 圧縮された量 |
これらのパラメーターを使って圧縮を調節するのですが、実際にスタジオで音出ししながら、最適な潰れ具合を耳だけで判断するのはなかなか熟練の耳が必要になります。
初めはDAW(作曲ソフト)にギターの音を取り込んで、波形を見ながら潰す方法がオススメです。
目で確認しながら潰れ具合を調節できるので、初心者の方でもレシオやアタック等の各パラメーターの使い方と変化がわかりやすいです。
DAWにギター音を取り入れる場合、オーディオインターフェイスが必要であったりと少し手間ですが、コンプレッサーの効果をしっかりと理解することは重要です。
スタイルごとのコンプレッション目安
演奏方法や音質によって数値は変わるので、一概には言えませんが目安として
・バッキング
・RATIO > 5:1
・ATTACK > 10~30ms
・RELEASE > 150ms~200ms
・GAIN REDUCTION > 3~5dB
バッキングギターの場合はアタックを潰して、深めのコンプをかけることでダイナミクスレンジを少なくして、他の楽器よりも一歩後ろに定位させます。
・カッティング
・RATIO > 4:1
・ATTACK > 50~100ms
・RELEASE > 100~150ms
・GAIN REDUCTION > 3~5dB
カッティングギターの場合は、アタックを潰し、あえて深めのコンプをかけて「ポコポコ」させて弾く場合を除いては、基本的にはカッティングのおいしいアタック部分を潰さないようにメリハリのある音作りが大切です。
・リードギター
・RATIO > 5:1
・ATTACK > 30~80ms
・RELEASE > 170~200ms
・GAIN REDUCTION > 2~3dB
リードギターやギターソロにかける場合、サスティーン目的でかける場合が多いです。
ピッキングニュアンスを残したい場合はアタックを少し遅めに設定するのがオススメです。
・クリーンアルペジオ
・RATIO > 6:1
・ATTACK > 10~50ms
・RELEASE > 80~150ms
・GAIN REDUCTION > 4~5dB
アルペジオにかける場合は音の粒を揃える為に、アタックを早めに設定して潰します。
伴奏ポジションの場合は深めに潰してダイナミクスレンジも揃えることで安定したアルペジオ演奏になります。
コンプレッサーに求める最低限の機能
実際足元のコンパクトエフェクターだとワンノブタイプの製品や、ざっくりとした設定しかできないタイプのエフェクターが多く、正直あまりオススメはしません。
とはいえ細かく各種パラメーターを操作できるタイプの製品は高価なモノが多く、どうしても大掛かりな機材になってしまいます。
実際にDTMでコンプを使っている方ならわかるかと思いますが、コンプレッサーに必要な機能として、最低でも「THRESHOLD・RATIO・ATTACK」の3つが無いと、感覚で調整することになるので、最適な潰れ具合を目指すのであれば厳しいところです。
おすすめのコンプレッサーエフェクター
BOSS/CP-1X
恐らくこの価格帯のコンパクトタイプのコンプレッサーでRATIO・ATTACKの調節とGAIN REDUCTIONの確認ができるエフェクターはBOSS製品の「CP-1X」だけだと思います。
GAIN REDUCTIONは「どれくらい音が潰れているか」を確認する為の数値なのですが、コンパクトタイプでこれが付いているのはさすがBOSSといったところ。
更にMulti-Dimensional Processingという最先端の技術を取り入れており
BOSS独自の多次元的信号処理技術「MDP」は、入力されたギター・サウンドを構成する周波数特性、倍音構成、ダイナミクスや演奏の音域、単音弾きかコード弾きか、チョーキングやビブラートなどのテクニック、弦の種類や楽器のパーツなど様々な要素を瞬時に解析します。さらに時間経過とともに変化するこれらの要素に対し、最適な処理をリアルタイムに行います。それにより、複雑に絡み合った多くの要素が生み出す音楽的な表現力を失うことなく、エフェクトの効果を得ることができます。従来の技術では生み出すことができなかった、新たな表現力へとつながる画期的な先進技術です。
BOSS 公式サイトより引用
BOSS製品としては¥16,000は中々高額な製品になりますが、機能面からみてもコストパフォーマンスは素晴らしいの一言なので迷っている方にはオススメです。
TC Electronic HYPERGRAVITY COMPRESSOR
HyperGravity CompressorはTCのフラッグシップ・シグナル・プロセッサー「SYSTEM 6000」に搭載されているマルチバンド・コンプレッション・アルゴリズム「MD3」を元に開発されています。
マルチバンドコンプは、高域/中域/低域と各周波数帯域ごとに圧縮を加えることで、通常のコンプよりも、より均一な圧縮効果を得ることができます。
TC独自の「TonePrint」テクノロジーを活用することで、コンプ設定を細かくカスタマイズすることが可能です。
MXR M102 DYNA COMP
冒頭にもご紹介したこのMXR M102 DYNA COMは、ギター用コンプレッサーの定番製品として長年愛され続けています。
1970年代に初代のダイナコンプが登場して以来、クリーンサウンドでの独特なパーカッシヴなカッティングや、ギターソロでのサスティンを得る目的で、多くのギタリストに愛用されてきました。
2ノブのシンプル設計で、コンプレッサーとしての繊細な音作りは得意とはしていないものの、ダイナコンプでしか出せない個性的な「ポコポコ」サウンドが人気です。
まとめ
ギター用コンプレッサーの扱いが難しくて、いまいち上手く使いこなせていなかった方は、この機会にコンプレッサーの設定を見直してみるのはいかがですか?
・憧れのギタリストと同じ機材を揃えたはずなのに何かが足りない・・・
・ギターソロでペラペラした音になる・・・
とお悩みのギタリストの方は、コンプレッサーのセッティングによる違いである可能性は大きいです。
以上、ギター用コンプレッサーの正しい使い方でした。