【DTM】ドラムの打ち込みテクニック(初心者向けガイド)
↑今回の内容の音声配信です。
音楽制作においてはドラムは打ち込みで作るというのが一般化してきました。
ロックのようなジャンルであっても、ギターとベースはレコーディングして、ドラムだけ打ち込みというのもよくある話です。
特に個人で音源制作している場合に、生ドラムをマイキングしてレコーディングするというのは非常にハードルが高く、良質なサウンドを得ようとするには、あまり現実的ではないからです。
最近のDTMのようなデジタルでは、音源サンプルを使うか、ドラムマシンを使うのが一般的です。
一般的に販売されているドラム音源は、どれも最高の環境で録音されたサウンドを使用しているので、音質に関してはほぼ問題ないのですが、何もせずにそのまま打ち込んだだけでは非常に単調で退屈なドラミングになってしまいがちです。
そこで、せっかく考えたドラムフレーズを最大限いかす為にも、ドラムを打ち込む際に使える基本的なテクニックについて、今回は解説していきます。
1. パンニング
パンニングはステレオ空間の中のどこに楽器を配置するかということです。
ドラムをパンニングするときは、ビートに最もインパクトを与えるキックとスネアをセンターに配置することで、リズムの土台をしっかりと作ります。
まったくPANをいじらないか、もしくはモノラルに設定します。
タムや金物系はその周りに配置するのですが、実際にドラマーが椅子に座って叩いている状況をイメージして、その通りの楽器ポジションに配置するのがオススメです。
高い音ほど大きく広げるとより効果的になるので、
- タム系 : LR 20~60
- ライド : LR 40~70
- クラッシュ : LR 70~90
のようなイメージで広げると綺麗です。
ハイハット常時鳴っている楽器なので、あまり広げ過ぎると違和感を感じるのでセンターかもしくはLR 10~40ぐらいの間が理想です。
もうひとつのポイントは重要な楽器ほど中央に寄せるということです。
例えばHipHopやTrap系の音楽ではハイハットの重要度が高いのでセンターに配置されることが多いです。
これはドラム以外のパンニングにもあてはまることなので覚えておくと便利です。
2. チューニング
キック、スネア、タムを適切な音程に合わせる作業です。
打楽器は瞬間的なエネルギーを持つ楽器で、音程感がほとんど無いとも言われていますが、低音が豊富であったり、テールが長いキックや同じくロータム、スネアは音程がでやすいので、しっかりと楽曲のキーに合わせる必要があります。
例えば、こういったEDM系でよく聴く、ロー感が強くてテールの長いキックが対象となります。
ピッチ修正のやり方(FL Studio)
使っているDAWの種類によってやり方は多少違いますが、FL Studioの場合で軽く説明します。
まずはキックの音程を調べます。
FLの場合「Edison」にキックを読み込ませて、「Detect pitch regions」で簡単に音源サンプルの音程をみることができます。
キックのピッチがわかったら、次は楽曲のキーにそれを合わせるのですが、もし楽曲のキーの調べ方が分からないという方はこちらの記事をご覧ください。
→キーの正しい決め方【作曲に役立つ音楽理論】
ピアノロール画面に移動します。
何もしていない状態だと、ピアノロールの中央点である「C5」の鍵盤を押すと、音源そのままのAの音程が発声します。
少しややこしいですが、ピアノロール自体の基準を音源の音程である「A」に変更するわけです。
これでピアノロール上でAを押すとAが出るようになったので、そのままピアノロール通りに楽曲のキーを打ち込んでいけば完了です。
3. ダイナミクス
続いてダイナミクスのコントロールです。
ダイナミクスとは分かりやすくいうとトラック内の「大きい音と小さい音の差」です。
ドラムの場合、ベロシティやコンプレッサーを使用してこのダイナミクスをコントロールします。
ベロシティ
ベロシティとは音の強弱をコントロールできるパロメーターです。
スネアひとつでも弱く叩いた音と強く叩いた音ではリスナーに与える印象は大きく変わります。
サビが終わったのに2番のAメロでもフルパワーで叩いてると非常に違和感があるので、ベロシティを使ってパワー感をコントロールするわけです。
特にドラム打ち込みの場合、ベタ打ち(打ち込んだだけ)だと非常に機械っぽく聴こえてしまうのと、強拍と弱拍の区別ができないのでノリが生まれません。
以前リズムの基礎知識の記事でも紹介しましたが、アクセントの無い連続した音は「パルス」といわれ、音楽的ではありません。
パルスにアクセントを付けることでビートになり、ノリが生まれます。
コンプレッサー
コンプレッサーを使用することでダイナミクス感のコントロールとトランジェントのコントロールが可能になります。
コンプレッサーの詳しい使い方に関してはこちらの記事をご覧ください。
→コンプレッサーの基本的な使い方
「せっかくベロシティでダイナミクスをつけたのにコンプ?」と思うかもしれませんが、打ち込みの場合はアコースティックドラムのように音量のバラつきがないので、全体的なボリュームの均一化のためのコンプレッションではなく、音質を変えるためにコンプレッサーを使います。
リリース部分を圧縮して、アタック部分を強調したり、ダブステップのようなパンチのある太いキックやスネアが欲しい場合にはしっかりとコンプで圧縮して潰す必要があります。
すでに圧縮されている音源サンプルも多くあるので、コンプレッションが必要かどうかは波形や音でしっかりと判断する必要があります。
4. イコライジング
EQ(イコライザー)を使って音質を整えたり、住み分けを行います。
EQを使うにあたって重要な事は、音を持ち上げることよりも不必要な音をカットする方向で使うということです。
まずはスネアやタム系の不要な低音をハイパスフィルターを使ってカットします。
低音が出ていないような楽器でもいくつも重なることで濁りの原因となるのでしっかりと処理しておきましょう。
他のトラックとの関係性をみて、不要な音域やブーストすべき周波数帯域をさらに整えていきます。
とくに低音部分のキックとベースの関係性が非常に重要になってくるので、ローエンドの処理にはたっぷりと時間をかけて行いましょう。
5. サチュレーション
ドラムにサチュレーションを使うことで倍音を強化して、ミックス内でサウンドをより大きく、よりエネルギッシュにすることができます。
オーバードライブやディストーション等の歪み系の中でも、サチュレーションは微量の歪みを与える効果があり、音質変化を最小限に抑え、あたたかみを加えてサウンドを太くします。
→人気サチュレーション&ディストーションプラグインソフトおすすめ 5選
打ち込みで使うようなドラムサンプルの場合、デジタル特有の綺麗すぎるがゆえの「冷たさ」があります。チューブサチュレーションのようなアナログ独特の歪み感を加えることで、アナログに近い音質に近づけることも可能です。
キックに関しては、あえて音質変化するほどの激しい歪みを加えるという手法もジャンルによっては多くみられます。
「Maximus」のようなサチュレーションが付いているマルチコンプを使うと、低域のみにサチュレーションをかけたりと、高周域の耳につく歪み感を抑えつつも音圧をかせぐことができるので、さらに幅広い音作りが可能になります。
まとめ
ドラムの打ち込みに使われる基本的なテクニックをいくつかご紹介しました。
- パンニング
- チューニング
- ダイナミクス
- イコライジング
- サチュレーション
すべてのドラムパーツにこれらを適応するのは少し手間かもしれませんが、ドラムトラックにはそれぐらい時間をかけるほどの価値があります。
どうしても時間がとれない場合にも最低限キックとスネアだけでもしっかりと処理しておきましょう。
もっと本格的なドラム打ち込みを行いたい方は必要な作業をすべてプラグイン内で完結できる、「Addictive Drum」や「BFD」のようなバーチャルドラムキットなる製品もあるので、気になる方は試してみてはいかがでしょうか?
以上、【DTM】ドラムの打ち込みテクニック(初心者向けガイド)でした。