シンセサイザーの音作りに役立つ5つのヒント
ハードウェアであってもソフトウェアであっても、ミキシングに移る前に正しいシンセサウンドを選択することは非常に重要な要素となります。
シンセサイザーに搭載された膨大な量のサウンドライブラリから曲を作る場合、楽曲に合った最適なサウンドを選んだり、もしくはゼロから作成することもあるかもしれません。
今回は楽曲に合ったサウンドを選択したり、ミキシング時に大幅な修正をする必要がないような、バランスのとれた充実したシンセサウンドを作成する為のいくつかのヒントをご紹介します。
1. レイヤーサウンド
シンセサウンドを扱う場合には、単一の波形を使うよりもいくつかの波形を重ねて使用することが一般的です。
しかし、何も考えずにそのままサウンドを重ねると位相の問題が生じたり、パッチ同士が重なったときにフィルタリング効果が発生してミックスの奥に引っ込んでしまう可能性もあります。
このような位相のトラブルは、品質の悪いサウンドを生み出すだけでなく、音源をモノラルデバイスでリスニングした時に、ミックスが完全に崩壊してしまう原因にもなります。
複数のシンセサイザーを重ねて使用する場合には「LEVELS」のような位相を確認できる相関メーターを使用すると、潜在的な位相トラブルを発見したり、解決するのに役立ちます。
※位相トラブルの解決方法は別記事の位相とは?「位相キャンセル」問題とその解決策【DTM】をご覧ください。
2. 異なる要素を追加する
使用する波形やシンセサウンドが決定したら、次は新しい異なる要素を追加してサウンドを装飾することができます。先述したように、波形は互いに打ち消しあうものではなく、補完し合うものを使うことでより壮大で豪華なサウンドになります。
最高のシンセサウンドを作るのは、一般的なバンド編成のボーカル、リズムギター、、リードギター、ベース、ドラムといった各要素を混ぜ合わせて、大きな一つの音の塊を生み出すことと同じです。シンセでもそれぞれのパッチが異なる周波数帯の中で最も「良く鳴る」ポイントを見つけることが重要です。
異なるサウンドは、音量、音域、リズム、音色、ステレオ幅など、様々な領域を使って互いに競合しないように住み分けする必要があります。
よりバランスの取れたサウンドにしたい場合は、それぞれのパッチで足りていない隙間を埋めるような要素を追加することで最高のシンセサウンドになります。
3. 隙間を埋める
デジタル生成されるシンセサイザーだけで作曲したときに、アナログ楽器と比べて、サウンドにぽっかりと隙間が空いているような寂しさや冷たさを感じることがよくあります。
これはアナログとデジタルの大きな違いである、アナログ機器の場合に生成されるノイズや複雑な倍音が関係しており、デジタルシンセサイザーの場合は綺麗すぎるがゆえに、ノイズのまったく無い音や倍音が機械的に整い過ぎているため、不自然さを感じてしまうことが原因です。
これを補うためにはサブ、ノイズ、サチュレーションといった様々なパラメーターやエフェクトを使って、意図的に汚したり、倍音を付与するといったことが非常に効果的です。
EDM界隈ではホワイトノイズを後ろでうっすらと流して、足りない隙間を埋めるといったテクニックも頻繁に使われています。
4. 不要な帯域をカット
意図的に汚すこともあると言いましたが、もちろん、汚れ過ぎているとミックス全体を濁らせる原因になるので注意が必要です。
意図的に少量のノイズを付与することはあっても、不要な低周波のうねりや、出過ぎている不要な周波数帯域は取り除く必要があります。
低周波のうねりを除去するのは簡単で、EQプラグインをを使って各トラックにハイパスフィルターを適用するだけでほとんどは解決します。
特にSuper Sawのような激しいシンセサウンドでは、突出した不快なレゾナンスが発生しやすいので、必ずQ幅を狭めたノッチ処理を行うようにしましょう。
5. シンセ搭載のFXを使う
ほとんどのシンセサイザーには、十分なオンボードエフェクトが搭載されています。
プロジェクト間の一貫性を確保するためには、外部エフェクトをできるだけ使用しないようにして、シンセサイザー内でサウンドを完結させることを意識してみましょう。
高品質なシンセサイザーであれば、エフェクトセクションも外部プラグインと同じくらい豊富で多機能なものになっています。上手く利用することで、元となるサウンドを変更することなく、エフェクトパラメータのみで様々なプリセットを作成することができます。
外部プラグインを使わないことで、CPUの大幅な節約にもなるので、追加でプラグインを挿す前にシンセサイザー標準搭載のエフェクトをチェックしてみましょう。
まとめ
シンセサイザーの音作りに役立つ5つのヒントをご紹介しました。
- レイヤーサウンド
- 異なる要素を追加する
- 隙間を埋める
- 不要な帯域をカット
- シンセ搭載のFXを使う
元となるサウンドの良し悪しが最終的な音源品質に繋がるので、ミックスに移る前にそもそもの出音を改善することは非常に効果的です。
これらの内容はソフトウェアシンセ、ハードウェアシンセの両方で使えるTipsとなっています。シンセサイザー以外の楽器にも使える知識でもあるので、サウンドにパンチや迫力が足りないと感じたときは是非ためしてみてください。
以上、「シンセサイザーの音作りに役立つ5つのヒント」でした。